
弥次郎兵衛〜巡回・訪問の現場からD〜[2007年07月23日(Mon)]

巡回・訪問の現場からD

中高連携など様々な仕組みづくりで生徒減少を乗り切ってきたものの、
いよいよ叶わなくなったときに取り組んだことが、手厚く指導する「進学コース」の
設置と部活動の質的な充実でした。進学希望者に対して少人数でじっくり指導し、
放課後は魅力ある部活動に取り組んだ結果、連携中学校からの進学者を増やし
たとのことです。先生方は必至になって生徒獲得に努めたに違いありません。
近頃このような実践成功例が様々なところで報告されていますが、
気になるのは共通して「危機感」が先生や親を動かしたというものです。
意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、
なぜ最初からできなかったのでしょうか。
先の例で言えば、じっくり子どもたちの指導に取り組むことや
放課後の質的な充実は、特別なことではないような気がします。
先生も親も忙しくて子どもと関わる時間が少ないと言われていますが、
「危機感」がこの学校の先生方に時間を作ったことになってしまいます。
子どもをとりまく教育の現状についての批判的な意見は持っているものの、
自ら何とかしようとしない大人が多くいることを、こうした「実践成功例」は
示していると私は思っています。「誰かがやってくれる」「他者が悪い」と
依存して生きる姿勢を見せていては、子どもにあれはいけないこれはいけないと
言ったところで、聞く耳を持ってくれないのは当然のことです。
それどころか、そうした子どもたちの態度を取り上げて、
「今の子どもは・・・」と嘆いたところで何も生まれるはずがありません。
幼稚園・保育園から大学院教育まで、私たちの国の教育環境は、
これが世界第2位の経済大国かと目を疑いたくなるほど貧弱であると
よく言われています。残念ながらこの国の資源は人だけしかありません。
人材育成に投資を惜しむ行政も批判をされて当然なのですが、
仕組み以前に直接子たちに関わっている大人がもう少ししっかりしなければ
ならない気がします。心のどこかで「しょせん子ども」と高をくくっていて、
身の回りのことさえうまく回ってくれればいいと思っていると、
身の回りがうまくいかなくなった危機感からの「実践成功例」は
今後も続くに違いありません。