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7月9日「バイオマスエネルギーの未来技術」講演会の報告[2024年07月30日(Tue)]
 NPO法人農都会議は、7月9日(火)夕、2024年総会記念講演会「バイオマスエネルギーの未来技術 〜バイオマスエネルギーを取り巻く最近の動向、希望と課題」をハイブリッドで開催しました。
 →イベント案内

7月9日講演会

 総会記念講演会にあたりバイオマスエネルギーの未来技術の可能性と展望を掘り下げようと、広島大学の松村教授をお招きしてエネルギーの最新動向などをお聞きしました。
 会場の港区三田いきいきプラザとオンラインに約50名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。農都会議の杉浦代表理事が開会挨拶し、吉井哲三運営委員が司会と閉会挨拶を務めました。


7月9日講演会


 第1部は、広島大学大学院先進理工系科学研究科・エネルギー超高度利用研究拠点教授の松村幸彦氏より、「バイオマスエネルギーを取り巻く最近の動向」のテーマで基調講演がありました。

7月9日講演会

7月9日講演会

 松村氏の講演の概要を記します。
・日本においてバイオマスをどうやって使っていくのが合理的なのか、あるいはそもそも バイオマスは必要なのか、といった 論点に対して、22年9月に「広島 シナリオ」を検討し公表した。「広島 シナリオ」は、広島大学 エネルギー超高度利用研究拠点(HU-ACE)が中心となり、エネルギーに関する国際シンポジウムに参加する専門家が集まって作り上げた 、脱炭素社会の実現に向けた具体的な ロードマップである。
・日本は年間約20 エクサジュールのエネルギーを消費しており、その内訳を踏まえて、脱炭素化社会を2050年に実現するために、広島 シナリオでは、自動車、太陽光発電、電力貯蔵、電化など、様々な要素を考慮して、@電化の推進→A再生可能エネルギーの導入→B蓄電池の活用→C適切な技術導入、の4つのアクションからなるシナリオを提案している。
・国内のエネルギーが主に再生可能エネルギー電力で賄えることができた場合のバイオマス利用の最適化については、従来型の混焼や燃焼利用ではなく、電力で賄えない分野である製鉄用コークス代替、ジェット燃料、プラスチックなどの化学原料としての利活用と、炭化による土中への 炭素固定として活用する可能性について提案している。
・製鉄、ジェット燃料、プラスチック原料に必要な炭素量を足し合わせると16.4×100万トンとなるが、国内で利用可能なバイオマスからの炭素の量は26×100万トンなので、十分に賄うことができると試算されている。
・このためのバイオマスの技術としては、ガス化、液化、炭化など、バイオマスの高効率利用のための技術開発が求められる。
・従来、濡れたバイオマスの変換技術はメタン発酵が使われているが、濡れたバイオマスを高速かつ高効率にガス化できる技術として、超臨界水ガス化が注目される。218気圧の高温高圧下では水は臨界状態となるが、これを超える高温高圧の超臨界水の中にバイオマスを投入すると、数分という短時間に分解し効率的にガス化する。1t/dayのパイロットプラントでもほぼ100%の炭素ガス化率が達成できている。
・バイオマスはエネルギー資源ではあるが、炭素源として炭素を供給できるエネルギーであることをあらためて認識して、脱炭素社会においては炭素源として使っていく形がバイオマスに求められる一つのあり方であろう。


 第2部は、NPO法人農都会議事務局長の山本登氏より、「RED-II, RED-III情報 バイオマスエネルギーの将来、現状の問題点と課題」のテーマで講演がありました。

7月9日講演会

7月9日講演会

 山本氏の講演の概要を記します。
・我々NPO法人農都会議は、バイオマス熱利用の飛躍的拡大を目指して、活動を推進してきた。しかし、木質バイオマス利用、特に木質バイオマス熱利用の設備数の伸びは、2014年をピークに、以降は減少に転じている。その数も2,000台程度と、欧州の量産バイオマスボイラーメーカー1社が年間に生産する台数にも満たない規模である。
・欧州でも、バイオマスエネルギー政策の課題、限界が見えてきており、その転換がRED-II(2018)、RED-III(2021)が制度化され実施されている。これらは、EUにおけるバイオマスエネルギーの利用を促進しながら、持続可能性と環境保護を強化するための重要な政策指令。
・RED IIは、バイオマスエネルギーの基盤を築き、RED IIIはそれをさらに発展させるための具体的な施策を提供。これらの指令により、EUは持続可能なバイオマスエネルギーの利用を推進し、再生可能エネルギー割合の大幅増加を目指している。
・具体的には、特定のバイオマス発電への補助金の禁止、バイオマス燃料のカスケード利用促進などがある。当然であるが、日本でも同様の規制が必要であることは言うまでも無い。
・日本のバイオマスエネルギーの実情は、資料の図1に日本のバイオマス発電およびバイオマス熱利用比率の推移があるが、最近では低迷している。
・FIT制度により、バイオマス発電は一定の発展をしてきたが、その効率の低さや費用対効果の問題が指摘されている。
 −低い発電効率:30%しかなく廃熱が無駄。
 −コストの上昇:FITコストが電気料金に転嫁され、消費者負担が増加。
 −技術革新の遅れ:20年にもわたる固定価格保証のため新技術開発の遅れは否めない。
 −国民はバイオマスエネルギーに期待していない。
・このため、FIT制度に替わる政策提言を我々は実施している。この問題解決のために、バイオマスのカスケード利用促進、熱電併給(コジェネレーション)のさらなる推進、バイオマス熱利用の促進などを関係省庁に働きかけている。
・しかし、社会全体の中でバイオマスエネルギーの理解と認識が進んでいるかというと、かなり疑問である。
・我々も含め、化石燃料で生産されたエネルギー社会にどっぷり浸かり、何の不自由も感じていないためである。バイオマスエネルギーを本当に促進するのであれば、何ならかの法規制と支援制度が必要であると考える。


 第3部は、質疑応答と「バイオマスエネルギーの未来技術、希望と課題」をテーマにディスカッションが行われました。
 (ディスカッションの記録を作成中です。しばらくお待ちください。)

7月9日講演会

7月9日講演会

パネリストは、松村幸彦氏とオフィス・ネオ主席研究員、NPO汎房総地域づくり研究会 事務局長の高橋章氏、モデレーターは、山本登氏でした。

7月9日講演円会

7月9日講演円会


 今年も盛況な総会記念講演会となりました。講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 23:23 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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