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4月8・9日バイオマスアカデミー岩手県久慈市出前講座の報告[2021年04月29日(Thu)]
 NPO法人農都会議 バイオマスアカデミーは、4月8日(木)・9日(金)の二日間、「バイオマスアカデミー岩手県久慈市出前講座 〜久慈のバイオマス熱利用の実態と今後の展開〜」を開催しました。
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4月8・9日アカデミー

 農都会議バイオマスアカデミーは、地域に豊富にあるバイオマス資源を活かす熱利用技術の普及のため、化石燃料とは異なる技術の平準化と人材育成を進める各地への「出前講座」を行っています。今回は、岩手県久慈市の事業者と協力して二日間のカリキュラムを実施しました。
 出前講座の参加者は26名でした。1日目は、久慈市山形町来内の「平庭山荘」の研修会場で座学を行い、2日目は、久慈市侍浜町保土沢の「久慈バイオマスエネルギー」で熱供給施設と熱利用施設を見学しました。


 1日目のカリキュラムは、講師3名の講演、ボイラー見学、事例紹介、意見交換でした。
 一番目に、株式会社WBエナジー 代表取締役の梶山恵司の氏より、「木質バイオマス熱利用の本格的な普及拡大に向けて、提言 と その背景」のテーマで講演がありました。

4月8・9日アカデミー

 梶山氏は、2月15日地域型バイオマスフォーラムで公表した政策提言「バイオマス熱利用の本格的な普及拡大の実現に向けて」について、バイオマスアカデミーが中心となって取りまとめたこと等の経緯や、体系化された技術を補助事業の要件に取り入れること、バイオマス熱利用の品質管理・向上を図り脱炭素と地域経済へ貢献すること等の目的を説明されました。

 また、脱炭素化における熱の位置づけ、バイオマス熱利用の低迷の背景・実態、バイオマス熱利用の本格的な普及拡大のために必要な制度変更、地域における再エネ普及拡大のプロセスなどについてもお話しされました。
・日本の木質バイオマス熱利用は理論・技術なしに導入し混乱した。
・ここにきて、理論・技術の解明とそれにもとづく、Best practice の事例ができるようになった。
・これをベースに本格的な普及拡大につなげることができるかどうかの段階だ。

 書籍『バイオマス熱利用の理論と実践』(農都会議編)を紹介し、バイオマス技術が事業性確保の前提となると説明されました。
・バイオマスボイラー普及拡大の前提は「事業性」。
・バイオマスの設備費は化石ボイラー設備に比べ高めだが、低めのラニングコストで回収する。
・主なラニングコストの構成は燃料代、電気代、保守点検費。
・このうち燃料代が大半を占め、ランニングコスト抑制と事業性確保のポイントとなる。


 二番目に、熱エネルギー利用技術デザイン代表、元神鋼リサーチ株式会社代表取締役の黒坂俊雄氏より、「バイオマスボイラーの選択とエンジニアリング」のテーマで講演がありました。

4月8・9日アカデミー

 黒坂氏は、本日は比較的小さな規模の木質バイオマス温水ボイラーに焦点を絞って講演するとして、石油ボイラーとは異なるバイオマス熱利用のビジネスモデルの効率、事業性、ランニングコストについて説明し、効率は機器単体では決まらない、システムで決まるとお話しされました。
 また、バイオマス熱利用のポイントは、@バイオマスボイラーの選定、Aチップボイラーの選定手順、B年間の熱需要の変動を見てボイラー出力とタイプを決める、C同時に事業性を把握することであるとし、バイオマス熱利用システムでは技術マネジメントが重要、バイオマスボイラーと石油ボイラーの熱利用システムの中での使い方は全く異なると説明され、プロジェクトマネジメント及び技術マネジメントの手段として「チェックシート」を提案されました。

石油給湯ボイラーのビジネスモデルとの比較表
4月8・9日アカデミー

 そして、次のようにまとめられました。
○木質バイオマス温水ボイラーでの熱利用は、従来の石油温水ボイラーの機器購入とは全く異なっている。
・事業性を確保するためには、従来意識しなかった熱効率が重要。
・地域で持続的に入手できる燃料種の選択とそれにマッチするボイラー選択を丁寧に検討する。
・365日24時間の熱需要変動を意識して、導入ボイラーのサイジングを行う。
・温水配管やボイラー制御の方法も、熱損失、ポンプ動力、稼働率に影響する。石油ボイラーの方法をコピーするのではなく、損失低減ができることを確認してエンジニアリングを行う。
○木質バイオマスを良く知り、加えてボイラー制御や熱利用システムのエンジニアリングを良く知る専門家やコンサルはほぼ皆無である。農都会議の教科書で、ようやく技術を体系化したが、まだ業界の共通認識にはなっていない。
○ボイラー導入を計画される方は、石油ボイラーのような機器導入の意識は捨てて、プラントを作る意識でサプライヤー選定や技術管理をお願いしたい。今後、業界団体から技術マニュアルや技術チェックシートも提案される予定であり、教科書と合わせて、自称専門家、ボイラー供給者、建築設備設計者と議論する際の重要情報として活用いただきたい。


 三番目に、久慈市産業経済部林業水産課林政係長の熊谷望氏より、「久慈市のバイオマス熱利用・地域再生可能エネルギー活動について〜バイオマス熱利用の先進地域、久慈市の活動と今後の展開」のテーマで講演がありました。

4月8・9日アカデミー

 熊谷氏は、震災・津波の被害があった久慈市の自然と産業を紹介し、原材料供給量が増え、森林資源の活用が進んでいるとお話しされました。
 また、利用可能な木材資源量熱エネルギーのさらなる利用として、乾燥チップによる熱エネルギーの搬送事業、エネルギー供給施設と菌床ハウス事業などについて説明し、「福祉の村」温水プールや山間部の温泉施設が新たな木質チップ供給先となると、今後の展望を述べられました。


 次に、平庭山荘にある久慈市営「しらかばの湯」に設置された木質チップボイラーの見学会がありました。

4月8・9日アカデミー

4月8・9日アカデミー

 平庭山荘ボイラー責任者の坂本正人氏から、オヤマダエンジニアリング製「エコモス」ボイラーの燃料、稼働状況、課題などについて、次のような説明がありました。
・安定運転には大きな問題はない。
・すす取りなどの手間はかかるが当初からそうであり、特に問題とは考えていない。
・採算性はとれているかの質問については、収支は市の担当。


 休憩を挟んで、NPO法人農都会議の杉浦代表理事より、「地方創生に活かすバイオマス熱利用 〜地域エネルギービジネスとパブリックサービス会社づくりに向けた道筋〜」のテーマでスピーチがありました。

 事例紹介では、久慈バイオマスエネルギー会社代表取締役社長の日當和孝氏及び経営顧問の小西千晶氏より、「久慈バイオマスエネルギー社の概要とその採算解析と収益構造」のテーマでお話がありました。

4月8・9日アカデミー

 日當氏は、資料を元に次のように述べられました。
・2012年に地域の関係者と、原料提供者へのアンケートなどの調査事業を実施し、現実的な原料の両(43.9t/1日)以下で身の丈に合ったエネルギー利用を考えることにした。
・地域にあるエネルギー供給会社を核とした熱の需給システムの全体像を考え、木質バイオマスを燃やして温水と蒸気を作り、ハウス60棟に供給する計画を立てた。
・原料はバーク(樹皮)を利用、バークの破砕・搬送にひと工夫を重ねた。
・熱需要の変動に対しては、廃熱でチップ乾燥し燃料価値を向上させて蓄熱する。
・地域の様々な熱源を木質乾燥チップを熱媒体として利用し、距離の制約なく供給する展開が可能となった。
・ハウスの空調コントロールによりシイタケ栽培の生産性が向上した(等級の高いシイタケ生産、販売単価維持、売れ残り無し等)。
・本取組により、重油代削減、きのこ収率アップ、雇用創出が実現した。

 続いて、小西氏は久慈バイオマスエネルギー社の採算と収益構造について、次のように述べられました。
・バイオマスボイラーは、蒸気用と温水用で構造やエンジニアリングなどの違いがある。
・各種補助金を活用しジェクトをやっている。現状は収支トントンなレベル。
・課題であった乾燥チップの販売先であるべっぴんの湯の湯量枯渇は、近くに温泉井戸を掘ったところ、温泉(冷泉)が出たことから、乾燥チップの販売先にも目処が立ち、採算向上の見通しだ。


 事例紹介に続いて、講師の皆様と参加者間で熱心な意見交換が行われました。司会は、農都会議の山本登事務局長が務めました。
 意見交換でのやり取りの一部を記します。
・梶山氏:岩手や長野のようなところは熱需要があり、捨てるしかなかったバーク(樹皮)を燃料にしている。バイオマスは「ゴミ」を宝にすることが出来る。
・黒坂氏:久慈バイオマスエネルギーは効率の高いやり方をしている。共有化できるところは共有し、無駄な時間を使わないようにする。現在の補助金政策に欠点があり、評価制度が必要と思っている。「チェックシート」はその一例として作った。
・梶山氏:それぞれ政府の役割と民間の役割がある。バイオマス熱利用の指南書も進化して来た。
・黒坂氏:欧州と日本では熱利用の違いがある。また、バイオマスボイラーは石油ボイラーと同じに考えた時に、発生する問題がある。
・小西:久慈では冬は重油も凍る。お盆などの繁忙期にシイタケの出荷を増やすようにハウスの温度を上げている。熱の計画的な供給で、生産性が向上している。

4月8・9日アカデミー

 おかげさまで講師・スタッフ合せて26名の参加となり、1日目のカリキュラムを無事に終了することが出来ました。日本一の白樺美林の中に佇む「平庭山荘」で行われた出前講座は、久慈市や久慈バイオマスエネルギーなどの関係者の皆様による講演とディスカッションが行われ、大変有益な内容となりました。


 夜のうちに積もった雪で一面の銀世界となり、日本のチベットと言われる岩手県平庭高原の標高の高さを感じました。白樺林が朝日に映えていました。

4月8・9日アカデミー


 2日目のカリキュラムは、久慈バイオマスエネルギー関連設備を見学するフィールドワークでした。
 平庭高原から渓谷沿いに下って久慈市街を通り抜け、1時間ほどかけて久慈バイオマスエネルギーへ到着しました。久慈バイオマスエネルギー株式会社経営顧問の小西千晶氏と、技術顧問の野間毅氏より、プラントにおけるバークの処理設備及びプロセスの説明がありました。
・バーク供給可能量:43.9Ton/ 日
・温水ボイラー:配管で椎茸ハウスへ
・蒸気ボイラー:配管で菌床殺菌施設へ
・キノコ栽培工場
・60坪栽培ハウス:60棟
・80坪栽培ハウス:50棟
・椎茸生産量:3t/日、1000t/年

4月8・9日アカデミー

 熱供給プラントとシイタケ工場はスケールが大きく、事業性の高さがうかがわれました。収支は?との質問に、現状はトントンですと回答がありました。事業の展開には、熱供給プラントの設計から施工、運転をサポートしている東芝インフラシステムズ株式会社の存在がありました。

4月8・9日アカデミー

4月8・9日アカデミー

 廃棄物ともいえるバークを燃料にする仕組みはユニークです。この仕組みをプロジェクト化し、他への展開を図る活動も行っているとのことでした。

4月8・9日アカデミー

4月8・9日アカデミー

 久慈バイオマスエネルギープラントの見学は、日當社長はじめ社員の皆様にサポートしていただきました。
 出前講座の岩手県外からの参加者は、東北新幹線の二戸駅集合及び解散の旅程でした。県外の参加者も、久慈市周辺からの参加者も、1日目と2日目のカリキュラムの内容の高さと密度の濃さに、充実した二日間を過ごすことができたと思われます。
 講師の皆様、現地の関係者の皆様、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

 本出前講座は、緑と水の森林ファンド事業助成金を一部利用して開催いたしました。
Posted by NPO農都会議 at 07:38 | バイオマスアカデミー | この記事のURL | コメント(0)
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