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1月24日「森林環境譲与税、どう活かす?」勉強会の報告[2022年02月26日(Sat)]
 NPO法人農都会議は、2022年1月24日(月)午後、「森林環境譲与税の利用状況、今後の森林整備にどう活かす? 〜50年・100年先を見据えた森林環境譲与税の活用に向けて」勉強会を開催しました。
 →イベント案内

1月24日森林環境譲与税勉強会

 農都会議は、いままで3回の森林環境税勉強会を行い、国産材の利用拡大に向けて、新税の地域へ及ぼす効果、新技術と路網整備等を考えてきましたが、「森林環境税及び森林環境譲与税」創設から2年半以上経ったのを機に、あらためて地域の利用状況を知ろうと、勉強会を開きました。オンラインによる開催でしたが、50名を超える参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。
 開会挨拶はNPO法人農都会議代表理事の杉浦英世が行いました。


 第1部は三氏の講演でした。最初に、林野庁森林整備部森林利用課 森林集積推進室課長補佐の近藤美由紀氏より、「森林環境譲与税を活用した取組の実施状況について」のテーマで講演がありました。

1月24日森林環境譲与税勉強会

 近藤氏は、森林環境税及び森林環境譲与税の概要、制度設計、譲与額、市町村及び都道府県への譲与割合・譲与基準、譲与実績、市町村及び都道府県の森林環境譲与税の使途、森林環境譲与税を活用した取組状況などについてお話しされました。
 また、自治体連携による取組の例や、超過課税(府県独自の森林環境税)についての説明もありました。特に印象に残った点を記します。
・近年、所有者不明土地の問題が大きくなっている事がある。
・森林整備に充てるため、森林環境税に先行して譲与税を配分することになった。
・現状をみると、森林環境譲与税の使われ方は、1年目は計画作りが多く、2年目、3年目と段々森林整備が増えてきている。
・都道府県には、市町村へのサポートのため、1対9で配分している。
・都道府県は広域的な取組を行い、87%が人材育成に充てられている。
・市町村の体制は担当職員ゼロも一定数あり、国と県が協力して支援している。
・複数の自治体でセンターを作って取組んでいるところもある。

 続いて、秩父市環境部森づくり課主席主幹の牧野裕介氏より、「秩父市、秩父地域における森林環境譲与税活用の取組」のテーマで講演がありました。

1月24日森林環境譲与税勉強会

 牧野氏は、秩父地域の森林・林業対策や森林環境譲与税の配分額などについて説明され、次のようにお話しされました。
・秩父市の譲与税額は年間9億円であり、周辺自治体と合せると年15億になる。
・使途の基本的な考え方は、森林整備への活用が基本。ただし1割程度を目安に木材利用等にも活用し、既存の取組(自伐型林業・木育)等を強化する。
・秩父地域森林林業活性化協議会を設け、森林管理の集約化を進めている。
・自伐型林業者の育成(地域おこし協力隊)や林業就業者対策を行う。
・秩父市には環境科のある高校もあり、今年度から実習を始めた。
・木育としてウッドスタート事業(誕生祝品の配布)などを行っている。
・荒川上下流域連携の取組として、荒川下流域自治体への上下流域連携に向けた働きかけを行う。
・「としまの森・秩父」整備事業の反響は大きく、荒川下流域との交流にもつながっている。都市の税をいかに川上に持って来るかが重要。

 最後に、相模原市環境経済局経済部森林政策課課長の田倉五己氏より、「相模原市の森林環境譲与税を活用した取組状況」のテーマで講演がありました。

1月24日森林環境譲与税勉強会

 田倉氏は、相模原市の概況、林業の概況・課題、今後の取組・展開について説明され、環境譲与税の活用として、
・今後の森林整備に向けた取組方針等の検討・策定
・さがみはら津久井産材産地証明制度
・公共的建築物等へのさがみはら津久井産材利用促進事業 児童机の天板交換事業
・さがみはら津久井産材の家づくり事業
・人材の育成・支援
などに取組むとお話しされました。
 また、 
・新たに森林環境課を設置し、17名の職員を配置した。
・「相模原・津久井産材」ブランドを広めたい。そして、利用拡大協議会の支援を行っている。
・譲与税や県の水源税などにより、森林整備、林道整備を進めている。
・市内の林業事業体と相談・調整して計画的に実施していきたい。
と述べられました。


 第2部は、森林環境譲与税の現状の課題と今後の進め方について、質疑応答とディスカッションが行われました。モデレーターは、NPO法人蔵前バイオエネルギー理事長の米谷栄二氏にお願いしました。

1月24日森林環境譲与税勉強会

 パネリストは、林野庁の近藤美由紀氏、秩父市の牧野裕介氏、相模原市の田倉五己氏、株式会社つくば林業代表取締役の松浦晃氏でした。

 ディスカッションを始めるにあたり、松浦氏より、「森林環境譲与税の使い道〜森林資源を活かした地域活性化100年後も安心して暮らせる地域を作る」と題してプレゼンテーションがありました。
 松浦氏は、農林業で地理空間情報アプリ「マプリィ」が活用され始めていること、森林調査や木材検収、作業道づくり等に画期的な効果が得られることなどを、パワポのスライドを通して次のように説明されました。
・林業におけるリモートセンシング技術(リアルデータ、マッピング、トレサビリティ等)の進歩は目覚ましい。Jクレジットへコンセンサスを図り、ビッグデータで共有する。
・地域の連携が重要であり、新しい商流が生まれるものと考えている。
・施業しながら、新しい林業サプライチェーンに向けた人材育成を行っていきたい。

1月24日森林環境譲与税勉強会

1月24日森林環境譲与税勉強会

 続いて、「森林環境譲与税の課題とこれからについて 50年・100年に向けて森林環境税・譲与税を無駄にしないために」をテーマにディスカッションが行われました。主な質疑を示します。(○印:質問・意見、・印:回答)

○譲与税は私有林だけでなく公有林にも使えるか?
・市町村単位で使うことになっているが小規模な市町村などは人材がいないのでもっと広い地域を対象にしたらよい。
○人口の多い都市より人口が少なく森林の広い地域への配分を増やした方が良い。
・近藤氏:提案なども含めて制度の見直しを現在の国会に提案中。
・牧野氏:秩父では1市4町で構成する「秩父地域森林林業活性化協議会」(H24年設立)が主体となって進めている。
○譲与税を使うには計画立案から事業実施、報告書の作成まで手間がかかると思うが、何名ぐらいの人数で進めているのか?
・牧野氏:秩父市森つくり課6名が専任、そのほかに地域おこし協力隊3名が専任。4町は専任者無し。秩父市が支援している。
・田倉氏:相模原市では専任者なし。
・近藤氏:愛媛県南予流域では1市2町が森林管理センターを作って推進している。都道府県や市町村が知識や経験を有する者を雇用し森林・林業の体制作りを支援する「地域林政アドバイザー制度」がある。
○「としまの森」は都市と山村との連携として良い例だが、森林整備委託金400万円は5年間の総額か?
・牧野氏:毎年400万です。
○人材育成が少ないのではないか?
・近藤氏:都道府県の87%が人材育成に譲与税を使っている。
○秩父の子供への「木育」教育、「ウッドスタート事業」(新入学児童へ木の引き出し支給)は素晴らしい。都市の大人への「木育」を是非やってほしい。
○譲与税の配布によってほかの予算が減らされてはいないか?
・牧野氏、田倉氏:現在、譲与税の支給によってほかの予算が減らされてはいない。
・近藤氏:現在37の府県で森林の保全等に使う超過課税が県税として実施されているが、今後譲与税の増額によりこれらの県税の見直しが行われる可能性がある。
○林業の作業は他の業種に比べて危険な作業で労働災害が多い。作業者の報酬は他の産業と比べてどうか?
・牧野氏、近藤氏:林業事業者自体が赤字体質のところが多く、作業者への報酬を引き上げられる状況ではない。
・米谷氏:上流から川下までの全体で利益が出るようにし、山側にも利益が配分される仕組みが必要。

 閉会挨拶は、NPO法人農都会議理事、いばらき里山・バイオマス協議会会長の原田博夫が行いました。

1月24日森林環境譲与税勉強会


 今回の勉強会では、秩父市、相模原市から譲与税の具体的な利用例をお聞きすることができ、また、林野庁から譲与税の説明と全国の事例をお話しいただき、大変勉強になりました。特に、川の上流から下流への連携が予想外に進み始めていることが分かり驚きでした。森林環境譲与税が引き起こした流域の動きとスマートアプリを含めた「新しい林業の形」が見えたように思いました。
 限られた時間の中でチャットでのご質問に全てお答えできなかったり、休憩時間を取れなかったり、至らない点が多々あったかと思いますが、懲りずにまたご参加いただければ幸いです。
 講師の皆さま並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 21:26 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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