230623 プラレール踏切警報機、自作基板で改造(R8C電子オルゴール)
[2023年07月14日(Fri)]
おもちゃクリニックゆりかご「やまのい診療所」、育児支援施設から預り入院の重症患者、今回は故障した基板に代えて、R8C電子オルゴールの自作基板で換装する。
【初診状況】
プラレール踏切警報機(2023 診療状況一覧 より)
症状:警報音が鳴らない、光らない
治療:電池液漏れが酷く、配線や基板まで浸潤
基板にまでサビ腐食で重症
本来の姿ではないが、楽しく遊べるように
基板を自作して換装する方針で、調査中
退院:長期入院は必須、しばらくお待ちください
電池液漏れ跡がひどく、相当重症
多分、長らく放置されていた様子
ウラから分解点検、2001年製の基板
LED点滅と圧電ブザーを鳴らすもの
電池BOXからの液漏れが配線伝いに
基板まで浸潤、サビ腐食が進んでいた
液漏れ後も放置された様子
22年間、お疲れさまでした
踏切レールの下にも、リーフSWあり
左側が変形して、常にオン状態だった
【基板回路】
COB(チップオンボードIC)もなく、全部ディスクリート部品
LED点滅と圧電ブザーだけにしては、そもそも大げさな基板だが、、、
一見、キレイに見えるが、残念ながら復活には至らず。
元々の電子ブザー音とLED点滅だけのために、この基板の回路解析する気にならない。
【周辺回路】
警報切換えレバーは、OFF/AUTO/ONの3ポジション方式
園長先生や他先生方も、22年前の機能は分からないとのこと
3ポジションSWの仕組みを、分解点検
大きな金属板によるスライド接点である
警報ランプからの配線は、赤2本と黒2本
青レール下のリーフSW、左側の変形を元の形状に戻して観察
遮断機バーを手で下ろしたり、列車が通過したときに接点オン
左右どちらかでもオンになると、トリガ信号が得られる仕様
列車3両の通過で「ON」3秒弱、「HI」では2秒弱の信号
簡易DSOで波形を見る限り、きれいな矩形波
大きなチャタリングや波形訛りは見られない
【治療方針】
園長先生のご了解が得られれば、当クリニックとしては久々の電子オルゴール回路で換装したい。
※この図では、3PスライドSWを機能別に(電源SWと演奏SWに)置き換えている。
また、踏切リーフSWも視覚的に現物の形状に見えるように、2個並列接続している。
イメージを膨らませるため、リアルな単線踏切を調査見学
調査と並行して、園長先生からも ご了解、治療方針の一任 を貰うことが出来たので、これらの情報を元に、電子オルゴール用ファームウェア開発者「名張市つつじが丘おもちゃ病院」に、カスタマイズの相談を進めていく。
【開発要件】
「名張市つつじが丘おもちゃ病院」 の Dr.大泉さまに相談しながら、ファーム開発要件を決定していく。(以下、メールから抜粋)
今回もご指導のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
@ハード面
・ターゲット:いよいよ、R8C/M11Aの出番、今回はコスト計算までやる予定です。
既存基板の部品は再利用せず、手持ち在庫部品で基板全体を作り直します。
・電源構成:単3電池×3本=4.5V、電源SWは、既存の3PスライドSWを流用します。
電池ボックス負極と、基板GNDとの間に3PスライドSWを接続して、「OFF」で電源断。
・電源スイッチの機能:「AUTO」で導通して、警報音とLED点滅が自動でSTART。
ONでは、上記に加えて、電子オルゴールが自動START、入力モードはリアルモード動作。
・操作SW数:踏切レール下のリーフSW(負論理)×1個、押されるとトリガ信号で音声が(列車通過音に)切り替わる。
列車通過音は再生が終了すると、自動でSTOP。同時にLED点滅もSTOP。長押しには反応しない。
できれば、音声再生がSTOPしているときに、押されるとトリガ信号で音声が(警報音に)切り替わり再START。
警報音はLED点滅と同時に、反復繰り返し再生を続ける。長押しには反応しない。
※プラレール標準の3両編成では、すぐに通過してしまうので、オリジナル仕様ならではのアイデアを考えました。
・出力信号の種類及び極性:LED交互点滅制御(正論理)×2本、
スピーカ制御(8オームSPをブレーキ出力で)2本。
A動作内容(時系列で次のとおり)
・電源は3PスライドSWで、通常OFFである。
・スライドSWを「AUTO」でR8Cに電源供給し、音声再生とLED点滅を自動STARTする。
・最初の音声再生は警報音で、トリガ信号があるまで反復繰り返す。
・スライドSWを「ON」で、さらに加えて、電子オルゴールを自動STARTする。
・演奏曲は1曲または数曲を連続演奏し、反復繰り返す。
・スライドSWを「AUTO」に戻すと、電子オルゴールの演奏のみSTOPする。
・踏切レール下のリーフSWで列車通過のトリガを得ると、音声を列車通過音に切り替えて再生。
・列車通過音は再生が終了後、自動STOPし、同時にLED点滅もSTOPする。電子オルゴールはそのまま継続する。
・音声再生が終了したとき、電子オルゴールを演奏していなければSleepする。
・スライドSWの「ON」か、リーフSWオンを検知したら、Wakeupする。
・音声再生終了後に再度、リーフSWオンで警報音とLED点滅以下の動作を繰り返す。
なお、本来の動きとは、大きく異なる仕様ですが、ご了承願います。
B曲名リスト、音声再生リスト
・各SWの機能、割当て
電源3PスライドSWの「AUTO」で=音声「警報音」とLED交互点滅を自動START。
同SWの「ON」で=オルゴール曲で鉄道関連の曲を連続演奏、「RAILWAY」なら1曲だけで良い。
踏切レール下のリーフSW=トリガで、「警報音」を再生していたら「列車通過音」に切り替え再生、
このとき、何も再生していなかったら「警報音」再生とLED点滅以下の動作に戻る。
・音声・曲データ(依頼元の当クリニックで、音源用mp3を提供)
警報音は、リアルの単線踏切の録音から「カン、カン、、、」部分を長めに切り出したもの。
列車通過音は、同じ録音から「ガタン、ゴトン、、」部分を切り取ったもの、リアリティ抜群。
このmp3から適当なところを、音声データに変換していただければ、ありがたい。
(メール抜粋はココまで)
【評価版で試作】
・ポート割当てや機能設計について、開発途中で評価版プロジェクトが送られてくる。
・その都度、依頼元でも試作して動作確認し、試作の結果や改善要望をスクショ画像や動画で報告する。
・このようにして、不具合や改善点などの改修が済めば、それが最終版となる。
・毎朝晩のメールチェックを励行していれば、あれよあれよという間にプロジェクト開発は完了するので、実際のおもちゃ治療の準備が間に合わない程。
Dr.大泉さまから、音声データの「カンカン」は2回、「ガタンゴトン」も2回で 2秒に収めて作成 して貰った。
それを繰り返し再生することで時間を稼ぎ、その結果、外付けメモリ不要でコスパ良く換装することができる。
実装するオルゴール曲目は、持ち主である「めだか園」に選曲リクエストを要請する。
最新のR8C電子オルゴールに、できるだけ多くの曲目を実装して、サンプルとして先にお渡し(プレゼント)しておく。
このようにして、お客さまのご要望を取り入れて改造できるのが、リサイクルおもちゃの良いところ。
ToyDr.わたなべ 個人的には、「RAILWAY」は外せないところだが、果たして、、。
【周辺部品のテスト】
22年前は、踏切のレールに乗ったときだけ警報音が(圧電ブザーで)鳴っていたとしたら、間違いなく機能アップしてると思われる。
【ダウンロード】
今回の、プラレール踏切専用に開発していただいたファームウェア(カスタマイズ完成版)は、当方の共有フォルダにて公開する。
お客さまから実装曲を選曲して貰うために、サンプル演奏のおもちゃをプレゼントしたときに、電子オルゴール曲目一覧表を作った。(song_ファイル名、曲名、作曲と、演奏時間を、エクセル表でリスト化したもので、下記プロジェクトにも同梱している。)
なお、これらのプロジェクトは(拙作の曲データも含めて)、複製・改変・再配布は自由であることを、あらためて付け加えておく。
【おもちゃへの実装】
プラレール踏切警報機、改造後の動作確認
実際のおもちゃへの実装にあたっては、改造基板の自作もさることながら、周辺部品の点検、電池液漏れでサビ腐食した電極板やリード配線の交換や、スピーカ取付場所の加工なども、必要になってくる。
サビ腐食した電極金具は、全部交換
単3電池3本で4.5V仕様に改造する
電池ホルダーのウラに空スペース発見
音量アップするので、16Rでも十分
電池ホルダーは、踏切監視小屋の中
BTL出力は電池越しでも良く聞こえる
改造に必要な部品調達コストは、仮に今現在で買い揃えると、約 220円だが、不要なおもちゃや 100均商品からの部品取りなどで、もっと安価にできるだろう。
(2023/7/19 追記)園長先生から、「踏切のカンカン音が鳴るだけで十分、このまま完成で良いです。」との、ご返答あり。ということで、仮退院がそのままの姿で本退院になった。
実装されているオルゴール曲は、鉄道関連の楽しい曲ばかりだ。
・song_KISYA 汽車
・song_KISYAPOPO 汽車ポッポ
・song_RAILWAY 鉄道メドレー(5曲)
・song_SENROWA 線路はつづくよどこまでも
【消費電流】
最後に、完成したプロジェクトで、電流値を測定してみた。
AUTOにして、警報音や通過音を再生中、25〜40mA
通過音が終わって、Sleep移行したとき、1.2μA
SW0(ON)がオンで曲演奏中、30〜50mA
さらに、曲演奏と同時に音声再生しているとき、35〜60mA
【謝辞】
Dr.大泉さまには、わがままを聞いていただき、感謝申し上げる。
久々の実際のおもちゃでのマイコン換装は、初心者としては「R8C事始め」から一連の学習をオンライン指導していただいたようなもの。
よく考えてみると、これって特別な 最高の贅沢 ではないだろうか。
今回に限らずDr.大泉さまには、初心者ユーザーの質問や要望への迅速な対応やきめ細かいサポートをいただき、心から敬意を表する。
修理完了した暁には、全国のおもちゃドクターにも技術志向の輪を広めるべく、及ばずながら情報発信していく所存。
書き込みソフトは、フラッシュ開発ツール(FDT)を使い、書込みアダプタは、
安価なUSB-シリアル変換器が使えます。
なお詳しいR8C開発環境は、ご本家のブログをご参照ください。
(参照)R8C事始め つつじが丘おもちゃ病院
http://tutujith.blog.fc2.com/blog-entry-625.html