富士宮市の先進的な総合相談の取材で訪れたことを告げると、
2人は
「福祉の先進地? ふーん、実感はないわねえ」
と首をかしげる。
住民同士の支え合いが日常的に行われていれば、
行政の福祉施策が優れていても、その存在感は薄いのかもしれない。
時折通りがかる人が、制作途中の七夕飾りに足を止める。
しばし店主らと気軽に立ち話を交わす。
その打ち解けた様子に、ふと、住んでみたいという思いがわいた。
取材に訪れた市役所では、
住民同士のつながりに関連して、
同市の持ち家率の高さが話題になった。
長期安定した居住者が多ければ、ご近所づきあいは保たれやすいはず。
データを当たってみた。
2010年の国勢調査では、同市の持ち家率は74.1%。
全国平均(61.9%)をなんと10ポイント以上上回る。
これとは別に、市が2013年度、高齢者を対象とした、
住環境に関する興味深いアンケート調査を行っている。
在宅高齢者を要支援・要介護の認定を受けている人と、
そうでない人(一般高齢者)とで分け、
それぞれどのような住宅に暮らしているかを調べている
(※結果は2014年8月1日時点で未公表。ただし非公開の扱いではない)。
一般高齢者では、
個人所有の戸建て住宅に住む人が93.0%に達した。
残り7%の内訳は、個人所有のマンション等0.3%、
借家(戸建て)2.4%、借家(アパート等)1.7%、不明2.6%となっている。
一方、在宅要支援・要介護の高齢者は、
個人所有の戸建て住宅89.4%、個人所有のマンション等0.5%、
借家(戸建て)3.3%、借家(アパート等)3.5%、不明3.3%。
要支援・要介護であろうとなかろうと、
在宅で、すなわち地域のなかで、暮らし続ける高齢者は、
圧倒的に個人所有の一戸建てに住む人が多い。
もともと持ち家率が高い同市では、
戸建て住宅に住む高齢者が多いのは当然だが、
それにしても、在宅生活を送る高齢者の、戸建て住宅に住む人の割合が高い。
一戸建てであれば、当然同じ地域に長く住み続けている可能性が高い。
地域に溶け込み、ご近所とのつながりのなかで暮らすことで、
在宅での生活を長く続けられるのだろうか。
引っ越し貧乏の記者としては、ため息が漏れるような話ではある。
(CLC:T.K)