11月13日バイオマスアカデミー 第8回セミナーの報告[2023年11月16日(Thu)]
NPO法人農都会議バイオマスアカデミーは、11月13日(月)夕、「バイオマスアカデミー第8回セミナー 〜バイオマス熱利用の普及拡大への道筋、温水ボイラー分科会からの提案」をオンラインで開催しました。
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40余名の参加者が集まり、講演と質疑応答、パネルディスカッションが行われました。
今回は、木質バイオマスボイラーを地域へ導入することをお考えの方、お仕事で活用することをお考えの方などのお役に立つようにと、バイオマスボイラーの特性と活用方法、導入事例を詳しくお話しするバイオマス熱利用の「中・上級者向け」の内容となりました。
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40余名の参加者が集まり、講演と質疑応答、パネルディスカッションが行われました。
今回は、木質バイオマスボイラーを地域へ導入することをお考えの方、お仕事で活用することをお考えの方などのお役に立つようにと、バイオマスボイラーの特性と活用方法、導入事例を詳しくお話しするバイオマス熱利用の「中・上級者向け」の内容となりました。
NPO法人農都会議の川端康正運営委員(アジア航測株式会社技師)が司会進行を務め、杉浦英世代表理事が開会挨拶を行いました。
第1部は、はじめにNPO法人農都会議事務局長の山本登氏より、「バイオマスボイラーのベストプラクティス活動、木質バイオマス熱利用の飛躍的普及拡大に向けて」のテーマで講演がありました。
山本氏の講演の要旨です。
・欧州はバイオマス先進国であるが、全てが同じではない。特に南欧は気候が温暖でもあり、日本同様に、バイオマス熱利用が遅れている。
・先進諸国のバイオマス熱利用設備普及率は10₋15%程度であり、現状でもガス石油機器が大勢を占めている。
・日本は薪・ペレットストーブが比較的安価で、住宅の小改造で、設置可能であり世界第4位の普及率である。
・日本とEU諸国のバイオマスボイラー普及の決定的な違いは50Kw・小型ボイラーであり、EU諸国と日本の家屋構造の差といえる。普及しやすいインフラが整備されている。
・日本でも各家庭に普及できればバイオマス熱利用は大いに普及する。バイオマスアカデミーは今後もバイオマス熱利用の普及に全力で取り組んでいく。
次に、熱エネルギー技術利用デザイン代表、元神鋼リサーチ株式会社代表取締役の黒坂俊雄氏より、「バイオマス温水熱利用ベストプラクティスの性能指標と導入意義」のテーマで講演がありました。
黒坂氏の講演の要旨です。
・2020年当初、バイオマス温水ボイラーを導入したが稼働停止している等の事例が多く、その多くの原因が技術であったため、「バイオマス熱利用の理論と実践」の出版、ベストプラクティス研究会による優良事例を具体的なデータと共に開示しようとする活動を推進してきた。
・近年の石油価格の高騰から、バイオマスボイラー導入の経済性は相当に向上し、温浴設備等の年間の安定熱需要があるところでは十分な経済性が見込めるようになり、今後の普及拡大が期待される。
・一方で、短期収益重視でイニシャルコストが安価であるが、効率が低い、電力消費の多い設備では、地域の燃料の買取価格を抑える必要があり、持続性に課題を残す。
・高効率なシステム設計の重要性は石油価格が高止まりしている現状も変わりなく、ベストプラクティス情報を公開して、導入計画者が事業計画をイメージし易い状況を作りだすことが、バイオマス熱利用の圧倒的な普及拡大の第一歩と考えている。
第2部は、質疑応答と「バイオマス熱利用の本格的普及拡大のために我々は何を実践すべきか?」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
モデレーターは篠田株式会社JALCZ課課長の柳楽行宏氏の氏、パネリストは山本登氏と黒坂俊雄氏、WBエナジー株式会社代表取締役の梶山恵司氏でした。
最初に、梶山氏より「木質バイオマス熱利用 置賜地区視察会」のテーマでプレゼン発表がありました。
梶山氏のプレゼン要旨です。
・バイオマス熱利用を進めるための条件である、@技術体系の整理とそれに基づく成功事例の増加、A圧力規制の緩和、B補助事業の充実、C原油高・円安による化石燃料の高騰と脱炭素の流れ等、が進展している。
・残る課題として、燃料調達の不安に加え、発電とは異なり、現場ごとに需給を一致させるエンジニアリングが必要なこと、関係する事業者はみな中小規模の事業者であり、ファイナンスに課題があることが、指摘できる。
・これら課題に対応しバイオマス熱利用拡大の推進力となりうるのが、地域におけるエネルギーサービス事業者(ESCO)による熱供給事業である。これには燃料供給事業者の参画が不可欠の前提である。
・ESCO事業については、地域の実情に合わせた様々な方法が考えられるので、農都会議に相談されたい。
続いて、活発な意見交換が行われました。パネルディスカッションの一部を記します。
○司会(柳樂):日本でボイラの開発が進まず、国の支援も少ないように思う解決方法は?
・山本氏:太陽光や風力も含めて、再エネ自体が進んでいない。EUの事例を入れていくことがポイントか?
・黒坂氏:再エネの考え方遅れているが、太陽光はそこそこ。政策側としては、供給側から考え、量の多いところから考える。それがバイオマスが少ない要因(資源に制約される。大きな産業と結びつかない)。しかし、水素やSAFで民生熱利用は出来ない。バイオマス熱利用を増やすと政策的に決めれば国産化は進む。ただし、汎用量産品になってしまっているボイラーの国産化は難しく、梶山さん意見に同意
・梶山氏:熱は、中小企業の分野。EUではボイラメーカーも中小。ボイラ本体の開発は難しい。EUでもオーストリアが多い。周辺機器が重要。日本でも対応しうる。
○司会:初期投資もランニングを、設備構成から検討できないか?
・黒坂氏:熱重要先の業種、設備機器構成を見ればおおよその推測はつく。しかし、制御が見えにくく、制御次第で稼働率はかなり変わる。制御が見えにくい。性能指標に則って、エンジニアリングをしてもらうことが重要。
・梶山氏:一貫して行っているが、EUでは分業体制が確立している。日本では出来ていない。メーカーがきちんと設計すべき。
○司会:モデル事例(設計や機器選定)の公開はしますか?
・山本氏:総合効率が高いものが売れるというのが欧州での印象。その開示が会議ではないか?
・梶山氏:開示できるところは開示したいが、コアな部分は今のところは難しい。
・黒坂氏:事例が蓄積される中で、設備仕様・技術の特徴など、出していっても良いと思う。
そのほかチャットを通じて多くの質問が寄せられ、パネリストより回答がありました。
最後に、NPO法人農都会議の山本事務局長が閉会挨拶を行いました。
農都会議バイオマスアカデミーは、4年半前の発足以来、地域の資源を活用して地域を豊かにする“熱利用技術の体系化と現場での応用・実践が重要”と発信し、木質バイオマス熱利用とバイオマスボイラー普及のために優良事例(ベストプラクティス)の積み上げを働きかけてきましたが、これらの活動は全体の潮流から見れば小さな動きであるかもしれません。しかし、今後も粘り強く続けていくことが重要であると改めて認識しました。
講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。