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4月23日「バイオマスアカデミー第6回 オープンセミナー」の報告[2021年04月30日(Fri)]
 NPO法人農都会議 バイオマスアカデミーは、4月23日(水)午後、「バイオマスアカデミー第6回 オープンセミナー 〜バイオマス熱利用の普及拡大への道筋」をオンラインにて開催しました。当初予定の3月31日から4月23日へ日程変更したにもかかわらず、100名近い参加がありました。
 →イベント案内

4月23日オープンセミナー

 今回のオープンセミナーは、2月15日地域型バイオマスフォーラム第2回(地域型バイオマス6団体共同開催)で公表した政策提言の具体化を進め、熱利用技術の体系化と現場での応用・実践を図るため、フォーラムのフォローアップ企画として実施しました。
 使用テキストは『実務で使うバイオマス熱利用の理論と実践』(農都会議編)を使用したほか、『地域で始める木質バイオマス熱利用』(日本木質バイオマスエネルギー協会編)を参考資料としました。

 第1部は、三氏の講演・質疑でした。

4月23日オープンセミナー

 講演の前に、農都会議の杉浦代表理事より、「バイオマスアカデミーは、都内のセミナーと地方の出前講座を実施しています。本セミナーは、再エネ・バイオマス熱利用の現場にこれから携わる方々に関心を持っていただこうと、参加費をいただかないで行うことにしました。日本の最終エネルギー消費量の半分は熱です。2050年カーボンニュートラルに向けて、地域のバイオマスエネルギー活用・熱利用の意義を人々の共通認識として広げていくことがますます重要になってきています。本日は、化石燃料とは異なるバイオマス熱利用の技術のあり方を、しっかり学んでいただければ大変有難いと思います」と、開会挨拶を行いました。


 最初に、NPO法人農都会議理事・事務局長の山本登氏より、「木質バイオマス熱利用の本格的な普及拡大に向けて、化石燃料ボイラーからの脱却」のテーマで講演がありました。

4月23日オープンセミナー

 山本氏は、2月15日政策提言の重点ポイントを説明し、バイオマスと石油燃料熱利用の違い、木質バイオマス熱利用の重要性と意義、日本のバイオマス熱利用の阻害要因、普及拡大への基本的方向性と道筋についてお話しされました。
 また、燃料・ボイラーとも多種多様であり専門技術が必要、人材育成について現状は森林技術教育は始まったがバイオマス熱利用の教育を行っている大学・林業学校等はない、バイオマスの儲けのしくみ(バイオマスボイラーの利益構造・その仕組み)、熱売りビジネスなどについて説明されました。


 次に、熱エネルギー利用技術デザイン代表、元神鋼リサーチ株式会社代表取締役の黒坂俊雄氏より、「バイオマス熱利用のためのチェックリストの提案」のテーマで講演がありました。

4月23日オープンセミナー

 黒坂氏は、バイオマス熱利用のビジネスモデル、給湯器の変遷、バイオマスボイラーの効率、木質バイオマスボイラーの事業性、バイオマスボイラーと石油ボイラーで何が違うか、プロジェクトマネジメントの課題、技術マニュアルができても残る課題、チェックシート案の提案などについて、次のようにお話しされました。
・バイオマス温水ボイラー導入では熱効率がとても重要。
・木質バイオマスボイラー事業は、イニシャルコストとランニングコスト(効率)のバランスが重要。
・ビジネスモデルは、イニシャル重視とランニング重視の大きく2種類ある。
・バイオマスボイラーは機器導入ではなくプラント導入と認識する。効率や稼働率は機器単体では決まらない、システムで決まる。
・石油ボイラーと同じ周辺設計では失敗する。ボイラーと建築設備関係のコミュニケーションが必要。
・計画設計マニュアルができても従来の業務プロセス(プロジェクトマネジメント)の修正は簡単ではない。
・チェックシートは、補助金申請時と設計・施工段階の2種類ある。
チェックシート策定の課題ついては、
・チェックシートは使ってもらわなくては意味がない。今はまだ農都会議バイオマスアカデミーの議論の範囲にとどまっているが、多くの方の意見を入れてオーソライズされるように持って行きたい。
・バイオマスボイラーは多様な使い方がされている。事業性重視、熱効率重視だけでなく、環境意識付け重視の体験学習もあって良い。これらを含めて、しかし、ゼロカーボンを目指すに相応しい目標設定が重要。
・事業性を確保し普及を目指すなら、イニシャルの低コスト化の課題は残る。チェックシートが管理シートになって高コスト体質にならないように注意。
・バイオマスボイラー導入後に本来は計画性能が年間で満足されているかどうか確認が必要。チェックシートだけでは、すり抜ける人は防止できない。年間の熱効率の計量、使用電力の計量は本点の視点からも将来につながるはず。
 最後に、本日のまとめとして次のように述べられました。
・バイオマスボイラー導入で事業性が計画通りに確保できない多くの原因は、
  バイオマスボイラーは石油ボイラーの機器リプレイスと考えたことによる。
・プラント導入であるとの認識ができれば、事業性の意識が変わり、性能目標を
  設定する。性能目標を設定すれば技術の問題は解決方向に向かう。計画設計
  マニュアルができれば、技術問題解決の大きなサポートになるだろう。
・日本では建築設備設計者がバイオマス熱利用エンジニアリング技術を共通認識す
  ることが重要。関係者に技術が浸透するにはしばらく時間がかかるだろう。
・FS段階で施主/コンサルがプラント導入の意識ができないと、事業化と予算化
  精度が低すぎて補助金の制約に縛られて失敗する。本問題解決として、補助金申
  請時のチェックシート案を提案した。
・ゼロカーボン時代にバイオマス熱利用は重要であり、関係者の知恵を集めて、
  課題解決に取り組みたい。


 続いて、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会副会長の加藤鐵夫氏より、「今後における木質バイオマス熱利用の課題と対応 〜木質バイオマス熱利用(温水)に関する計画設計マニュアルの作成」のテーマで講演がありました。

4月23日オープンセミナー

 加藤氏は、木質バイオマス熱利用の停滞原因、石油ボイラーとバイオマスボイラーのコスト比較、高コストを どう考えるか?などをお話しされ、バイオマスボイラの効率的技術の一般化が出来ていない、特に温水利用における技術マニュアルの作成が必要と説明された。
 温水利用技術マニュアルはバイオマス熱利用拡大には必須事項として、目的、章立て、作成メンバー、スケジュールについて説明され、2021年秋頃の完成をめざすと述べられました。
 また、木質バイオマス熱利用の課題と今後の対応については、木質ボイラの特質に精通したエンジニアリング人材の育成と木質バイオマス熱利用に精通した人材が不足していると、望ましい人材育成の方向をお話しされ、木質バイオマス熱利用を進めるプラットフォームの構築についても述べられました。
 事業者における検討・チェックの重要性についても、次の課題を挙げられました。
・助成制度における実績評価とPDCA
・地域における実行体制の整備
・規制緩和とロードマップの作成による普及型ボイラ の開発
・効率的な燃料材供給システムの構築
・配送システム、燃料材証明システムのICT 化
・燃料材の品質規格の普及定着


 第2部は、「バイオマス熱利用の本格的普及拡大のために我々は何を実践すべきか?」のテーマでディスカッションを行いました。
 最初に、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆき氏より「脱炭素化に向けた熱ロードマップの必要性について」のテーマで講演がありました。

4月23日オープンセミナー

 泊氏は、日本の温暖化対策に熱政策は必須、産業用熱にバイオマスを、脱炭素化に向けた熱利用ロードマップ策定に向けて、日本版熱ロードマップの内容案、新たなマーケットとしての再エネ熱などについて、次のお話をされました。
・日本のエネルギー最終需要の半分は熱利用
・熱の強力な再エネ化が必要だが、関係者の間でもまだ認識は低い
・将来は再エネ電気熱等へ移行するとしても、当面は高価格、技術開発が必要
・熱利用には、環境省、経産省、国交省、総務省、農水省など複数の官庁が関わっている
・費用対効果に優れる既存技術普及に重点を置いた、熱ロードマップの策定等が必要ではないか
・グランドデザインを描く:導入目標と柔軟なシナリオ、国の目標、民間の目標、自治体の目標
・省エネ 、断熱、排熱、太陽熱、地中熱、地熱、バイオマス熱、再エネ電気熱等の適切な割り振り
・再エネの特徴を生かした促進策を
 −日本の熱需要の半分以上は産業用熱
 −高温が必要な産業用熱には、廃棄物・バイオマスを活用
 −熱利用はより地域に立脚した事業となりうる
 −熱のカスケード利用(高温〜低温)
 −ESCO 、熱売り、リース等再エネ熱供給事業を行うサービス会社 の育成
・制度的( 地球温暖化対策計画 、 エネルギー基本計画 )な位置づけ
・熱利用の政策合意のための 枠組み作り(省庁横断、官民連携)
・オープンな議論と知恵の活用を
・熱分野の脱炭素化:技術はすでにあるが、本格的なマーケット形成はこれから
・産業用バイオマス熱:製造業の脱炭素化に必須
・ESCO 事業の一部としての位置づけ、積極的活用、工場設備などへの強化、再エネ熱による工業団地
・FITバイオマス発電から熱利用への移行、FIT終了後、国産バイオマス燃料が余る?

 続いて、株式会社WBエナジー 代表取締役の梶山恵司氏より、「木質バイオマス熱利用の本格的な普及拡大に向けて」のテーマで講演がありました。

4月23日オープンセミナー

 梶山氏は、第1部の山本氏、黒坂氏、加藤氏、第2部の泊氏の講演を受けて、次のように簡潔に述べられました。
・日本のバイオマス熱利用は事業として成立せず低迷してきたが、20年前はドイツも似た状況で、QMによる品質管理をするようになってからQM導入プラントの技術レベルが格段に向上した。
・熱ビジネスに必須の事業性の基準は単純。バイオマス依存率が90%以上で、バイオマスボイラー稼働時間(定格出力で、温浴施設は4000時間、老人ホーム3000時間、空調1500時間)と、燃料消費量(導入前、導入後)のデータがあれば、簡単に計算できる。
・木質バイオマス熱利用の本格的な普及拡大に向けては、民間努力と政府の役割が必要で、モデル事例=Best Practiceと、理論・技術がすべての出発点となる。
・民間努力なしには始まらない。
・熱利用版FITその他政府への要望は、それを説得できるような事例が一般化してからのこと。

4月23日オープンセミナー

 意見交換の概要を記します。(○印:質問、・印:回答又は意見)
○司会(山本氏):最初はホットな話題から。政府が決めた2030年CO2排出46%削減についてご意見は?
・泊氏:46%削減のためには、熱の取り組みが必須だ。
○司会:バイオマスにはチャンスと思いますが?
・梶山氏:バイオマス発電はFITコストが高く、社会で考えて行かないと。欧州は合理的アプローチをしていて、地域経済に利益が及んでいる。日本でも合理的なバイオマスの利用を考えて行かないと、CO2削減どころの話ではない。
・加藤氏:環境省が地域脱炭素ロードマップを策定したが、木質バイオマスのロードマップは無い。2030年に向けて、国・自治体・業界団体・民間はどうしたらよいか。ロードマップの議論をしっかりやる必要がある。
・泊氏:インフラ系は時間がかかるので傷がどんどん拡がってしまう。CO2削減コストを各々計算し、急ぐ必要がある。熱利用についてもそう。2030年は近過ぎる。
・黒坂氏:ロードマップは泊さんの言う通り。普及には需要側を知らないとできない。使えるものは何でえも使う。ITの有効活用が必要。
・梶山氏:今までとこれからは違う。JWBAの熱利用マニュアル作りなど技術の整備・体系化が進む。ベストプラクティスの事例と合わせて活かしたい。
・加藤氏:動きが多く情報を追いかけるだけで大変だが、どうするか考えないといけない。例えば、カーボンプライシングを○○年までやる等、決めれば皆動き出す。地域型バイオマス6団体や再エネ熱促進3団体の提言も出た。経済界も変わっていく。
・梶山氏:発電と熱は分けて考え菜と難しい。
・泊氏:CO2削減には、民間、地域で事例を積み重ねる必要がある。温対税は今は小さいが、増やすことは可能。いろいろ見えてきたと思う。耕作放棄地にソーラーを並べるのは山林よりは害がない。石炭火力のフェードアウトは見せかけに過ぎない。しがらみがあっても、今は激変期なので、変わるチャンスだ。
・加藤氏:林野庁で森林基本計画を作っているが、時代が変わってきたのかなと。高い建物を木材にし、バイオマスと併せて考える。天然林も活用する。全体で合わせてポテンシャルを考える。
○司会:チャットでも質問があるようですが、K-BETSの米谷さんからご意見があるようなのでお願いします。
・米谷氏:燃料が無いと発電も熱エネルギー利用もできない。林業の上流から下流の問題点を考えたい。山側は中小企業が多いため機器改良に時間がかかり、小規模なため政府の支援の手も入らなかった。林業機械を使い込むには時間も費用も掛かり、国産化につながっていない。まだまだ材はあるが、大規模伐採は山が丸裸になってしまう。山から材を出すには、持続可能な内容でやるべき。まだまだバイオマス利用は進むと考えるべきだ。

4月23日オープンセミナー

 質問や意見が他にも多くありましたが、省略させていただきます。
 開会挨拶は、農都会議事務局長の山本登が行いました。

4月23日オープンセミナー

 本セミナーの総合司会は、NPO法人農都会議理事、ちば里山・バイオマス協議会代表幹事の高澤真氏でした。

4月23日オープンセミナー


 昨年10月26日の首相所信表明演説で出された「2050年カーボンニュートラル宣言」は、国内の温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロとする画期的なものでした。カーボンニュートラルの実現に向けてバイオマス熱利用の普及拡大は待ったなしの情況になったと言えますが、セミナーの議論の中では残念ながら、日本におけるバイオマスのポジションは非常に低いことが判明しました。
 しかし、セミナーへ大勢が参加して熱心な討論が行われ、たいへん有意義な場になったことを考えると、これからも継続的にバイオマス熱利用拡大を訴えていく必要があると確認できたと思います。
 講師並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。

 本セミナーは、緑と水の森林ファンド事業助成金を一部利用して開催いたしました。
Posted by NPO農都会議 at 11:54 | バイオマスアカデミー | この記事のURL | コメント(0)
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