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10月21日「廃棄物処理施設と地域脱炭素化」勉強会の報告[2022年10月28日(Fri)]
 NPO法人農都会議は、10月21日(金)夕、「廃棄物処理施設を活用した地域脱炭素化モデル 〜電力・熱を有効利用する地域エネルギーセンター整備と乾式メタン発酵システムの活用」勉強会をオンラインで開催しました。
 →イベント案内

10月21日清掃工場勉強会

 環境省では廃棄物処理施設で得られる電力・熱を有効に活用し、地域の脱炭素化を図ると共に災害時のレジリエンス強化等に資する自立・分散型の「地域エネルギーセンター」の整備方針を公表しています。
 本勉強会では、廃棄物処理施設を活用した地域エネルギーシステムや地域脱炭素化モデル等について、ご参加の皆さまと一緒に考えました。
 オンラインで50名の参加があり、講演とディスカッションが行われました。農都会議の山本登事務局長が司会進行を務め、杉浦英世代表理事が開会挨拶を行いました。


 第1部は、最初に、環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課係長の北垣芳彦氏より、「廃棄物処理場を核とした自立・分散型地域エネルギーセンターについて」のテーマで講演がありました。
 北垣氏は、最近の政府の動き、2050年CNに向けた廃棄物・資源循環分野の基本的考え方、廃棄物・資源循環分野の中長期シナリオと温室効果ガス排出量の見通し、廃棄物処理施設整備計画の改定、資源循環分野からの地域循環共生圏モデル(農林水産業連携モデルなど)について、参考事例や補助事業等を交えて説明されました。

10月21日清掃工場勉強会

 北垣氏の講演の一部を記します。
・2050年において、廃棄物処理施設(焼却施設・バイオガス化施設等)からの排ガス等の中の炭素の大半がバイオマス起源となり、廃棄物処理施設でCCUSを最大限実装できれば、ネガティブエミッションにより廃棄物・資源循環分野の実質ゼロ、さらには実質マイナスを実現できる可能性があることが示唆された。
・同時に、これまでの計画等の延長線上の対策では不十分なことが明らかとなった。技術、制度面での対策のみならず、関係者が一丸となり、相当な野心を持って取り組む必要がある。
・本分野のGHG排出量を可能な限り削減するという基本原則のもと、2R対策を可能な限り強化しつつ、重点対策領域におけるGHG削減に向けた取組を可能な限り進める必要がある。
・今後、素材産業や製造業等における将来見通しに変化があれば、それらを取り込んで試算の更新を行っていく必要がある。また、本分野の実質排出ゼロの達成に向け、これらの産業と連携した対策を講じていくことも必要である。


 続いて、栗田工業株式会社ソリューション推進部門主任技師の古賀哲雄氏より、「クリタの乾式メタン発酵技術 〜KURITA DRANCO PROCESS🄬〜」のテーマで講演がありました。
 古賀氏は、バイガスブームの背景・有機物処理の仕組、栗田工業の保有するメタン発酵技術、湿式法と乾式法、KURITA DRANCO PROCESSレジスタードマーク とは、乾式メタンの国内実績などについて説明されました。
 
10月21日清掃工場勉強会

 古賀氏の講演の一部を記します。
・戦後、20年周期でバイオガスブームが発生。現在、第四次バイオガスブーム到来中。
・当社は、国内でも唯一、グラニュール法・湿式・乾式と3種類の発酵技術を保有している。
・地域のバイオマス発生状況に合わせた、有利な発酵技術を提案することができる。
・クリタの縦型乾式メタン発酵技術は、欧州で広く行われていた廃棄物の直接埋立を解消するために、廃棄物中の有機物を嫌気性発酵することでバイオガスとして回収し、更に好気性発酵により、より安定化させ埋立を行うことを目的に開発された。
・乾式メタン(KURITA DRANCO PROCESSレジスタードマーク)の特長
 ‐脱水設備および排水処理設備が不要
 ‐発酵槽がシンプルで、メンテナンスが不要
 ‐湿式法と比較して、処理原料の許容範囲が広い
 ‐発酵槽が縦型のため省スペース


 三番目に、芝浦工業大学工学部非常勤講師、博士(工学)の永井猛氏より、「清掃工場廃熱を活用した地域エネルギーシステムの可能性」のテーマで講演がありました。
 永井氏は、日本の最終エネルギー消費量のうち熱で利用される部分が50%以上であること、熱の有効利用がエネルギー消費を抑制する結果として温室効果ガスの排出削減につながることなどを説明されました。

10月21日清掃工場勉強会

 永井氏の講演の概要を記します。
・清掃工場の広域化・集約化にしては、平成9年5月と平成31年3月に、各都道府県に「集約化計画」、「廃棄物処理施設の広域化・集約化」に関する通知があり、処理能力が大きく連続処理によって焼却炉の昇温や降温時に化石エネルギーを使用しない全連続式への移行を促した。
・現在の清掃工場の余剰エネルギー(電力・熱)の利用は、工場が点検等で必ず停止する期間が発生するため、電力については小売電気事業者を介した販売や日本卸電力取引所へ、電力卸売や熱については地域冷暖房事業者へ熱売り、又は行政関連施設への供給に留まっている。
・一方、前述の通知を受けて清掃工場の集約化は進んでおり、現状一般廃棄物焼却施設(清掃工場)は76.4%が24時間連続焼却する全連続式となっている。
・日本の清掃事業の歴史は戦後の復興期以降、「公衆衛生の向上」→「公害問題と生活環境の保全」→「循環型社会の構築」→「地球温暖化対策」→「脱炭素社会づくり」に貢献する事業として行われてきた。今後は、環境先進国であるEUの動きを確認しながら、脱炭素化への対応に注視すべき。
・廃棄物処分方法について、日本は利用可能な土地が限定的なことから、焼却の割合が高い。一方、諸外国は廃熱を暖房に利用してきた北ヨーロッパの国々を除き、埋立処分の割合が高い。
・しかし、感染症対策等の衛生面・埋立用地の確保・生ごみからのメタンガスの発生などの理由から、諸外国も焼却処分に移行していくのではないか。
・環境省の外郭団体の(一財)日本環境衛生センターはEUタクソノミー基準に廃棄物焼却も入ることを想定し、提案活動(規模に応じた廃棄物発電効率の基準等)を行っている。
・廃棄物処理場の地域貢献導入事例施設として、市民会議にて合意形成を図り防災機能(非常用発電・熱供給設備)を有した施設づくりを行った武蔵野市の例があり、生ごみ(含水率約80%)の割合が多い一般ごみをそのまま焼却する前処理に「乾式バイオマス」導入の例もある(ダイオキシン類分解の為、高温燃焼・800℃以上が必要)。
・今後検討すべき2つの視点として、(1)市民参加と合意形による社会貢献システム(例:武蔵野クリーンセンター、町田バイオエネルギーセンター)、(2)高効率化やCCUなど新たな技術の開発と事業スキームの導入がある。


 第2部は、質疑応答と「廃棄物処理施設を活用した地域の脱炭素化は可能か? 課題は?」をテーマにディスカッションが行われました。
 パネリストとして芝浦工業大学建築学部教授、工学博士の村上公哉氏、株式会社エコテックインテグレーション研究所CEO、元財団法人東京都環境整備公社東京都環境科学研究所調査研究科主任研究員の藤原孝行氏及び永井猛氏の三氏にご登壇いただき、モデレーターは農都会議事務局長の山本登が務めました。

 はじめに、村上氏より「廃棄物発電活用地域新電力と熱供給の連携」について、次のプレゼンがありました。

10月21日清掃工場勉強会

・目的は、地方都市の脱炭素「コンパクトシティ政策」によりコンパクトな街をつくること。
・地域エネルギー資源を活用し、「熱供給事業」と「新電力事業」とを併せた熱電一体供給事業をベースとした地域エネルギー事業を展開する(地産地消エネルギー+自治体新電力)。
・清掃工場がベースとなり、地産エネルギー(水力、太陽光発電)となっているものが多い。
・実例として、ながさきサステナエナジー(NSE)の年間電力量のバランスのグラフを見ると、余剰電力(売電)が年間15.316MWh発生し、これは調達電力の約48%である。
・受給調整連携による低炭素効果表を見ると、地域全体のCO2排出量はCGS逆潮により約1.5%、加えて余剰吸収により約22%の低減効果となっていて、低炭素化につながっている。
・廃棄物処理施設から得る電力は大きい。

 続いて、藤原氏より「中央清掃工場廃熱の地域利用に関する検討」について、次のプレゼンがありました。

10月21日清掃工場勉強会

・再利用されていない領域があり、これをいかに利用するかという目的。
・メタン発酵施設と清掃工場の掛け合わせ。(栗田工業 KURITA DRANCO PROCESS)
・生ごみと紙ごみを投入装置に入れて、乾式メタン発酵層に入る。(バイオガスエネルギー)
・メタン発酵施設の導入によるエネルギー収支(CO2削減効果)の考え方
・災害時対応(例:武蔵野市のクリーンセンター建て替えが検討中。災害につよい自立分散型システムとして、ゴミ焼却由来の熱・電力を周辺公共施設へ供給する検討を開始している。)
・清掃工場導入のための課題、導入推進方策(@事業採算性の確保、A用地の確保、B立地手続き)
・まとめとして、エネルギー有効利用(CO2削減効果が見込まれる。)
・メタン発酵施設の導入は、建設費、維持管理費、残債(資源)、事業化することに難しい。
・メタン発酵技術(乾式)の紙ごみを集めるのが難しい。

10月21日清掃工場勉強会

10月21日清掃工場勉強会

 Zoom参加者との意見交換の概要を記します。(○印:質問・意見、・印:回答)

○司会(山本):地方自治体が出資されるようになった。それは儲かるからですか?
・村上氏:地産地消エネルギーシステムの意義の図の地産地消エネルギーシステムを見ると、エネルギーとキャッシュを地域内で好循環させるとともに地域エネルギー事業自体の設立による地域経済の活性化につながっている。(35%くらい実施している。
○司会:清掃工場関連とゴミ意識についてご意見を伺います。
・ごみ袋を補助金使って配っているところもあった。
・市民を中心として会議体が必要。市民の参加が少ない。
・ゆめの島のゴミ戦争問題があり、街中に溶け込むような形でゴミ処理施設が出来た。
・現状では杉並区のように建て替えを検討しているところもある。
・ごみは汚い、臭い、触りたくないと言われていましたが、脱炭素化につながる清掃工場を通して、ゴミは宝と思われるようになった。
・市民のゴミに対する考え方については、あまり変わらないのではないかという意見もあったが、横浜市のようにゴミの分別を徹底的にしており積極的にかかわっているところもある。
・反対にゴミ焼却場に対して、住民反対の意見もあるところもあり、建て替えのケースに至る小金井市もあるが、問題は解決に至った。
・時代と共に、なんであなたはゴミ分別をしないのですか?という発言からもわかるように、意識が変化してきている。
・清掃工場ができる条件として、@ゴミ収集車のルート、A渋滞、B左折で工場に入ることが条件とされることが大きい。
・清掃工場の耐用年数は30年から35年である。


 今回も盛況な勉強会となり、廃棄物処理施設から得られるエネルギー(電気・熱)の有効利用について理解がいっそう進み、その課題や今後をいろいろな視点で深く考える、たいへん有意義な場になったと思います。
 講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 08:44 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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