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8月28日「地域のエネルギー自給と脱炭素化」勉強会の報告[2023年09月15日(Fri)]
 NPO法人農都会議は、8月28日(月)夕、「地域のエネルギー自給と脱炭素化 〜地域づくりと地域経済を意識した取組への展開」勉強会をオンラインで開催しました。
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8月28日地域のエネ自給勉強会

 昨年8月の「地域の脱炭素化とエネルギー自給」勉強会に続いて、今回は「永続地帯研究」や「未来カルテ」など気づきの予測技術を開発されている千葉大倉阪教授、鳥取市ご担当者および島根県邑南町ご担当者から地域の脱炭素化の具体的、先駆的な取組みのお話をお聞きします。 
 約60名の参加者が集まり、講演と質疑応答、ディスカッションが行われました。
 開会挨拶はオフィス・グリーンハット代表、農都会議運営委員の鈴木純一氏が行い、司会進行は芝浦工業大学非常勤講師、農都会議運営委員の永井猛氏でした。

8月28日地域のエネ自給勉強会

 第1部は、はじめに千葉大学大学院社会科学研究院教授の倉阪秀史氏より、「ゼロカーボンシティに向けた地域の脱炭素化」のテーマで講演がありました。

 倉阪氏の講演の概要です。
・IPCC第6次評価報告書で述べられている通り、地球温暖化は人為的な起源であり、科学者は疑いのないレベルで合意している。地球の平均気温を産業化以前に比べて1.5℃以上に上げないという目標がグラスゴー(COP26)で合意されたが、海洋大循環の不全や自然破壊、自然災害は世界で増々拡大しており、早急な対応が必要である。
・パリ協定では、自主的な削減目標が設定され、5年ごとに見直しが行われる。EUは2030年の中間目標も掲げ、ヨーロッパ気候法が成立している一方、日本は2020年にようやくカーボンニュートラルの宣言を行ったものの、世界から1年遅れており、CO2排出量削減目標(2013年基準年度に比べて、46%削減)はまだ不十分である。
・CO2削減の道筋は、無駄な化石燃料を増やさないこと。いまや化石燃料は座礁資産であり、投資を引き揚げる(ダイベストメント)必要がある。現在日本では総輸入額の1/5に当たる国富が化石燃料輸入のため国外に出ていっている。したがって、省エネや再生可能エネルギーへの投資といった脱炭素の取り組みが、長期的に見れば経済的にも合理性がある。
・1次エネルギーの損失の2/3が火力発電での熱損失に由来する。その集中的な火力発電によるエネルギー供給を分散的なエネルギー供給に変えていく必要がある。例えばコジェネを用いた熱電併給を進め、将来のコンパクトシティの核としていくことが考えられる。

8月28日地域のエネ自給勉強会

・原子力発電の復活と投資の必要性は再考すべきである。原子力発電は、新設・リプレイスが無ければ2050年の主力電源にはならない。様々な問題が解決できておらず、原子力発電は公費を投入しなければ維持できない。原子力を推す声がGX20兆円という話の中で復活してきていることが心配。原子力をあてにするより、ソフトエネルギーパスの方で新しい産業を作っていくことの方が確実な方法と考えている。
・日本には豊かな自然エネルギーがあり、各種の再エネを拡大していく余地が大きい。世界的に風力・太陽光などの再エネのコストは低下しており、化石燃料による発電より安くなっている。また固体電池など畜エネルギーの技術にも期待でき、将来大きな産業に発展するかもしれない。
・政府は、脱炭素先行区域を100箇所作るということで指定をすすめているが、本当にそれでドミノが起こるのかという心配がある。2030年にCO2排出量をゼロにできるのは、ほとんどが限定的範囲で、自治体全部について実施されているのはまだ3カ所ぐらいしかない。したがって、こういう基盤的な政策の方をしっかり進めてもらいたい。
・千葉大学がカーボンニュートラルシミュレーターを提供しており、自治体ごとのカーボンニュートラルの達成しやすさを確認することができる。中学生を対象とした未来ワークショップというものがあり、未来カルテとカーボンニュートラルシミュレーターを体験してもらい、2050年に向けた政策提案をしてもらった。地域を巻き込み、長期的な課題については、将来こうなるということを伝えながら、バックキャスティング型の政策形成を行うことに役立つと考える。


 次に、鳥取市経済観光部経済・雇用戦略課スマートエネルギータウン推進室主査の保木本淳氏より、「地域脱炭素でめざす強靭で活力ある次の時代の中山間地域自立モデル〜脱炭素先行地域・鳥取市の取組について〜」のテーマで講演がありました。

8月28日地域のエネ自給勉強会

 保木本氏の講演の概要です。
・鳥取市の地域脱炭素で目指す強靭で活力ある中山間地域自立モデルと、脱炭素先行地域鳥取市の取り組みについて紹介したい。
・鳥取市は令和3年に第三次環境基本計画を策定し、2050年ゼロカーボンシティを表明し同年SDGs未来都市に認定され持続可能なまちづくりを具体的に進めている。背景として人口減少に伴い山積する多くの地域課題に対し、地域の豊かな自然環境を活用した再生可能エネルギーの地産地消を進めることが解決の一つと考えている。再エネ整備や電力販売など地域電力会社鳥取市民電力が中心となり市内地元企業への受注機会の確保など地元企業との連携によって脱炭素社会の構築も図っている。
・今回、脱炭素先行地域に選定されたエリアのひとつ佐治町は一級河川川内川の支流である佐治川沿いに26の集落が点在し、約740世代が生活する過疎地域である。平成16年の市町村合併時から人口が約40%、千人以上が減少して高齢化率も50%を超え、安全安心な暮らしの確保、集落機能や生活交通の維持など多くの課題が山積する中山間地域である。
・中山間地域の有している豊かな自然環境や安全な食糧の供給拠点、水源涵養や流域治水上果たしている公益的な機能や価値は急速に失われつつある今中山間地域の再生持続モデルを構築しなければこの佐治町のような地域は人が住めなくなり、田畑や森林の荒廃が進む。
・中山間地域を多く抱える本市にとって地域脱炭素の取り組みを通じて過疎化の進行を食い止め安全安心に暮らせる町を目指す上で最も厳しい条件である佐治町で実現可能な持続可能モデルを構築できれば、どこでも展開可能なモデルができると確信している。
・食料や再生可能エネルギーを生み出せる地方こそ豊かで価値があり、気候変動対策とエネルギー自給の取り組みを加速させなければならないと考え、今回脱炭素先行地域の取り組みを活用して身近な自然エネルギーを取り込みながら、真に豊かで持続可能な暮らしと中山間地域の進化再生を実現していく考えである。


 三番目に、島根県邑南町地域みらい課総括主任の藤田浩司氏より、「地域脱炭素による地域づくり〜脱炭素先行地域・邑南町の事例より〜」のテーマで講演がありました。

8月28日地域のエネ自給勉強会

 藤田氏の講演の概要です。
・邑南町は島根県の中央部に位置し、人口は1万人に満たない過疎地である。町は日本一の子育て村を目指し、食材の地産地消などを通じて住みやすさを磨いてきたが、人口減少と高齢化率の上昇が課題となっている。
・邑南町では年間6億円から7億円の電気代が町外に流出しており、これを町内で循環するようにしたいと考えた。電気を賄うとなると、必然的に再生可能エネルギーということになってくる。そこから、地域新電力会社が設立された。こうして、邑南町では脱炭素を目的ではなく手段として位置づけ、環境と経済を脱炭素によって取り組もうということになった経緯がある。
・令和3年3月にはゼロカーボンシティ宣言を行なった。宣言と同時に再エネの導入計画を策定した。計画書は住民に好評で、一目でわかりやすい計画にすることで、住民の方々と脱炭素の距離感を縮めることを意識した。議会説明は当然だが、自分が地域に出向いて行って説明会をしたり、その集合体としてフォーラムを開催したりした。地域の皆さんの前に出て行って、何で邑南町は脱炭素をやるのかということを、膝詰めで説明する場を月1回か2回ペースで設けている。
・最終的には、いつのまにか、脱炭素を選択できる邑南町ということを目指していきたい。再エネ電力を地域の町内で消費することはもちろん、地中熱を活用した融雪設備の導入やソーラーシェアリングの計画などにも取り組んでいる。食のサプライチェーンの脱炭素化、食材を作るところから収集集荷して運ぶところ、口に届くまでを炭素化するということも計画している。
・また太陽光パネルが町内で今後増えて、電源が余ってくるということも考え、通勤で使う車をEVに切り替えていただいて、そこに日中に安価で充電できるという環境も作りたい。こうして、移動も脱炭素というところを、いつのまにか選べるように、町として演出をしていきたいと考えている。
・また、町内の高等学校の生徒たちに脱炭素化のロゴを考えてもらい、そのロゴをポロシャツに印刷して販売するなど、地域全体で脱炭素化に取り組んでいる。この取り組みは、再生可能エネルギーの導入への理解促進や高校生の部活動への資金提供など、地域活動の充実にも寄与している。
・これらの取り組みは、町民が脱炭素化の必要性を理解し、それを支持することで推進されている。邑南町はこれらの取り組みを通じて、ハードとソフトの両面から脱炭素化を推進し、住民が自然と脱炭素化を選べるような環境を作り出すことを目指している。


 第2部は、質疑応答と「基礎自治体の特徴を活かした地域の脱炭素化について」をテーマにディスカッションが行われました。
 パネリストは第一部講師の三氏、モデレーターは島根県立大学地域政策学部准教授の豊田知世氏にお願いし、活発な意見交換が行われました。

8月28日地域のエネ自給勉強会

 意見交換の概要を記します。
○司会(豊田氏):地域エネルギー事業の選択は確実安全、産業発展、地域創生につながるが、実際に動くには行政が活躍されないとできない。
邑南町が町の経済、産業の存続のため1つの手段として脱炭素の選択をされたということ、町の人をどう変えていくのかというところで、実際に動くために行われた様々な取組事例をご紹介いただいたと思う。
○倉阪氏:行政だけが頑張っても仕方ない。地域の人々も一緒に考えてもらわないといけない。行政は地域と連携しないと脱炭素の目標が達成できない。
カーボンニュートラルシュミレーターにより目標が達成できるか自動で試算できる。このシュミレーターは9月半ば頃から一般に公開する。
○保木本氏:自治体職員は何年かすると異動があるのでフォローしていくことが大事。地域住民とビジョンを共有しながら対話することが大切。
○藤田氏:住民の方々とつながってやっていきたいと思った。職員同士だと響かないが、住民の方々にこちらの要望をお願いするとすごく動きが早い。住民の方々と取り組めることは将来の投資になると思っている。
○倉阪氏:未来ワークショップを各地で開催している。2050年の市長になったつもりで政策提言を出してもらう。中高生はポジティブに取り組んでくれる。
○保木本氏:住民の地域に対しての誇り、安心安全に暮らし続けたい気持ちが共通の価値観となる。
人口減少が加速している現実がある。大学、小学校、保育園、福祉施設、高齢者施設、中地企業、工業団地など、地域全体に横展開できるような連携が大事。
○藤田氏:行政もお金がないと、税収が増えないと、提供できるサービスもできなくなってくる。行政が準備するのではなく、地域住民で考えることが大切。町の課題を住民の方が理解した上でお金を払うことが必要。
○司会:地域づくり・脱炭素の取組と成果をどのように評価できるか?
○倉阪氏:フローな豊かさではなくストックの豊かさで評価しかなきゃいけない。ストックの手入れをするためにも人手が必要。ケア労働、手入れ労働が政策的にちゃんと確保されなきゃいけない。
人口減少があっても、プラスの方向で地域の目標設定ができるのでないかと思う。エネルギー自給率と食料自給率はそういう一つの指標かなと思う。
○保木本氏:脱炭素先行地域の計画の中でも、取り組みを評価するKPIを設定するということになっている。農林水産業、特に農林業の再生という部分で佐治町エリアに移住してくれることを考えている。
若葉台エリアのアンケートで、電気自動車の普及率が2%という結果が出ている。この町に住み続けられるか、そういうような不安もニーズ調査の中で寄せられている。EVや自動化などと合わせて、移動サービスを提供していくことに持続可能で満足度の高いまちづくりを進めていきたい。そういった指標を設けている。
○藤田氏:現在、地域新電力の担当として関わっている。自分より若い人たちがどれだけ入ってくるか、どんな人が現れてくるかを一つの指標にしたい。
○保本氏:島根県の最西端の津和野町さんに熱供給設備の取組を質問したところご教示いただけた。地域おこし協力隊も活用しながら上手くやられているという印象だ。
○参加者より:政府は2030年までにゼロエネルギー住宅を標準化すると閣議決定している。電気の過不足を補うものとしてエネルギーを自給自足していく。昼間太陽光で蓄電して軽トラなどに充電する。屋根裏ソーラーとソーラーシェアリングをフル活用すれば、県外にエネルギー輸出できる。
○倉阪氏:電池自動車の場合、蓄電池が家庭にあることになり、エネルギースタンドが普及すると自動車の価格が約40%下がる。ガソリンスタンド業界も生き延び、それが調整力となり、一石三鳥、四鳥にもなる。うまく産業政策と絡めてやっていけばエネルギー転換ができると思う。

 最後に、農都会議の杉浦英世代表理事より閉会挨拶がありました。

8月28日地域のエネ自給勉強会
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8月28日地域のエネ自給勉強会


 今回も盛況な勉強会となり、地域のエネルギー自給について理解がいっそう進み、その課題やこれからを様々な視点で深く考える、たいへん有意義な場になったと思います。
 講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 23:59 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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