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7月27日「カーボンニュートラル実現の具体的な提案」勉強会の報告[2023年08月15日(Tue)]
 NPO法人農都会議は、7月27日(木)夕、「カーボンニュートラル実現のロードマップ 〜中期目標達成のための具体的な提案」勉強会をオンラインで開催しました。
 →イベント案内

7月27日CNロードマップ勉強会

 今回は、2050年カーボンニュートラルの中期目標達成へのロードマップとその具体的な提案、2035年電力脱炭素化シナリオ実現の政策提言を、お二人の専門家から詳しく伺いました。
 約50名の参加者が集まり、講演と質疑応答、ディスカッションが行われました。開会挨拶はNPO法人農都会議の杉浦英世代表理事が行い、司会進行は芝浦工業大学非常勤講師、農都会議運営委員の永井猛氏にお願いしました。
 第1部は、はじめに東北大学東北アジア研究センター・同大学院環境科学研究科教授の明日香壽川氏より、「2050年カーボンニュートラルを実現するための中期目標達成までのロードマップ〜その具体的な提案」のテーマで講演がありました。

7月27日CNロードマップ勉強会

 明日香氏は、パリ協定で合意した努力目標「気温上昇1.5℃以内に抑える」ためにまとめられた日本版グリーンニューディールの経済合理性、その際の雇用転換イメージ、電力に関する価格見通しと安定供給の検証などについて、現状認識を踏まえてお話しいただきました。

 明日香氏の講演の概要です。
(1)熱波・干ばつ・洪水などで現在の気象災害避難者は年間約3000万人と早急なエネルギー転換が必要、石炭火力転換と政界の再エネ電力割合
(2)温室効果ガス排出削減のオプションとして発電エネルギー技術の新設コスト比較、IEA文献でも最近は原発新設はかなり高くなっている、蓄電池を含めて運転延長も安くない、温室効果ガス排出削減コストでは原発運転延長と再エネ新設はほぼ同じ
(3)日本版グリーン・ニューディールは政府GX実行計画とは優先順位が違う、レポート2030のグリーン・リカバリー(GR)戦略における経済効果など、GR戦略の経済合理性、地方版グリーンニューディール:横浜市の脱炭素対策・経済効果
(4)まとめ
@無駄にするお金や時間はない!
・政府の2030年46%削減目標(13年比)はパリ協定の1.5度目標に整合性なく、それさえ目標達成を危ぶまれている
・ゆえに、早急なエネルギー転換および温室効果ガス排出削減が必要
・原発への投資は他の発電技術エネルギーへの投資と比較して排出削減量は小さい。かつ新設の場合、排出削減は10数年後
・さらに、原発特有のリスクがあり(日本は地震国)、雇用も生まない
Aより良い代替案はあるけど特効薬はない
・原発・化石燃料の代替案(再エネ・省エネ)の方が光熱費が低下し、電力不足にもならない。GDP低下もなく、逆に雇用は全体的には増加(特に地方で増加)
・しかし、レポート2030にある代替案(13年比60数%)でも1.5度目標とは整合しない
・基本的に、エネルギー転換や気候変動対策に特効薬はなく、すべての分野で再エネ・省エネ導入を進めるための政策を地道に策定・導入し、阻害するような政策を阻止・廃止していく必要がある


 続いて、一般社団法人Climate Integrate代表理事の平田仁子氏より、「2035年電力脱炭素化シナリオ実現のための政策提言」のテーマで講演がありました。

7月27日CNロードマップ勉強会

 平田氏の講演の概要です。
・平田氏が率いるクライメートインテグレートは、米国ローレンスバークレー研究所との協働で、2035年の電力システムの90%脱炭素化を実現するシナリオを検討し、これに基づく電源構成モデルの分析結果を今年3月に発表した。本レポートでは、2035年の電力システムを脱炭素化するために、現状との比較分析から、日本で必要と考えられる政策を10の提案( 3つの国家ビジョンと 7つの政策措置)として取り纏めている。
・世界の気候変動対策が、温度上昇1.5℃以下を達成することを目標としている中で、日本がこの気候変動に向き合うためにどのように国を転換させていくべきか、というグランドデザインは、今般国が示したGXから読み取ることができない。このグランドデザインの構築は、今回レポートの提言の一つである。
・本レポートのシナリオでは、政府の2030年のエネルギー基本計画に加え、費用最小の脱炭素化対策を条件に、2035年までに石炭火力の廃止と根本的な再エネへの転換、特に洋上風力の急速拡大を盛り込んで、2035年に電力の90%脱炭素化を達成できるとしている。そのためには、洋上風力は2035年までに43 GWという大規模な導入が必要であり、建設計画が長期に亘ることから、いまから部品サプライチェーンの国内産業化や雇用の移行などの、産業転換政策を今から図っていくことが肝要である。
・カーボンプライシングの導入、再エネの地域共生化、電力市場の再設計も重要な政策として提言している。また特に国に期待される財政処置は、上に述べたエネルギー転換にともなう公正な移行を支援し、クライメートテックなどの新しい産業への投資促進を図るものでなくてはならない。


7月27日CNロードマップ勉強会

 第2部は、質疑応答と「地域主導・ボトムアップ型の脱炭素化シナリオを考える」をテーマにディスカッションが行われました。
 パネリストは第1部の講師のお二人、モデレーターは有限会社みやび設計代表、農都会議運営委員の吉野雅一氏でした。

7月27日CNロードマップ勉強会

 まず明日香氏から国会で可決成立したGX関連2法について、気になっている点について、お話がありました。原発に関して言えば新設時の補助金だけでなく、既設の原発にも脱炭素電源オークションによって、その安全対策費に再エネの電気だけを使っている人も電気代として支払する制度となっており、結局、税金と同様に取れるところから取ることになっていることです。結局、高いものは何らかの理由でお金を取ってこないと動かないのではないかとの指摘がありました、平田氏からも原子力と同様に、アンモニアや水素も石炭火力がなくならない様に、それが安定的でコストも安いといったイメージづくりが行われており、新しい原発に至っては2030年に1基の建設となっていることも紹介頂きました。日本人は地理的、気候的にも恵まれ、暑くなっても40℃に至らない事が多い国に住んでいることから、瞬間的に夏の猛暑時期は気になっても、秋になれば忘れてしまうところがあり、情報戦が行われている今は、先ず経済合理性の様な事実に基づいた議論をもっと深めていく必要があると明日香氏から話がありました。
 参加者から公正な市場競争を実現するために、発販分離に加えて、送配電会社の所有権分離が必要でないかとの意見があり、平田氏から現状は法的分離に留まっており、所有権分離を行うことで、電力市場自由化を徹底する事ができると話がありました。明日香氏からも最近、販売部門の旧一般電気事業者系電力会社が50円位の原発の電力を購入していた事が分かり、今後、様々な場面で話をしたいとの話もありました。
 洋上風力発電に関して平田氏から、その設置に伴う魚への影響及び漁業利益関係者の特定が急務であることの指摘がありました。再生可能エネルギー導入普及の観点から類似事例として、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の普及が日本では進んでいないが、規制緩和は少しずつ行われているものの、利益関係者との設置に伴う条件整備が今後必要ではないかと、明日香氏から話がありました。

7月27日CNロードマップ勉強会

7月27日CNロードマップ勉強会

 地域の脱炭素化を進める地方自治体の動きとして、平田氏から白馬村と市川市の2自治体について紹介がありました。白馬村は村内に居住する村民有志が作成した「白馬村ゼロカーボン行動計画提言書」を村長に提出、それに至るまでの動きと、現在は白馬村役場全職員を巻き込んだ動きとなっている話がありました。(参考:NPO法人気候ネットワーク主催「小・中規模自治体でもゼロカーボン行動計画!連続ウェビナー第2回「白馬村」https://www.kikonet.org/event/2023-07-31)市川市は、平田氏が市長から同市の温暖化対策に関する助言を求められ、参与として就任、その後に、市川市の脱炭素化を目的に、市役所内で横断的な活動を具体的に行うため「カーボンニュートラル推進課」を市長室直下に設立することを市長に助言し、現在、活動を開始されているとの事です。
 今後の活動に関してお二人に伺いましたところ、明日香氏からは、今後の日本の産業(例えば自動車業界の現況)の行く末に疑問を投げかける記事を日経新聞が発信し始めている様に、日本も少しづつ変わろうとしている動きもあり、「日本版グリーン・ニューディール(レポート2030)」に示したように、新たな産業も含めた公正な移行に大胆な資金投入を行う働きかけを今後も行っていきたいとの話を伺いました。平田氏からは、地域の脱炭素化の成功事例を増やすことで、ポジティブ思考な人を増やす活動を行っていきたいとのお話を伺いました。

 最後に、農都会議の山本登事務局長より閉会挨拶がありました。


 今回も盛会となりました。脱炭素に向けた早急なエネルギー転換の必要性と共にグルーンニューディール戦略による雇用転換イメージなど国レベルの大きな取組に関する提案内容と、各地方自治体レベルにおいて脱炭素化に向けた具体的な取組事例を紹介いただくなど、地域の脱炭素化の実現方法について、課題やこれからの進め方を多様な視点で考える有意義な機会になったと思います。
 講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 19:09 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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