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6月14日「ふくしまの農業・農村復興」講演会の報告[2021年06月21日(Mon)]
 NPO法人農都会議は、6月14日(月)午後、2021年度総会記念講演会「再エネ・ソーラーシェアリングを活用したふくしまの農業・農村復興」をオンラインにて開催しました。参加は60余名でした。
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6月14日ふくしま講演会

 東北大震災と原発事故から10年経ちましたが、被災地ではいまも元の住居へ帰還できない避難者が多くあり、商業・経済も以前の賑わいを取り戻すことはありません。
 農都会議は3.11以降、定期的に「ふくしま復興」関連の勉強会とフィールドワークを重ねてきましたが、今回は再エネ・ソーラーシェアリングを活用した福島の農業・農村復興の現状を知り、課題を学ぼうと、福島復興をめざして、二本松・飯館でソーラーシェアリングに挑戦されている近藤氏と南相馬の先駆者の高橋氏に講演をお願いしました。また、農林水産省の再生可能エネルギー室長にもお話をお伺いしました。
 開会にあたり、農都会議の杉浦代表理事より総会の報告とご挨拶があり、続いて第1部の講演と質疑応答が行われました。
 最初に、農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室長の西尾利哉氏より、「農山漁村における再生可能エネルギー発電について」のテーマで講演がありました。

6月14日ふくしま講演会

 西尾氏は、再生可能エネルギー電気を取り巻く環境・国内外の現状、農山漁村における再エネ発電の意義・導入による効果、再エネ発電の課題(土地利用調整、環境アセスメントへの対応、系統制約)、農山漁村の再エネ導入に向けた取組を推進する「農山漁村再生可能エネルギー法」の概要、農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS)などについてお話しされました。
 そして、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の概要と制度、ソーラーシェアリングによる高収益農業の実証事業と結果などの事例紹介と説明をされました。

 続いて、 農業法人株式会社Sunshine代表取締役、二本松営農ソーラー株式会社代表取締役の近藤恵氏より、「有機農家だった私が、なぜ電気を作るのか? 福島農業の復活と再生を夢見て」のテーマで講演がありました。

6月14日ふくしま講演会

 近藤氏は、原発事故の影響、発電会社と農業法人を自ら設立した経緯、福島の農業にかける想い、二本松ソーラーシェアリング事業の概要、事業拡大を阻む内なる壁・外なる壁、ソーラーシェアリングの市場予測などについて、次のようにお話しされました。
・原発事故の影響で作付禁止になった農地があった。作っても廃棄処分になった米が多くあった。いまは生産量は戻ったが飼料米が多く、野菜・果物も価格が安いままだ。
・支援のおかげで、営農型発電所の建設という事業を立ち上げた。
・最初に比べ40倍の規模のソーラーシェアリングが今年、同じ二本松市内に完成する。避難した若者が帰ってきて農業をし、工場に勤めていた人が農業と発電所メンテナンスを行う。
・次の到達点はどこになるのか? デンマークが32年かけて達成したことが二本松市では15年で達成できるかもしれない。
・人口5万人の二本松市内の2021年の再エネ設備は太陽光と小水力で218件、72メガワットある。地元所有者は件数では4分の3を占めるが、出力では8分の1しかない。一方、県外事業者(主に東京)は件数は4分の1なのに出力は実に8分の7を占める。
・これでも再エネ自給率は48%。私は100%を目指したいし、地元所有率もせめて51%以上にはしたい。どのように増やしていったらよいか?その増やす方法の1つがソーラーシェアリングなのだが、いくつかの壁がある。
・農業者が太陽光モジュールに反対する精神的な壁が3つある。(1)ゴミになる!リサイクルできない、(2)不労所得だ!汗をかきたい、(3)自分で使えない!金儲けだけじゃないか。
・総論賛成・各論反対、住民の分断や軋轢を起こすまいというよかれと思う不作為などの内なる壁壁以外にも外部の協力が得られない壁もある。その1つが許認可やエネルギー政策、農業政策だ。

 最後に、一般社団法人南相馬除染研究所代表理事、一般社団法人えこえね南相馬研究機構代表理事の高橋荘平氏より、「南相馬市の現状とソーラーシェアリングからの循環を目指して」のテーマで講演がありました。

6月14日ふくしま講演会

 高橋氏は、南相馬除染研究所の設立、ソーラーシェアリング事業開始、菜の花事業などについて、次のようにお話しされました。
・原発事故による汚染された環境を元に戻すことは決して簡単ではない。除染は科学そのものであり、後世にそのデータを残さなければならない。除染作業中、作業終了後も綿密な測量により検証し、不良で不完全な部分を再度改善することが重要である。
・2011年7月から市内の17地点で空間線量を月1回定点観測している。平均空間線量は右肩下がりに着実に低下している、震災直後の空間線量とは全く違っている。
・震災前は当時の環境を当たり前として将来像を考えていたが、震災前と比べると環境が悪化した。
・3.11を経験したことで新たな尺度で将来像を考え始め、その一つが再エネでありソーラーシェアリングである。
・農地への設置に時間がかかることから雑種地に設置し、2015年に8か所稼働開始した。
・えこえね南相馬ソーラーヴィレッジは合計発電容量332kW、幅の狭い物から、広いものまで様々なアプローチの設備を設置した。
・地域に根ざした取組みにするためには住民主体であることが不可欠。農家と共同で再エネ発電をしているが、半農半エネモデルになる。
・震災後に始まった菜の花の取組を支援している。菜種油へのセシウム移行はゼロ。商品が他県のイベントの景品として使われたり、商品開発も進んでいる。支出はほぼすべて地元に還元している。
・バイオガス事業も研究中。
・自然災害は今後も続いていくことが予想される。そのため各災害での経験、学びを反映させ減災に繋げる事が大切。将来災害の減災に繋がれば、被災した人自身も「自分たちの被災が無駄ではなかった」と感じる事ができる。


 第2部は、質疑応答と「福島の農業・農村復興の現状と課題について」をテーマにディスカッションが行われました。モデレーターは、一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟理事、ちば里山・バイオマス協議会代表幹事、NPO法人農都会議理事の高澤真氏にお願いしました。

6月14日ふくしま講演会

 ディスカッションの概要を記します。(○印:質問・意見、・印:回答)
○司会(高澤):お二人ともソーラーシェアリングの普及を進めているが農地を使ってほしいという問い合わせはあるか?
・近藤:非常に多い。しかしFIT価格は下がっていくが設備価格は下がらないので、簡単には増やせない。
・高橋:地域の人々が関わることにより利益を地域へ還元することができる。再エネの役割を地域で共有できれば良いと思う。阪神大震災も東日本大震災も学びが大切だった。
・近藤:復興はもとに戻るのではなく、新しいものを生み出す、チャレンジしていくことが重要。
○司会:福島の農産物は安いと言われたが。
・高橋:メディア等により不安が増幅している。放射能の影響より、メンタルな影響の方が心配。避難先から戻ってきても風評被害があり、農業の再生ではまだ復活できないでいる人もいる。しかし、農家さんが思っている以上に、早く復旧していると感じている。
○司会:ソーラーシェアリングの課題は?
・高橋:ソーラーシェアリングはまだまだ知られていない。しかし小規模分散でも電力インフラの一つになった
・近藤:ソーラーシェアリングは、小規模から大規模になりつつある。県外からの投資もある。二本松では、地域行政の理解があり住民も参加してくれている。市町村によってそのあたりのバラツキは大きいと感じる。
・近藤:法人化に諸費用がかかったが、ソーラーの利益で賄って余りある。中央の資本力のある会社でなくても、資本が貯まってくれば大きいソーラーをやれるようになる。自分は、小さいのも大事、大きいのも大事と言っている。
・近藤:農林中金も融資してくれるようになった。全国ではじめてのこと。少しずつ変わってきている。
・高橋:売電の中から地元に基金を出す仕組みがあるが、行政はソーラーシェアリングの監督という立場で、今も新規に対しては締め付けがある。
・高橋:野立てのメガソーラーに対してアレルギーがある人たちが、ソーラーシェアリングに対しても抵抗感がある場合が多い。正しい情報が必要。除染の数字公表はその一環である。
○参加者:ソーラーシェアリングは儲かるのか?
・認定農家、認定農業法人が行う場合FITが適用され買取単価は12円。それ以外は電力売買市場での単価10円前後となる。それでも利益は出る。1000万円の投資が20年で2000万円と、メリットは小さいかもしれないが1億円投資して2億円になる経済効果はある。
○参加者:ソーラーシェアリングに対する地域の受け止め方は変わったか?
・農業と農地を守るための一つの方法としてとらえる。メガソーラーとは違うことを説明することで理解が進む。
○参加者:行政の対応はどうか?
・農水省の西尾室長からもあったように、ルールを守り、きちんと運営することが大切。営農が疎かになっていないか行政は見ている。地域の農業委員会によって対応の違いがみられる。
○参加者:これからの展望は?
・近藤:東京へダイレクトに電気を送れないか、堂々と農産物も電気も売って普通に市民権を得ていく。日本のような狭小の土地にはソーラーシェアリングはピッタリと思う。
・高橋:自分たちは食べ物だけでなくエネルギーも作っている。海外ではプライドを持ってやっているが、楽しさを大事にしていきたい。

6月14日ふくしま講演会


 参加者アンケートに多くの回答をいただきました。その一部を記します。
・除染研究所の活動は、縮小しても継続していただきたい。
・日本国民全員が忘れること無いように、語り続けることが大切だと思います。
・応援しています。
・福島の農作物が安くたたかれてるのは悲しいこと。スーパーで見かけたら福島産を買うが、なかなか見かけない。
・がんばれ福島!
・バイオマスの活用では、残存放射能の問題があると思います。政府や東電に責任を持って対策を取ってもらい、安心して森林の活用ができるようにして欲しいと思います。
・今回の発表の方向はとても良い。
・米や野菜の価格が震災前に戻らないという点が気になる。福島だから安いという価値観が定着してしまったのか。
・ソーラーシェアリングのような新しい農業の形を進めておられるのは、希望だと思いました。
・福島県外在住で、具体的な被害状況は情報を得に行かなければ知ることがありませんでした。実際に廃業に追い込まれたり、自分たちが育てた大切な作物を自ら処分するという悲しい事実があったこと、そこから復興されたこと、非常に感銘を受けました。実害を受けたからこそ再エネへの意識が高いということもあると思いますので、経験を生かして再エネビジネスをけん引できる場所として活躍していただきたい。
・ソーラーシェアリングについては、農業再生とかエコとかを前には出さず、ストレートに「儲かるから」とPRして良いと思われます。福島県は太陽光発電にも適した土地が多いため、ソーラーシェアリングの実施により、サラリーマンをやるよりも多くのものを手に入れることができる、となれば、自然に人が集まり、復興が進むと思われます。
・原発事故の痛手は大きかったが、基本は原発事故があっても無くても、地方の疲弊は変わりません。その中で、ただ一つあるチャンスは電力を首都圏に販売する事くらいです。地道に自家消費を考える事が重要だと思う。
・安部首相がアンダーコントロールと言ったが無責任極まりなく、現在も事故の後始末のめどはたっていない。復興・再生は出来ないので新たな地域社会づくりを試みないとならない。風化させずに新たな地域社会を目指すための発想が必要である。
・地域内循環を目指してほしい。
・各自治体がネットゼロ戦略等を作っていく中で、農業そのものの排出削減も求められ、都市の排出のオフセットも求められていますので、ソーラーシェアリングのようなものをうまく活用できるシステム(国家的、もしくは自主的な制度)ができるといいと思いました。
・投資回収のひな型があり、農地の規制が緩くなれば必ず伸びると思います。
・私たちも同じ悩みを抱えていますので、意見交換ができるとうれしいです。
・19年前から太陽光発電を行っています。60歳を超えて実感しますが、退職金などを活用して第二の人生を豊かに送れる様、営農型太陽光発電をたくさんの人が活用されると良いと思います。

6月14日ふくしま講演会


 今回もオンラインではありましたが盛況な勉強会となり、再エネ・ソーラーシェアリングを活用した農業・農村の活性化を考える、たいへん有意義な機会になりました。福島の取組をまたご紹介できたらと思います。
 講師の皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 05:16 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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