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1月13日バイオマス産業用熱国際シンポジウムの報告[2023年02月13日(Mon)]
 NPO法人農都会議バイオマスアカデミーはNPO法人バイオマス産業社会ネットワークと共同で、1月13日(金)午後、「バイオマス産業用熱国際シンポジウム 〜2050年カーボンゼロに向けたバイオマス産業用熱利用の課題と今後の方向性を探る」を日比谷コンベンションホールとオンラインの併用で開催しました。
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1月13日国際シンポジウム

 シンポジウムは、バイオマスの産業用熱利用をめぐる課題とこれからの方向性について関係者の知見を集約し、海外ゲストを迎えて議論することで、取り組みを加速化させる機会とするために開催しました。
 会場の日比谷図書文化館B1コンベンションホールに40名弱、オンラインで110数名、合計約150名の参加者が集まり、基調講演とパネルディスカッションが行われました。
 開会にあたって、NPO法人農都会議の山本登事務局長から、ご挨拶とシンポジウムの趣旨・目的の説明がありました。

1月13日国際シンポジウム


 第1部は、はじめにドイツバイオマスリサーチセンター熱化学変換部部長、研究重点領域スマートバイオマス熱リーダーのDr. Volker Lenz(レンツ)氏より、「ドイツのバイオマス産業用熱利用の現状と課題」のテーマで講演がありました。
 *レンツ氏の講演及びディスカッションの発言は同時通訳付で行われました。

1月13日国際シンポジウム

 レンツ氏は、ドイツバイオマスリサーチセンターの説明、2021年のドイツにおける気候保護に関する決定事項、熱部門におけるバイオエネルギーの位置づけ(ドイツにおけるバイオマスからの熱供給状況、再生可能熱の利用可能温度と潜在的な適用分野)、ドイツにおける将来の木質エネルギーポテンシャル(ドイツにおけるバイオマスの可能性と利用、再エネ発電の進展、将来のバイオマス利用のシナリオ、2020年ドイツのバイオマスエネルギー使用量)、再生可能な熱源による達成可能な温度などについて説明されました。
 また、気候保全は世界共通で、早く行動すればするほど楽になるとお話しされました。

 レンツ氏の講演のポイントを記します。
・CNの達成には産業熱の非化石化が必須。ドイツではエネルギー需要の半分は熱、しかし16.5%しか非化石でない。またその内の86%はバイオマス(木質由来)。
・木質バイオマスは家庭の暖房に使われておりドイツでは一般的。
・ドイツでの伐採量はここ30年間増加している。半分はエネルギー、半分は木材。過去数年は成長分を全て消費しており、これ以上は消費量を増やせない。
・限られたバイオマスの利用方法は、発熱で使うべきだ。
・木質バイオマスの削減のため農業残渣などを使用する場合、発熱量が減り腐食の可能性があるが、これらを有効活用すると1000PJ(ペタ・ジュール)くらいが利用可能となる。
・発電では、今後は熱電併給を行うものだけが補助金対象になる。
・炭素貯留は、バイオマス燃焼による二酸化炭素を貯留・原料利用にてマイナスエミッションとなる。また、ガス化によって炭を生成し、それを土壌に蓄えることでマイナスになる。


 続いて、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部省エネルギー課 総括係長の中嶋佑佳氏より、「省エネルギー政策について」のテーマで講演がありました。

1月13日国際シンポジウム

 中嶋氏は、⑴需要側の取組の方向性(省エネ目標の内訳と達成に向けた対応、省エネ規制と支援措置、2030年に向けた政策対応のポイント)、⑵エネルギーの使用の合理化等に関する法律=省エネ法(工場・事業場規制の概要、ベンチマーク制度の概要、2021年度事業者クラス分け評価制度の結果)、⑶非化石エネルギーの導入拡大等の新たな取組(改正省エネ法の概要、非化石エネルギーへの転換の中長期計画、電気の需要の最適化、改正省エネ法における3つの評価軸)、⑷支援措置(省エネ支援策パッケージ=事業社向け・家庭向け、省エネ補助金強化、3省連携による新たな住宅省エネ化支援)⑸エネルギー需要構造の高度化などについて説明されました。

 中嶋氏の講演のポイントを記します。
・省エネ課は、従来は省エネだけだったが、2050年のCNもあり、需要側の取組み全体を見るようになってきた。バイオマスも検討するようになった。
・改正した省エネ法の考えとして、非化石エネルギーへの転換促進がある。
・主要5業種における非化石転換の考えは、セメントはキルンに廃プラやバイオマスの投入量を増やすこと。製紙は、元々黒液・廃棄物使っており再エネ率が高い。所有森林の活用等によりバイオマスの調達を増やすこと。
・支援措置として次を考えている。
 @省エネ補助金の抜本強化(令和年度では先進的省エネと謳っているもの)。
 Aこれからは非化石エネルギーの導入を要件に盛り込む。
 −先進事業の要件の例:省エネ率+非化石割合増加率:30%以上、省エネ量+非化石使用量:1,000kl以上。
 −非化石転換に資する設備に補助を手厚くする(上限額15億円/年度→非化石なら20億円/年度)。
 B単年度のぶつ切り予算ではなく、4年目まで切れ目なく行うことで非化石転換を一気に進める。


 第2部は、質疑応答と「2050年カーボンゼロに向けたバイオマス産業用熱利用の課題と今後の方向性を探る」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

1月13日国際シンポジウム

 パネリストは、第1部ご登壇のレンツ氏と中嶋氏、飛騨高山グリーンヒート合同会社代表の谷渕庸次氏、辻製油株式会社代表取締役会長の辻保彦氏、コメンテーターは東北大学大学院工学研究科教授の中田俊彦氏、司会進行はNPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長でした。

1月13日国際シンポジウム

 ディスカッションに先立ち、泊氏より本パネルの進行と内容について概要説明がありました。
・バイオマスとしてのエネルギー利用は熱利用、中でも産業用熱利用であるべき。Fitで支えられているバイオマス発電は、燃料利用効率が高くないため温暖化対策効果は限定的であり、熱利用とすれば効率が高いし、100度以上の産業用の熱需要を満たせる再エネは、現時点でバイオマスしかない。
・国の2050年カーボンゼロ計画の中では水素や合成燃料が挙げられているが、いま企業が工場などで脱炭素化をしようというときに、選択できる原料はほぼバイオマス、廃棄物に限られる。工業団地にバイオマスボイラーを入れて高い温度から順に使い、その排熱を他の未利用熱と合わせて使うことも理想的。高温熱利用からの排熱を給湯や暖房に使ったり、農業用ハウスに使うなどで効率的な利用が望める。
・結論として、日本ではバイオマスを産業用の熱に使っていくというのが妥当なシフトであると言える。

1月13日国際シンポジウム

 次に、谷渕氏より「バイオマスアカデミーベストプラクティス研究会蒸気ボイラー分科会について」のテーマでプレゼンがありました。
・分科会は、バイオマス熱利用の促進を図ることで熱需要における脱炭素化を進めることが重要と考え、情報収集から始まり官公庁との意見交換、支援策の原案作成、支援制度化に向けた協議や政策提言を行っている。事業者への支援では、熱事業化の支援、設備の導入支援、および利用促進に対する支援の3分野で行っている。
・自分は、高山バイオマス研究所長として熱供給事業、発電事業を中心にバイオマスエネルギー計画支援などのコンサルティングを手掛けている。事例としては、NEDO事業において低質なバイオマス原料による熱供給を安定して実現した経験がある。本事業では、バイオマスからの熱供給率が当初の65%から、システム制御を含めた改善を重ねることで事業終了後には90%以上に達した。
・コジェネガス化発電と蒸気ボイラーを併用する病院でのエネルギー供給事例や、薬品工場、リネン工場などへの蒸気熱供給の検討支援も行っている。

1月13日国際シンポジウム

 そして、辻氏より「未利用資源で地域を活性化する〜辻製油の産業用木質バイオマス熱利用の事例等」のテーマでプレゼンがありました。
・松阪で創業75年の辻製油では、2003年のイラク戦争による石油高騰以降バイオマスエネルギーの利用を順次拡大してきたことで、事業利益が増え採算性が大きく向上した。
・山の手入れが不十分で間伐材が放置され使われていなかったのを、50km圏内から木材集積地に集め、チップ化した燃料を使うためボイラ設備を約17億円で設置。この蒸気で製油工場を操業することで年間9000kLの重油が不要になった。経済効果は約8億円あった。
・関係4社でコンソーシアムを組み、製油工場の隣接地の田を埋め立て農業ハウスを設け、製油工場での蒸気利用後の温排水を使ったトマト栽培事業に取り組んだ。農水省補助金6億円を含む17億円を投じたが、3.2haのハウス1ヘクタール当たりいまは約2000万円の売上を上げている。
・LED照明化したことで栽培量が3-4割増収。また副産物のヒノキ精油から作った消臭・殺菌剤、消毒剤が新たな商品となって利益に貢献している。
・木材の集積範囲、製油工場に隣接したハウス用地、専門のプロが連携して取り組むことができたなど、成功したのは非常に良い条件がそろったことがあった。

 パネルディスカッションでは活発な討議が行われました。その一部を以下に記します。
○中嶋氏:
レンツ博士に伺いますが、ドイツがバイオマス発電への補助を止め、代わりに産業の熱利用を増やすという話がありました。これは EU 全体で決まった経緯はどういうことでしょうか?
○レンツ氏:
ヨーロッパ全体ではないが、とりわけドイツ、イタリア、フランスなどでは木質バイオマスの量がこれ以上あまり増えない。すると多くの組織では生物多様性の問題から目標達成が難しくなるので、EUの戦略としては木質エネルギー発電所への補助に規模の基準を設けることになる。また資源として必要なものは循環型を目指す、例えば樹脂や石油から再生可能な資源にシフトするということになる。木質はもっと素材としての活用の方が良いだろう。また小さな設備単位を使った方がいい。そうすると産業の熱の生成に用いる方が適しているという方向だ。北欧は日本と同様でまだバイオマス利用に伸びしろがあるが、欧州全体とすれば、木材は材料としてつかうほうが、単にそれを燃焼するよりも良いと考えられる。
○辻氏:
三重県でも大型の木質バイオマス発電所がいくつもできて、FITで事業を行っている。山のバイオマスが高値でそちらに行き、われわれのところには回らなくなってしまった。ただ幸いにして建築廃材はまだ潤沢にある。しかし山は皆伐されあちこち木が剥げた山がどんどん増えている。今の日本の木材の供給量に比べて、使う量が非常に増えてきておりこの業界は本当にいつまで持つのか大いに疑問がある。欧州ドイツではどんな形になるのか、もう少し詳しく教えていただきたい。
○レンツ氏:
ドイツでは法整備により長期にわたる持続性を維持していて、植林されるよりもたくさんの伐採はありえない。しかし将来森林においては炭素を蓄積させないといけない。しかもあと15年ぐらいのスパンでカーボンニュートラルに切り替えなくてはいけない。燃焼されなければ大気から炭素を取り除く必要はないので、木材材料の利用は例えば製紙あるいは住宅建設、家具製造の方にシフトさせる。そして残渣廃材だけをエネルギー転換させる。熱利用にはそういうものの方が適している。品質も低いので、産業用熱用途に使うほうが発電用の木材燃焼よりも良い方向性だ。ドイツでは大型の発電所で出力の調整をチップで行うのは時間がかかり過ぎ、太陽光発電、風力発電のシェアが上がってきているので、既存の木質バイオマス発電の容量は下げるという傾向にある。ということはこれ以上そういう発電所は作らないということ。ドイツでは皆伐ではなく間伐。そのあと多種類の樹木を植林して単品種の樹木の森林から多品種に変わる。そうすると気候変動にもじつは更に強くなる。
○レンツ氏:
ドイツの場合バイオマスの産業用の熱利用は、すでに木材を活用している製紙業界パルプ業界などで、廃材を燃焼し熱を利用しているが低温利用が主である。高温熱利用を拡大するには、政府側のしっかりした戦略で補助金により木材利用の投資を促すことが必要。例えば10年間で投資が還元するようにしていかなくてはいけない。2-3年だけの政策だとやはり企業が不安に思い長期の見通しが得られない。
○谷渕氏:
バイオマスボイラーの導入ではコストパフォーマンスが極めて重要になる。例えば温水ボイラー本体コストはkW10万円を切り最近は6万円くらいに下がったが、周辺設備のコストはこの10何年間あまり変わっていない。ユーザーとの議論は化石燃料のボイラーとのコスト比較になる。この議論ができるためには、収支の算定エネルギーの価値も含めた知識を有する人材の教育が重要と考えている。
次に、欧州と日本とで一番大きな違いは燃料調達の規格という面です。欧州ではペレットやチップの品質規格がしっかりあり、その規格を守っていればメーカーの性能上の責任が明確である。一方、そこが日本にはない。相対取引のなかで使える燃料の性状が話し合いで決まる。ユーザーがコストパフォーマンスを上げようとして異なるチップ工場から調達したりすると、品質が違うから不具合や性能低下が起こる。これがメーカーの責任にされたりするが、そうではない。使う側の燃料品質に対する意識が不足しているのが原因。そういった認識をしっかり周知徹底し広めていかないと、安心したバイオマスの利用形態が作れないと考えている。
○辻氏:
やはり一番問題となるのは燃料の安定供給。三重県にもバイオマス発電所があり、海外からペレットやPKSを輸入している所がある。7-8年前は1トン12000円位で十分松坂の港についたが、今ではもう31000円に値上がりしている。発電所はどこも事情は同じだろう。国内でも原料を調達しようとするから、国内の材料も当然値上がりする。FITの電力は売電単価の上限が決まっているので、燃料費の上昇で経営が厳しいどころか、逆ザヤになる可能性も十分ある。それでは10万トンといった単位で原料を使うバイオマス発電というものは、将来存続できなくなるのではないか。そのあたり中嶋さんにお聞きしたい。
○レンツ氏:
この分野でドイツから学べることがある。電力の最初のFITは木材チップを対象とした発電だけの固定料金制だった。その後、最低でも6割はコジェネの熱を使わなければいけないという条件が付加された。これは産業の投資家がリスクを負わなくて済むようにするため。固定の電力の価格では木材価格が高くなり倒産してしまう例がドイツでもあった。通常、木材の価格が上がる時は化石燃料の値段も上がるので、コジェネとして熱の利用を追加した場合収入が増え、操業が成り立つチャンスが高くなる。発電と発熱を併用するという条件が補助金制度では大変重要だという大きな学びでした。
○司会(泊):
では中嶋さん、補助金が使いにくいという課題についてはいかがでしょうか。
○中嶋氏:
省エネや非化石の機器を入れるにあたってよく聞く課題は、省エネの性能を持たせる設備を考えると、その分価格が高く、従来性能の機器との値段差があってなかなか入らないということがあった。もう一つは、今の日本の補助金制度は単年度処理が主で、複数年かかる事業に対して継続的な手当ができないため安心して設備投資ができないという声を頂いていた。これについては、今回令和4年度の補正予算での措置で、補助金は増額し、また継続的な事業が最大4年に亘りできるようにしているのでご活用頂きたいと思っている。
○司会(泊):
会場からも多くの質問を頂いているので、それに答えながら後半のディスカッションに入っていきたいと思う。辻さんに対する質問で、紹介されたのは良い事例だと思うがそれが拡大していいかないのはどこに原因や理由があるのかという質問です。
○辻氏:
一番大事なことは条件が揃うかということ。たまたま辻製油では50q以内から原料が調達できるという好条件があった。そこでバイオマスボイラーを設け、蒸気は全量を製油工場で使い切るという好条件ができた。さらにその隣に広大な農地を得てトマト生産のハウスを作ることができた。この三条件がそろったからうまくいった。全国から見学者が来るが、結局そういう好条件がそろわない。山に木はあるがエネルギーを使う工場が少ないとか、廃熱蒸気は沢山出るが熱を使う場所がない。こういった条件が揃うところをもっと真剣に探すべきだと思う。まず第一は熱を使うところが大事。熱を造るところと使うところの条件がきちんとマッチしないとこのスキームは成り立たないと思う。
○司会(泊):
これについて谷渕さんにお聞きしたい。結局、熱需要があるところにいかに燃料供給するシステムがあるかということになるが、例えば山の木とは限らずに建築廃材でもいいわけです。そういった、チップをそれぞれ必要な工場に必要な時に供給するような業者の仕組みなどがあれば導入がしやすくなると思うが、その点についてのご意見はどうでしょう。
○谷渕氏:
基本的にはバイオマスボイラーの事業を構築する時に、熱需要先とそれに対する供給先の両方の検討をする。どのようなチップが作られ、発生しているのかを確実におさえた上で利用先の設備の検討に入る。チップ工場を持っていなければ、需要先に最適なボイラーを検討して、そのボイラーで使えるチップ工場を地域内で検討するという手順である。チップ工場で発生しているチップの水分をしっかり確認するというのは極めて重要な内容になる。それが出来なくて失敗している事例も日本では多々見られる。

1月13日国際シンポジウム

○司会(泊):
中嶋さんに伺います。例えばオーストリアではポリテクニック社が作る木質ボイラー等が便利で広く使われているのだが、経産省としては、これから非化石エネルギー、バイオマスの利用を増やしていくにあたって、そのようなものが国産であれば導入が促進されるのではないでしょうか。そういった国内のメーカーやヒートマネジメントの会社を育てるという政策は考えられないでしょうか。
○中嶋氏:
非化石転換というのはまだ始まったばかりで、非化石エネルギー割合を増やすことに重きを置いており、必ず国産にすべきといった規制などは考えていない。ただ国内で生産できるラインというのも大事だと思う。スライド中で出た製紙業の非化石目安の例では業界が保有する森林からのバイオマスの調達をさらに進めるといった野心的な目標を設定しているので、そういった取り組みも踏まえながら、バイオマス利用を増やしていけたらいいのかと思います。
○レンツ氏:
スライドにもあったが、5年前から8年前に大規模発電への補助金がかなり引き下げられ、発電専用の施設への投資が見合わなくなった。FITの固定期間の20年間を過ぎ、助成制度当初の発電所はもう廃止されていくという見込みになる。一方、別の補助が産業用のバイオマス熱製造向けには存在しているので、バイオマス利用市場が熱向けに置き換わってきているという状況です。
○司会(泊):
レンツ博士がおっしゃったように、産業用熱への投資を促すために強いドライブをかけるような政策が必要だということだと思います。FITの発電所自体が燃料高でやめてしまうものが出てきつつある今、燃料を産業利用に向けるということへの政策をぜひ経産省に期待したい。
○レンツ氏:
この気候変動の危機はさらに進みます。今後我々のエネルギーを再生可能なものに変えていくとともに、カーボンニュートラルに向けて、炭素排出量をマイナスにする必要がある。これを実現するには、第一に大気中からの炭素除去があるが、これを行うにはやはり再エネに頼ることになる。第二にバイオマスを再生していくことで炭素を貯め続けることである。そして産業向けに実現可能性のある使い方は、バイオマスの残材廃材までをできる限り長く使い続けること。このような将来の方向性は世界中で政治的に取り組まなくてはならない。なぜなら自国で使うペレットが他の国で伐採され作られているとバランスが成り立たないからです。
さらに今後取り組まなくてはいけないのは炭素の捕獲と貯蔵です。ドイツもそうだが気候変動に苦しめられる国で土壌が乾燥していく。バイオマス由来のバイオ炭を土に返すことで農業の推進になる。これは炭素を地中に貯蔵する事にもなります。
○辻氏:
自分の会社のことだけを考えれば、年間3万トンのバイオチップがあればやっていける。しかし広い目で見ると、FITのバイオマス発電所が全部フルに操業を続けたら、山は相当ダメージを受けてしまう。
先祖代々何百年もかけて開拓した田畑をこんなわずかな時間で元に返してしまうというのは、先祖に対して申し訳がない。田畑や山も含めて日本の地場の、地域の資源というものをもう一度真剣に考えるべきではないかというのが僕の気持ちです。
○谷渕氏:
バイオマスのエネルギーサービス事業を考えた時にサービスの形態は三つある。@熱を販売するだけの形態。A熱需要先が施設を導入しているが、燃料の専門家がいないためエネルギーサービス会社に運営を委託するという形態。Bエネルギーサービス会社が施設を持つが、運転人件費を節約するために、運用はユーザーのもとで行うという形態である。
これらの提供により安心してバイオマス設備を導入してもらうということを目指していきたいと考えている。
○中嶋氏:
今後の見通しとして、大きなものはGX実行会議の動きであり、この中で非化石化が注目されている。ますますバイオマスは重要になってくるだろうが、そのバイオマスも無限にあるわけではないので、その使い方という意味では、改正省エネ法のエネルギーの体系の中で有限な資源の使い方が問われることになったと考えている。
最後に、今日の議論を聴いていて、少子化の話や地域の話とかになると、なかなか省エネ課、資エネ庁とか、経産省とかそういう小さいくくりでは考えられない大きな問題が複雑に絡まっていること、組織にこだわらずデザインしていかなくてはいけないところだとあらためて思いました。

 上記以外にも、ウェビナーの質疑応答(Q&A)やアンケートに対して多くのご意見をいただきました。改めて別の機会で、ご報告できればと思います。

 ディスカッションの最後に、東北大学大学院工学研究科教授の中田俊彦氏よりコメントがありました。
1月13日国際シンポジウム

 中田氏のコメントの概要を記します。
・今日は思いついたところをいくつかまとめてみます。一つ目は省エネ法ができたのが1979年、エネルギーの憲法ですね。これには再エネ風力や太陽を入れる項目がなく、もちろんバイオマスがない。
・バイオマスはエネルギー以外のオーガニックな価値があるので、省エネ法では取りこぼしている価値がある。石油ショックのときはそういう意識だったものが43年経って、そろそろバイオマスをメインにした何らかの公的な仕組みが必要なのだろうと思う。
・二つ目はやはりバイオマスを進めるためには三つのポイントが公的な機関としてあって一つが税金、二つが補助金、三つが技術開発。
・三つ目は、東京の人はバイオマスはどっかの地方でやっていると思っているが、地方の人は地方のことしか知らないので、海外の先進事例や政府の考え方と地域特性とのギャップを客観的には捉えていない。できたらこのぐらいのスタンダードの会議とかセミナーがいろんな地域の特徴を入れて開催できればいいのかなと思う。地域の代表者にも入っていただきたいと思う。
・最後に、今日は産業用の特に中温・高温の熱についてとお題を立てました。でもそこに隠れたヒントがあって、高温で300℃とか400℃で蒸気作っても排気の温度は25度の常温にはならない。大抵50度から100度使ったあと全部垂れ流している。
・以上、何もなかったFITの前の時代から見たら遥かに進化はした。ちょっと乱暴な進化、予想以上のでもそれは単品買いの商売であって、本来そこにコンバインドヒーターや熱電併給のようなものができた人はダブルインカムになった。今日の農業系トマトであるとか、あるいは化粧品系というのはもうインテグレーションですよ。本当はFITはペネトレーションだったのが何かファイナルターゲットのビジネスモデルとして金融商品のようなアプローチをしてきた人たちもいました。それは完全に誤りですね。決して政策としてもそれを狙ったものではなくて、スタートアップとしてそこにどんどん進化して欲しかった。
・その原因は恐らくバイオマスは人がいないと。いい見本は環境省の温暖化対策の関係あるいは循環型形成推進法では必ずNPOとか温暖化センターを作って、あるいは文科省の義務教育に環境教育を入れたのですね。バイオマスはいまだにそういうことがありません。
・バイオマスも何らかのサポートがこれから法律に基づいて入っていくというのが絶対に必要なのだろうと思う。
・バイオマスの賦存量のデータってこの国にはない。太陽や風力は環境省のREPOSというデータベースがあって、それから計算も割とプラクティカルな事業性を考慮したデータをいろいろと委託して作っているがバイオマスはゼロ。
・REPOSではバイオマスのデータベースを先行的に水面下では作ろうとしている。そこに技術を乗っけて法律を作って、そして人がどんどん育てていけば、10年後のシンポジウムはもっと気楽な内容になります、以上です。

1月13日国際シンポジウム

 最後に、NPO法人農都会議の杉浦英世代表理事より閉会挨拶がありました。
 「開始が30分遅れるなどの不手際があり、深くお詫び申し上げます。しかしおかげさまで、大変よい内容のシンポジウムになったと思われます。中田先生のコメントはバイオマス熱利用の現状に的を得、非常に示唆に富んだものだったと思います。」

 今回も盛況な勉強会となり、バイオマス産業用熱利用についての理解が進み、その課題や今後について多様な視点で考える、たいへん有意義な場になったと思います。
 講師の皆さま並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 12:48 | バイオマスアカデミー | この記事のURL | コメント(0)
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