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メディスンマンの儀式を体験 [2009年01月22日(Thu)]

アンデス山地の高山草原地帯は、パラモ(PARAMO)と呼ばれます。パラモには、特有の高山植物が生育し、先住民族が儀式の時にメディスン(薬草)として使う特別な植物もあります。

儀式を司る人はメディスンマンと呼ばれ、 「自然」を繊細に感じ、対話する特別な能力を持ちます。儀式では、自然と人間をつなぐ役割を果たします。
この日、地元のメディスンマン、そしてクルーと一緒にパラモへ行き、薬草を採取する様子を撮影。夜は儀式を初体験しました。

儀式に使う薬草は、 幸福を呼ぶもの・悪を浄化するものなど多種多様です。薬草を採取する前後には、地元の酒を大地に捧げるのですが、この日、1つ神秘的な事が起こりました。最後まで見つからなかった、ある薬草があったのですが、日が暮れて来たので探すのは終わりにして、ある場所で最後にお酒を大地に捧げ、帰ろうとした時、私たちの足下に、まさにその薬草があったのです。

夜は、自炊の夕食(ご飯にネギを入れて炊いたもの、ゆで卵、アグア・デ・パネラ=さとうきびからできた黒砂糖をお湯で溶かしたもの)を食べ、儀式に臨みました。この夜の目的は「心身を浄化し、自然とハーモナイズ(調和)」する事です。

儀式に必要なものは、乾燥させた*コカの葉と地元のお酒です。
*コカ:麻薬であるコカインの原料ですが、コカインはコカを特殊な方法で精製した物であり、コカの葉そのものに麻薬性はありません。むしろ高山病に効くもので地元の人には大切な薬草です。

儀式のステップを簡単にご紹介します。メディスンマンによって、多少ステップや手法に違いはありますが、基本は以下です。
1. メディスンマンが手渡すコカの葉を、左手で受け、落とさないように右足のつま先から右肩、左肩から左のつま先まで一周させた後、口に含み、噛み始めます。
2. 少量のお酒を同様に右から左へ一周させ、口に含んでコカを湿らせます。
3. メディスンマンが、個々の頭の上に、薬草をのせます。
4. メディスンマンが別な薬草を手渡すので、同様に体を一周させて、口のコカに加え、よく噛み、混ぜ合わせます。この薬草は深緑で、良い香りがしました。
5. ひょうたんのような入れ物に入った、白い粉(特別な石を焼いて、擦ったもの)を少しだけ取り、更に口の中で混ぜます。この白い粉は、刺激性があるのでたくさん口に入れると、やけどしたようにヒリヒリするので気をつけるように言われました。
6. ひたすら口の中のコカと薬草をミックスする為に、噛み続けます。自然とより調和する為には、よく噛み合わせた方がいいそうです。途中、唾がたまってきたら、液体だけ左方向にピュッと出します。うまく出せるようになるまで、しばらくかかりました。
7. メディスンマンが、夜空や山々を注意深く見ながら、適切な時に、木の棒を持ってきて一人一人の体を一周させた後、メディスンマンの口にあるものを少しだけピュッピュッと空と山に向かって吐きます。
8. ひたすらコカを噛み、全員で、静かに時を過ごします。聞こえるのは風の音、虫の声、そして時々聞こえる鳥の声です。(人々は「犬の声」と呼び、自然のスピリット=魂がやってきたサインと言っていました。)ちなみに、この日は、4−5時間の儀式の間に、私たちを囲むように数個のスピリットが左方向から右方向へと移動していきました。
9. 適切な時に、メディスンマンが合図をし、全員で口の中のものを空と山に向かってピュッと吐き出します。できるだけ遠くに向かって・・・。
10. 1-9のステップをメディスンマンが「これで良し(自然とハーモナイズした)」と思うまで、繰り返します。
11. ステップ3で個々の頭に置いた薬草を、メディスンマンが口に含んだお酒とともに吸い出し、山に向かって吐き出します。
12. 最後のラウンドでは、メディスンマンの横に立ち、左足を大地に強く踏みつけながら吐き出します。

儀式の途中、雨が降り出したり、星が見えたり、雲がかかったり・・・空は多様な変化を見せました。それぞれに意味があるといいます。全ての儀式が終わり、メディスンマンは、「儀式の最後に星が現れたので、今日はいい形で終わった。明日は、すっきり目覚めて、欲しい薬草が採れるだろう。」と言いました。

儀式の後は、たき火を囲んでチチャ酒(とうもろこしのお酒)をみんなで飲みました。途中で、火に関する日本の歌を歌ってよ!と言われ、とっさに思い浮かんだのがキャンプでよく歌った「燃えろよ燃えろよ、炎よ燃えろ・・・」だったので、少しだけ披露しました。
お酒も飲んで、あったかくなった所で、木の小屋で雑魚寝しました。が・・・夜は私の予想を超える寒さでした。摂氏5度ぐらいだったと思います。 小屋に床はないので、土間に寝袋をしき、1枚だけ毛布をかけて寝たのですが、 標高3500mの夜は、地面からしんしんと冷え、結局、一睡もできませんでした。カイロを持っていたのですが、川に魚を取りに行ってびしょぬれになった男性と、屋外のテントで寝るという男性にあげてしまっていました。

快晴の翌朝、寝不足ですが、頭はすっきり。前の夜に取った川魚・野菜・卵のスープ、揚げパンの朝食を取ってる時、すごい風景が目の前に現れました。小屋のすぐ横に、虹がかかったんです。3分ぐらいで消えてしまいましたが、まるで私たちの為にあるような、ちょうどいいサイズの小さな虹。メディスンマンは「自然が私たちを受け入れてくれている」と言いました。すごく神秘的で、きれいでした。
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