「技適マークなし」のラジコンを、適法に治療する方法
[2025年09月26日(Fri)]
実際の壊れたおもちゃを目の前にすれば、おもちゃドクターなら治療したくなるだろう
先月から「技適マークなし」のトイラジコンを、適法に治療する手段を模索していて、果たして自分にできるかどうかを安価なジャンク品で実際に治療体験してみた
【前置き】 ちょっと長くなるが
おもちゃ病院の組織としては、トラブル要因は避けたいとは思うが、「技適なし」だからと受付しないのは、如何なものか?
お客さま目線で見れば、一縷の望みを託して駆け込んだ病院で 門前払い された格好になる
私は(自分では不可能でも)、せめて先進おもちゃ病院への転院紹介くらいは可能だと思う
自分なりに、これを安全に安心して遊べるように改造してはどうかと考え、今回は部品調達の失敗談も含めて、治療状況を公開する
結果としては、私の未熟な半田付け技術でも「技適あり」に改造することができた
ただし、治療選択肢として提案するには、きちんと コスト計算も せねばなるまい
【コントローラ】
ジャンク品のコントローラ(元々ペアリング出来なかった)
技適マークはコントローラの筐体に表示される
ことが多いのだが、これはどこにも付いてない
極めてシンプルな基板、タクトSWは再利用する
まあ当然、基板にも技適マークはない
ESP-WROOM-02 を変換基板に載せて実装
既存の無線 IC は撤去、LEDは再利用する
IC 回路とアンテナが一体で通信機とみなされ、
シールドカバーに技適マークが表示されている
元基板の上部スペースに組込み、これで「技適あり」になった
【車体側】
車体側には「技適マークなし」がフツウ
車体側の無線 IC も換装しないとペアリングできない
シンプルな基板、LDO出力電圧3.0Vは確認済
モーター配線の逆接もあり、必ず実物で要確認
既存の無線 IC は撤去、他の IC は点検のうえ再利用
車体側も「技適あり」対応になり、これで安心して遊んで貰える
【まとめ】
ESP-WROOM-02 を変換基板に載せれば、私の未熟な半田付け技術でも簡単に換装できた
だが、自分の力不足に伴う費用負担増は、お客さまには請求できず、技術習得が今後の課題である
(参考)ESP-WROOM-02ピッチ変換用基板 は、スイッチサイエンス製を使用
お友達の 技術志向のドクター は、コスト面を考えて 無線デバイス換装 には至らなかったそうで、それも極めて現実的
問題の所要コストであるが、つつじが丘おもちゃ病院さまの 頒布サービス は、本当に助かる
偶々安い販社で買えているとのことで、かつ ファームウェア書込み済のアセンブリ が、今なら300円程度で済む
部品調達もおもちゃドクターのスキルだと考え、ありがたく利用させていただこう
治さないとゴミと化してしまう「技適なし」のトイラジコンが、若干の費用負担で「技適あり」として再び遊べるようになり、しかも操縦可能範囲が広がり、安定動作も担保されるのだから、お客さまにとっても大きなメリット
治療体験の結論は?
自信をもって 治療選択肢として「技適ありへの改造」を提案 できるものと考える
【技術情報】 おもちゃドクター向け
・リチウム電池の安全対策
・ESP-WROOM-02 の開発環境
・その他の失敗談
以下、順番に詳しく報告する
リチウム電池の安全対策
最近、リチウムイオン電池の発火事故多発の報に接し、おもちゃドクターも他人事でなく、リポ電池も含めて充電池の取扱いには慎重を期すべきと再認識させられた
おもちゃクリニックゆりかご では、おもちゃのリコール情報の提供に努め、安易なリチウム電池の交換はしない方針である
今回のリチウム電池は、SM-2Pプラグコネクタ付きで市販されているので、もし交換が必要と診断したときは情報提供のみにとどめ、お客さまのご判断にお任せする
そもそも既存の電池容量が小さ過ぎて、すぐに過放電になる恐れがある
過充電・過放電・過電流の保護機能付き充電モジュールを取付けてみる
(参照)リチウムイオン電池の安全・安心な使い方は、コチラの動画を参考にした
(参照)TP4056 充電基板の充電電流を調節する方法は、コチラ を参考にした
充電ケーブルが紛失し、過放電状態と推測
保護回路付きの充電モジュールを取付ける
過充電・過放電・過電流の3保護機能付き
モジュール追加で、簡単・安全に充電可能
新品電池が到着次第、モジュールを取付け直せば安心
消耗したリチウム電池は、各自治体の指定方法で廃棄
ここでの失敗談は、リチウムイオン電池の発注サイズの勘違いがあったこと
誠にお恥ずかしい限りで、一番手ごろに出回っている18650を発注したが、
元々のサイズをよく確認したら、14500サイズと表示あり、大失敗!
すぐにキャンセルして、正しいサイズで5本+充電器セットで再発注済
専用充電器の役割は安全に満充電に近い容量を得ることで、充電対象の二次電池の電圧に応じて、最初に定電流で充電するCC充電を行い、バッテリーが設定された電圧に達すると、定電圧で充電するCV充電に自動的に切り替え、最終的に自動で充電を停止するのが理想的
なので、リチウム電池は専用の充電器を使うのが原則だが、それを紛失しては仕方がないので、この保護機能付き充電回路を挿入して専用充電器の代替とした
充電時の注意事項 としては、過放電状態や使用直後の急速充電は避けて、周囲に可燃物がなく常に監視できる場所に置いて充電すること
一般的な急速充電は、約1時間で充電満了する(たとえ充電満了にならなくても、充電継続しない方が安全)
時間を置いてから充電再開しても、2時間以上は充電しないこと
充電時の定電流値(Cレート)そのものが上限値を超えないように留意する必要があり、小容量のリチウム電池などでは上限値の3割から5割ほどの定電流充電が、さらに安全と言われている
ESP-WROOM-02 の開発環境
今回使った ESP-WROOM-02 アセンブリは、トイラジ換装用ファームウェアが書込まれているので、特段の開発環境は不要である
開発者には敬意を表するとともに、この場を借りて、あらためて感謝を申し上げたい
また、最新の設計情報もブログで詳しく解説されているので、ぜひご参照いただきたい
簡便に Arduino IDE で提供されているライブラリを利用されているとのこと、興味があったら自分で開発環境を真似てみるのも面白い
私のようなプログラミング初心者でも丸ごとコピーだけなら、書込み成功することができた
その他の失敗談
実機にて動作確認している途中で、後輪の前進・後退操作では(電圧低下があるためか)頻繁にマイコンがリセットし、一時的にペアリングが切れてしまう
安全のために追加した PTC(リセッタブルヒューズ)の定格が小さ過ぎたのが真の原因
どうせ入れるなら定格 1.5A〜2.0Aなのだが、そもそも 3.7V程度の電源では(PTCも含めて)不要だとの結論に至った


リチウム電池の「充電時の注意事項」を本文に追加記述したので、ご参考までに。
おもちゃクリニックゆりかご 医局会でもドクター全員で情報共有し、今後の修理受付ルールを改訂(次の2点を追加)しました。
・分解しないと交換できないリチウム電池については、交換不可
・技適マーク無しのトイラジコンは、無線通信部の修理不可、技適ありへの改造は可