立体図形と展開図の関係
[2016年09月15日(Thu)]
〇立体図形と展開図の関係
二年生の三学期になると、「はこ(箱)の形」という単元で、初めて立体図形を学習します。図形は比較的やさしい単元と思われることが多く、確かに多くの子どもたちが苦労せずできるようです。これまで数字を使った単元で苦労してきた子どもにとっても、楽しく授業に参加できる時間だったりもします。
ところが、この単元で、箱の形を見て展開図を書いたり、展開図を書いて箱を作る授業になると、急にわからなくなる子どもがいることを知っておいてほしいと思います。
学校の先生でも、楽しく取り組んでいる子どもたちに目がいってしまい、気がつかないまま取り残してしまうことがあるくらいです。大きな問題はないだろうと思うかもしれませんが、ここがわからないままだと、三年生の「円と球」でもつまずき、四年生の「立方体と直方体」でもつまずきます。
中学生の数学や技術の時間に、展開図が書けず苦労しているケースのほとんどは、小学校二年生のつまずきから始まったと思っていいでしょう。
箱の形から展開図を書くこと(またはその逆)が苦手な理由は、
辺と辺の接する場所を考えることと、箱の全体のイメージを考えることを、同時にイメージしなければならないことにあります。
箱の形は、タテやヨコの長さはいろいろですし、展開のパターンも11種類もあります。視覚的に考えなければならないふたつの課題を、お互いにすり合わせながら同時におこなうことが難しいわけです。
もし箱の形が一種類しかなく、展開のパターンも一種類であれば、難しいことは言わずに丸暗記という手もあるかもしれません。ところが実際の授業では、たくさんの種類が立て続けに出てくるので、多くの子どもが感覚的にできてしまう陰で、ますます混乱してしまうことになります。
もし、展開図を書くことが苦手なようでしたら、下記のような練習をしてみてください。
まず、箱の形を展開できる教具が必要です。学校の先生などでなくても、誰でも買うことができるものをピックアップしてみました。
マジキャップ
マグフォーマ
購入が難しい場合は、画用紙と繰り返し貼れるテープを使って箱を作ってもかまいません。
その際、六面とも同じ形ではなく、ティッシュの箱のように各面の形が異なる箱にするのがコツです。
@まず最初に、完成してある箱型のものを、展開図になるよう分解します。
A次に、分解したものをノートに写してみます。このとき輪郭だけ書くのではなく、展開図になるよう、面をひとつひとつ並べた形で書きましょう。子どもが試行錯誤して取り組んでいる最中は口を出しません。また展開図は多少曲がったり歪んで書いてしまっても問題ありません(辺や角を正確に書かせる必要はありません)。
これを、いろいろアレンジして繰り返します。@の分解の際に右側の面から分解したようだったら、次は左側の面でもやったり、手前の面からやったりします。また複数の色のブロックがあれば、ブロックの色をそろえて同じ色でやったりするのも良いかもしれません。飽きないように工夫することがポイントです。
ここまでスムーズにいくようになったら、次のステップになります。
@あらかじめ、ふたつ同じ箱を作っておきます。
A子どもが取り組む前に、ふたつのうちひとつの箱を完全にバラバラに分解しておきます(ブロックどうしがつながっていない状態にします)。
B子どもに、残った箱の形をみせながら、バラバラのブロックをつなぎ合わせて展開図を作ってもらいます。前のステップで書いた展開図と同じように、それをブロックで作るわけです。ここでも子どもの試行錯誤を見守り、口を出さずに待っていましょう。
Cできあがったら、できた展開図を実際に組み立ててみましょう。同じ形の箱ができるかどうか楽しみながらやるのがコツです。間違えてもかまいません。変な形になったのを、お互いに笑ったり、不思議な顔をしながら楽しみます。二回まで再チャレンジします。それ以上だと嫌になったり飽きてしまうことがあるので、あまり頑張らせることをしないで、次の箱に移りましょう。
Dこれを何度か繰り返します。ここでも色を変えたりなど工夫をしながら進めてください。
もし宿題もやらなければならないようでしたら、練習でつかったブロックを使ってやっても良いでしょう。練習前とは比べものにならないくらいスムーズにできると思います。
この練習は、辺と辺の接する場所や箱の全体のイメージを同時に考えなければならない負担を(ブロックを使うことで)軽減し、箱から展開図(またはその逆)へのつながりをスムーズに理解できようにするのが特徴です。
欠点として、負担が減った辺と辺の接する場所と全体のイメージを同時的におこなう思考力は、ある程度の量をこなさないと(繰り返し練習しないと)身につかないことが挙げられます。
教科書は、そのあたりのことをある程度わかっているので、向き合った面どうしの色を同じにすることや、箱を画用紙の上に置き写し取るなど、位置関係を把握しながら展開図を書かせるなど、指導書を通じてアドバイスをしています。
しかし、実際の授業では、同じ色の面を意識したり箱を書き写してできるようになっても、(授業は成立するかもしれませんが)この授業のねらいである「箱の形を構成する面のつながり方がわかる」ようにはならないことがあります。
また、手先が不器用な子どもにとって、作業そのものでつまずいてしまい、何の授業かわからないこともあります。中には、箱を作ったことしか残らない授業もときどき見受けられます。
したがって宿題に出されてしまうと、家ではお手上げというわけです。
箱の形と展開図は、いつも以上に楽しそうに取り組む子どもが多いので、苦手な子どもやその理由について取り上げられる機会が少ない単元です。でも、ここで落ちこぼしてしまった子どもは、積み重ねの問題から、学年が上がるにつれて補うことが難しくなり、中学生になっても苦労してしまことにつながってしまいます。
大人が苦手な原因を知ってその負担をできるだけ減らし、子ども自身が手の感触を使い試行錯誤する時間が保障されると、あとは子どもが自ら「わかる」「できる」ようになるわけです。
二年生の三学期になると、「はこ(箱)の形」という単元で、初めて立体図形を学習します。図形は比較的やさしい単元と思われることが多く、確かに多くの子どもたちが苦労せずできるようです。これまで数字を使った単元で苦労してきた子どもにとっても、楽しく授業に参加できる時間だったりもします。
ところが、この単元で、箱の形を見て展開図を書いたり、展開図を書いて箱を作る授業になると、急にわからなくなる子どもがいることを知っておいてほしいと思います。
学校の先生でも、楽しく取り組んでいる子どもたちに目がいってしまい、気がつかないまま取り残してしまうことがあるくらいです。大きな問題はないだろうと思うかもしれませんが、ここがわからないままだと、三年生の「円と球」でもつまずき、四年生の「立方体と直方体」でもつまずきます。
中学生の数学や技術の時間に、展開図が書けず苦労しているケースのほとんどは、小学校二年生のつまずきから始まったと思っていいでしょう。
箱の形から展開図を書くこと(またはその逆)が苦手な理由は、
辺と辺の接する場所を考えることと、箱の全体のイメージを考えることを、同時にイメージしなければならないことにあります。
箱の形は、タテやヨコの長さはいろいろですし、展開のパターンも11種類もあります。視覚的に考えなければならないふたつの課題を、お互いにすり合わせながら同時におこなうことが難しいわけです。
もし箱の形が一種類しかなく、展開のパターンも一種類であれば、難しいことは言わずに丸暗記という手もあるかもしれません。ところが実際の授業では、たくさんの種類が立て続けに出てくるので、多くの子どもが感覚的にできてしまう陰で、ますます混乱してしまうことになります。
もし、展開図を書くことが苦手なようでしたら、下記のような練習をしてみてください。
まず、箱の形を展開できる教具が必要です。学校の先生などでなくても、誰でも買うことができるものをピックアップしてみました。
マジキャップ
マグフォーマ
購入が難しい場合は、画用紙と繰り返し貼れるテープを使って箱を作ってもかまいません。
その際、六面とも同じ形ではなく、ティッシュの箱のように各面の形が異なる箱にするのがコツです。
@まず最初に、完成してある箱型のものを、展開図になるよう分解します。
A次に、分解したものをノートに写してみます。このとき輪郭だけ書くのではなく、展開図になるよう、面をひとつひとつ並べた形で書きましょう。子どもが試行錯誤して取り組んでいる最中は口を出しません。また展開図は多少曲がったり歪んで書いてしまっても問題ありません(辺や角を正確に書かせる必要はありません)。
これを、いろいろアレンジして繰り返します。@の分解の際に右側の面から分解したようだったら、次は左側の面でもやったり、手前の面からやったりします。また複数の色のブロックがあれば、ブロックの色をそろえて同じ色でやったりするのも良いかもしれません。飽きないように工夫することがポイントです。
ここまでスムーズにいくようになったら、次のステップになります。
@あらかじめ、ふたつ同じ箱を作っておきます。
A子どもが取り組む前に、ふたつのうちひとつの箱を完全にバラバラに分解しておきます(ブロックどうしがつながっていない状態にします)。
B子どもに、残った箱の形をみせながら、バラバラのブロックをつなぎ合わせて展開図を作ってもらいます。前のステップで書いた展開図と同じように、それをブロックで作るわけです。ここでも子どもの試行錯誤を見守り、口を出さずに待っていましょう。
Cできあがったら、できた展開図を実際に組み立ててみましょう。同じ形の箱ができるかどうか楽しみながらやるのがコツです。間違えてもかまいません。変な形になったのを、お互いに笑ったり、不思議な顔をしながら楽しみます。二回まで再チャレンジします。それ以上だと嫌になったり飽きてしまうことがあるので、あまり頑張らせることをしないで、次の箱に移りましょう。
Dこれを何度か繰り返します。ここでも色を変えたりなど工夫をしながら進めてください。
もし宿題もやらなければならないようでしたら、練習でつかったブロックを使ってやっても良いでしょう。練習前とは比べものにならないくらいスムーズにできると思います。
この練習は、辺と辺の接する場所や箱の全体のイメージを同時に考えなければならない負担を(ブロックを使うことで)軽減し、箱から展開図(またはその逆)へのつながりをスムーズに理解できようにするのが特徴です。
欠点として、負担が減った辺と辺の接する場所と全体のイメージを同時的におこなう思考力は、ある程度の量をこなさないと(繰り返し練習しないと)身につかないことが挙げられます。
教科書は、そのあたりのことをある程度わかっているので、向き合った面どうしの色を同じにすることや、箱を画用紙の上に置き写し取るなど、位置関係を把握しながら展開図を書かせるなど、指導書を通じてアドバイスをしています。
しかし、実際の授業では、同じ色の面を意識したり箱を書き写してできるようになっても、(授業は成立するかもしれませんが)この授業のねらいである「箱の形を構成する面のつながり方がわかる」ようにはならないことがあります。
また、手先が不器用な子どもにとって、作業そのものでつまずいてしまい、何の授業かわからないこともあります。中には、箱を作ったことしか残らない授業もときどき見受けられます。
したがって宿題に出されてしまうと、家ではお手上げというわけです。
箱の形と展開図は、いつも以上に楽しそうに取り組む子どもが多いので、苦手な子どもやその理由について取り上げられる機会が少ない単元です。でも、ここで落ちこぼしてしまった子どもは、積み重ねの問題から、学年が上がるにつれて補うことが難しくなり、中学生になっても苦労してしまことにつながってしまいます。
大人が苦手な原因を知ってその負担をできるだけ減らし、子ども自身が手の感触を使い試行錯誤する時間が保障されると、あとは子どもが自ら「わかる」「できる」ようになるわけです。