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勉強が苦手な子どもたちのために

勉強が苦手な子どもたちがいます。教えても自分でやるとできなかったり、そもそもちゃんと聞いているのか、わかっているのかもあやしかったりします。

保護者や先生たちが一生懸命になっても、それが叶うとは限りません。そんな現実を受け入れることができず、私たちはついカッとなり、子どもにあたってしまうこともあるでしょう。

そして、子どももきっと辛い思いに苛まれているはずです。

ここでは、勉強の苦手な子どもに何とか寄り添った教え方ができないか。「技術」・「理論」・「心理」など様々な切り口で考えていきたいと思っています。

特定非営利活動法人 CEセンター 理事長 野田弘一


10のまとまりを作るサクランボ計算に挑戦 [2015年09月29日(Tue)]
〇10のまとまりを作るサクランボ計算に挑戦

算数・数学は積み重ねの教科と言われていますが、一年生で積み重ねの成果が問われる最初の単元が繰り上がりのある足し算です。多くの教科書は、二つの数のうちどちらかを10のまとまりにしてから答えを導く方法(サクランボ計算)を採用しています。

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10のまとまりをつくって答えを導く過程は、図式化しておこないます。その見た目がサクランボのようなので「サクランボ計算」と言われています。

では、サクランボ計算という言葉を始めて聞く方のために実際にやってみましょう。

「9+4」を使ってやってみましょう。
私たちが日常使う多くの数字は「10進法」になっています。したがって一年生の段階では10ずつまとまって数が構成されていることを意識してもらうために、10のまとまりとあといくつあるのかを考えながら計算することになっているのです。

それでは始めます。

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「9+4」を「10+□」にしたいのですが、「9」はあといくつで「10」になるでしょう。

「9」に「1」を足すと「10」なりますね。 そこで足す数の「4」からひとつもってきて、足される数の「9」を「10」にしてしまいます。「4」はひとつもっていかれたので「3」になります。

「9+4」だった式が、この操作で「10+3」になりました。答えは「13」。つまり「9+4」は、10のまとまりとあと3になるというわけです。

この例では、足される数を10のまとまりにしましたが、足す数を10のまとまりにする方法も出てきます。操作が視覚的に逆になるので、これはこれで難しく感じる子どももいます。教科書の中には、さらに足される数と足す数からそれそれぞれ「5」をもってきて真ん中で10のまとまりをつくる方法を扱っているものもあります。

10進法を身につけるために10のまとまりを意識するという考えはわかりましたが、一年生にしてはかなり難しいですよね。ただ、教科書はいきなり難しいことを求めているわけではありません。実は10のまとまりを作ったり、ひとつの数字をふたつの数字に分解したりすることを、一学期からの単元で少しずつやっているのです。こうした積み重ねの中で、このサクランボ計算があることを知っておいてください。

ただ、実際は積み重ねが充分でないまま、つまずいてしまう子どもがたくさんいます。もちろん一学期の単元に戻って学び直す方法もありますが、ここでは、サクランボ計算を丁寧に少しずつ進めながらできるようにしていく方法を次にお話します。時間はかかりますが、チャレンジしてみましょう。

子どもの多くは、次の二点でつまずいてしまいます。その部分を丁寧に練習しながら全体の計算につなげていきます。

@ 10のまとまりをつくることを意識しながらだと、足す数をいくつといくつに分けたらよいかわらなくなる。

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A 分けた数のうち10にする数字を左に書き、もうひとつの数字を右に書かなければならないのに、間違えて逆に書いてしまううちにわからなくなる。


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最初は、@のつまずきをなくすために、10のまとまりをつくることを意識しながら足す数をふたつの数に分ける練習だけをします。ノートに「9+4」と書いて分けるところだけを練習するわけです。

「9+4」を例にとると「4」のわけかたは「1と3」と「2と2」のふたつあります。足される数を10にすることを考えながらピッタリの組み合わせを見つけるわけですから、意外と難しいのです。それなりの量をやらないと効果がありませんので、一回できたらOKとしないよう気をつけてください。


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もし、スムーズに分けることができるようでしたら、次の段階を見越して、分けたふたつの数のうち10のまとまりをつくる方を左側に書いておくように練習すると良いと思います。ただ、この段階では左右逆なってしまうことがあってもかまいません。あくまでも10のまとまりをつくるために、足す数をピッタリふたつの数にわけることを重視します。

足す数をスムーズにわけることができるようになったら、ノートに分けた数をサクランボのようにして書く練習をします。

これはAのつまずきのための練習ですから、わけた数のうち「10のまとまりをつくる数」はサクランボの左側に、もうひとつの数を右側になるよう書かせます。一息に答えを出すところまでいかないようにしてくださいね。ここでも丁寧に進めていきましょう。

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@で練習した「10のまとまりを作るために足す数をふたつに分ける」ことと「10のまとまりをつくる数は左側に書く」ことの両方をするわけですから、これも大人が考えている以上に難しいと思って取り組んでください。

もし途中から間違える(わからなくなる)ことが増えてくるようあれば、@とAの内容が混乱してきている可能性があります。少し気持ちと時間の余裕をもたせてみるか、一旦休憩するか翌日以降に再度やってみたほうが良いかもしれません。

ここまでスムーズにできるようになった、始めて全体を通して計算してみます。順番にこなせるようになったことを確認できたら、まとまった量の練習をしましょう。ただ、計算のプロセスが長いので、まとまった量といっても4問くらいずつのほうが良いようです。ほぼこれでできるようになるはずです。

この単元は、足される数を10のまとまりにする計算の後に、足す数を10のまとまりにする計算もでてきます。やり方は同じですが視覚的に逆になるので、戸惑ってしまう子どももいます。「同じように計算する」と言うだけでなく、上記と同じように少しずつ丁寧に進めてください。

Posted by ookubo at 20:41 | 技術編 | この記事のURL
足す数(右の数)を小さいものから始めてみる [2015年09月15日(Tue)]
〇足す数(右の数)を小さいものから始めてみる

足し算は引き算に比べて子どもたちの理解が早いことは、多くの大人が体験的に知っています。ただ引き算と「比べて」の話であって、どんな子どもでもスムーズに進めることができるわけではありません。

足し算は小学校に入学して5月が終わるころ本格的に始まります。本格的にと言ったのは、その前の単元でふたつの数をブロックなどの具体物と照らし合わせながら、「合わせていくつ?」または「いくつといくつで10になる?」など日常の言葉で足し算や引き算につながる勉強をしているからです。このブロックなどを使った足し算の「体験」から始め、5月が終わるころ本格的に数字を使った計算になります。

このとき、具体物から数字だけの計算にうまく切り替えることができない子どもたちがいます。詳細は後で触れますが、『ブロック(または指を使うと)できるのに、数字だけだとできない』ときは、足す数(右の数)を小さいものが始めてみたらどうでしょうか。

「3+5」ではなく、「5+3」のように足す数を「1」から「3」までにして練習してみると、ブロックや指を使わなくてもできるようになることが多いようです。

もし足す数を小さくしてできるようであれば、次は足される数(左の数)をいろいろ変えて(足す数は「1」から「3」までにしておくことを忘れずに)、繰り返し練習してみます。

何度も繰り返しているうちに暗算でできるようになったら、ここで始めて足す数を増やしてみます。それも一度に大きな数を使わずに、「1」から「3」までだったものに「4」と「5」を加えてみます。

これもまた暗算できるようになったら「6」と「7」を加えてみます。次の「8」と「9」を加えての練習はそれほど時間はかかりません。ここでは答えが10までの足し算を練習しているわけですから、足す数が「8」と「9」では足される数は「1」と「2」しかないからです。

最初は教える方も時間とエネルギーが必要ですが、途中からスムーズに進めることができますし、子どもも「できる」自信をもちながら勉強続けることができると思います。

そして、できることならこの段階でブロックや指を使わずに暗算でできるところまで目指してほしいと思います。

一年生の計算では、これまで指を使い続けることについて様々な意見がありました。学校での授業の様子を見ていると、二年生でも指を使っている子どもに出会うことがあります。最近はどこの学校でも、指を使う子どもにやめるよう指導していることはほとんどないと思います。ただ、これはどちらかというとやむを得ない措置で、その子どもに指を使わないで計算することを求めても、もはやこの授業の段階では難しいことを先生がわかっているからです。

実は10までの足し算で、暗算できない(指を使って何とか計算できる)という状態のままだと、単元が進んで
「10+6」や「8+2+3」などの計算になると授業についていくことが苦しくなる可能性が高くなります。

もちろん、苦しんでいる子どもを見過ごしてしまう先生ばかりではありません。「指を使ってもいいよ」とか「ゆっくりで大丈夫だからね」と時間に余裕をもたせるなどの配慮が期待できるかもしれません。

でも、次の単元は新しいことを身につけるためにありますから、暗算できる子どもは
「10+6」などを学んでいる一方で、暗算できない子どもは「指を使う練習」と
「10+8」をまとめて学ばなければならないことになります。できない子どものほうが負担が大きいわけです。

同じ時間に学ばなければならないことが増えるから苦しいのです。

そして、なんとか頑張って乗り切れたとしても、次の繰り上がりの足し算では、いよいよどうにもならなくなってしまいます。

もちろん、中には指を使い続け計算のプロセスが複雑になったり数字が大きくなったりしても、自然に指を使わないでできるようになる子どももいます。ただ、それを多くの子どもに求めるよりも、10までの足し算の段階で私たちが丁寧な教え方をすることのほうが確実です。

「指を使っても良い」というのは、あくまでも授業の進行上やむを得ないといことであり、指を使い続けても、いずれ皆(指を使わないで)できるようになるというわけではないのです。

Posted by ookubo at 14:00 | 技術編 | この記事のURL
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