
2月15日地域型バイオマスフォーラム第2回の報告[2021年03月27日(Sat)]
NPO法人農都会議は、2月15日(月)午後、地域型バイオマス6団体の協働による「地域型バイオマスフォーラム第2回 地域のバイオマス事業化に向けて ―地産地消のバイオマスエネルギー・熱利用をビジネスにする」を開催しました。
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昨年7月に続き、2回目となる地域型バイオマスフォーラムですが、地域のバイオマスエネルギー活用・熱利用はますます重要となっています。今回は、会場とオンラインの併用予定をコロナ緊急事態宣言発令により、オンライン開催(Zoomウェビナー利用)に変更し、400名を超える参加者があり盛会となりました。
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昨年7月に続き、2回目となる地域型バイオマスフォーラムですが、地域のバイオマスエネルギー活用・熱利用はますます重要となっています。今回は、会場とオンラインの併用予定をコロナ緊急事態宣言発令により、オンライン開催(Zoomウェビナー利用)に変更し、400名を超える参加者があり盛会となりました。
フォーラムは、一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク代表理事の村岡元司氏の司会・進行で始まりました。
開会挨拶は、NPO法人農都会議の杉浦英世代表理事が行いました。
続いて、農林水産省バイオマス循環資源課課長補佐の森上和治様と、林野庁木材利用課課長補佐の山下孝様から、来賓ご挨拶を頂戴しました。
第1部は、最初に、環境省地球環境局地球温暖化対策課課長補佐の野尻理文氏より、「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた最近の動向について」のテーマで講演がありました。
野尻氏は、@脱炭素社会に向けた潮流(気候変動、パリ協定の意義、温室効果ガス削減の中期と長期の目標)、A脱炭素で持続可能な企業経営(ESG金融の拡大、脱炭素経営に向けた取組の広がり、SBT認定を取得した日本企業からサプライヤーへの要請、RE100企業からサプライチェーンへの要請)、B脱炭素で持続可能な地域づくり(2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体224、9千万人(人口の7割)、GDP約441兆円)、国・地方脱炭素実現会議、地域脱炭素ロードマップのイメージ、C環境省のバイオマス熱利用支援事業の紹介、政府の閣議決定文書における再エネ熱利用の位置づけなどをお話しされました。
また、環境省のバイオマス熱利用に関する支援事業についても説明されました。
続いて、東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授の三浦秀一氏より、「ゼロカーボン時代のバイオマス」のテーマで講演がありました。
三浦氏は、これまで日本の再エネ政策は電力中心に進んできたがゼロカーボンを実現するにはバイオマスの熱利用は不可欠と、ゼロカーボン時代に必要なバイオマスの新たな役割について、山形市や最上町の事例を含めて次のようにお話しされました。
・家を変え、まちを変え、エネルギーを変え、省エネ+再エネ100%のゼロカーボンシティをつくる。
・2021年4月から説明義務化される建築物省エネルギー法薪やペレットのストーブが住宅の省エネ評価項目に入っていない。太陽熱温水器はあるがバイオマスが無い。
・地域に再エネ発電所をつくっても地域はゼロカーボンにならない
・本当のゼロカーボンシティをつくるには、再生可能エネルギーを地域でつくるだけでなく、地域の需要家がその再生可能エネルギーを使う必要がある。
・再エネ熱の利用は、地域で供給と消費が完結するのでゼロカーボンシティの実現に直結する。
・再エネ電気の利用は、地域で供給と消費が結びつくような仕組みを構築しなければゼロカーボンシティの実現に結びつかない。
•地域内に再エネ電力・熱を供給する、地域エネルギー会社が必要になる。それによってゼロカーボン化を目指す地域外企業の誘致に活かす。
・ゼロカーボン時代のバイオマスは、長期エネルギー貯蔵体としての政策評価が必要。
・ゼロエネルギー住宅・建築(ZEH・ZEB)にバイオマスの導入が必要。
・ゼロカーボンシティ実現には熱を売る地域エネルギー会社が必要。
第2部は、事例紹介、質疑・意見交換が行われました。
はじめに、岡山県西粟倉村参事の上山隆浩氏より、「地域における木質バイオマス熱利用・熱供給について 〜西粟倉村が目指す地域循環共生圏とデータプラットフォーム」のテーマで講事例紹介がありました。
上山氏は、自治体の立場から、@持続可能な地域づくりの取組、A再生可能エネルギー事業、B百年の森林事業についてお話しされ、具体的には、地域資源の森林価値最大化のモデルづくり、村内温泉3施設の灯油ボイラーを薪ボイラーへ更新、地域熱供給システムと自立発電による福祉施設機能強化、百年の森林事業と再生可能エネルギーの効果(経済効果、温暖化対策に与える効果、その他)などを説明されました。
また、木質バイオマス導入に苦労したところ、必要なインフラ基盤・森林資源の定量化、エネルギーの見える化とスマートフォレストシティプラットホーム、バイオマス産業都市・SDGs未来都市への課題についてもお話しされました。
次に、コマツ粟津工場改革室主幹の三谷典夫氏より、「地産地消バイオマス熱の工場内カスケード利用の紹介 〜木質バイオマスエネルギー利用を通じて地域と共栄する工場」のテーマで講事例紹介がありました。
三谷氏は、地元石川県での農林業支援と木質バイオマス導入の背景を次のように説明されました。
・コマツの強みが活かせる事業活動そのものをCSR活動と位置づけ、 本業を通じて社会の要請に応えている。
・コマツの建機技術や生産技術などを活用し 地域協働で農林業を支援 し、生産性向上や所得向上に繋がる活動を継続して推進する。
・農林業イノベーションにより、 農林業 の生産性向上や所得向上に寄与。
・コマツは、ICT建機の活用やIoT・生産技術の活用などを通じて、農林業の新工法・新技術開発などを支援する。
また、県内資源の地産地消による有効活用による多目的効果を目指してと、石川県の林業課題をあげ、コマツの活性化支援概要を述べられました。
・地産地消型木質バイオマス導入と地域協働での運用
・地域の未利用放置材の有効活用
・地域協働による地産地消型バイオマス運用
・かが森林組合の未利用間伐材等のチップ化事業
・林業(1次産業)と地元2次・3次産業との連携( 地域協業)
・コマツ粟津工場の木質バイオマスボイラシステム=コマツと地域業者が協業して独自のシステム構築
・木質バイオマス蒸気・温水ボイラー発電&熱利用複合システム
三番目に、株式会社アルファフォーラム代表取締役、もりもりバイオマス株式会社顧問、会津森林活用機構株式会社取締役の小林靖尚氏より、「熱供給事業事例と将来性について 〜福井あわら三国『もりもりバイオマス』、福島会津『会津森林活用機構』」のテーマで講事例紹介がありました。
小林氏は、もりもりバイオマス(福井県あわら市)の事業紹介、熱プラント導入の複数例、設備の概要、熱プラント導入のポイントなどについてお話しされました。
また、稼働の実情や会津で検討していること、今後進める全体像についても説明されました。
四番目に、株式会社兼平製麺所代表取締役社長の兼平賀章氏より、「環境負荷低減の取組み 〜バイオマスを利用した地球温暖化対策」のテーマで講事例紹介がありました。
兼平氏は、創業72年となる会社の概要、経営理念、環境基本方針を説明され、設備導入とその効果を述べられました。
・2007年にバイオマスボイラー1号機(横置多管ボイラー)導入 建築廃材や製材は材を燃料に。
・2011年に2号機(炉頭煙管ボイラー)を補助金なし、8,000万円投資して導入。
・2009年には蒸気発電機の導入 。
・2019年度の木質燃料使用量 5,692t 約10,000千円 14Kタンクローリー82台分のA重油削減 3,100t-CO2相当分。
・バイオマスボイラ維持費57,000千円 A重油@50円≧メリットが出る。
・2021年度以降 償却済のため@38円≧。
・2台のバイオマスボイラーを導入したことにより、重油使用量が減少した。
・H14年度からは発電機による夏期の電力のピークカットを行っており重油の使用量が増えてきていた。
・近年では最高益を記録した平成16年度をピークに減少に転じている。
・バイオマスボイラーの導入により、大幅にCO2の排出を抑えることができた。
・その後は生産の増加に伴って増えているが、原単位で生産量と排出量を比較すると、一定の値を維持している。
・リサイクルへの取組みとして、取引先で廃棄になった食用油を回収し、自社にて生成を行なってBDFを作成。ディーゼル発電機の燃料として使用している(100L/week)。
・Jクレジットについては、A重油ボイラからバイオマスボイラへの更新及びバイオマス発電の導入プロジェクト」として、2013年4月1日〜2019年7月31日までの運用から17403 t-CO2 のクレジット認証≒5724世帯の年間排出量に相当する量を削減したことになる。
最後に、次のように述べられました。
・廃材チップは価格が安価で含水率が20%以下のため燃料に適する(調達不安定)。
・生木質チップを燃料にする場合、乾燥が必要。スギ の場合、含水率が、心材:55% 辺材:159%。
・未乾燥木材を燃料にする場合、ボイラの排熱でチップを乾燥する装置を付けないと効率が悪い。
・小規模バイオマスボイラの場合、未乾燥木材を燃料にする場合 採算が合わない。
最後に、株式会社WBエナジー代表取締役の梶山恵司氏より、「木質バイオマス熱利用の本格的な普及拡大に向けて」のテーマで講事例紹介がありました。
梶山氏は、最初に、熱利用の普及拡大期は、2002年のバイオマスニッポン総合戦略を契機に政策的にバックアップされ、2014年にかけてバイオマスボイラー数は2000台超に増加したが、これをピークに以降停滞している(ドイツは5万台規模(500kW以下)とお話しされ、低迷の背景やバイオマス熱利用の実態を説明されました。
また、バイオマスの本格的な普及拡大の前提条件は事業性確保であるとし、そのポイントとして3点を挙げられました。
@稼働率・依存率を可能な限り高めること⇒エネルギー密度
Aエネルギー効率の追求(燃料消費量の抑制)
B電気消費量
失敗事例についても説明され、QMによる品質管理の必要性やBest practiceの具体的データ(ドイツの地域における再エネ普及拡大のプロセスと日本の段階)についても述べられました。
・熱損失と電力消費量を増大させる設計が失敗の原因となる。
・20年前はドイツも似た状況だったが、QM(バイオマス熱プラントの品質管理)によって導入プラントの技術レベルが格段に向上した。日本版QMに至る道筋として、「バイオマス熱利用の理論と実践」 (農都会議編)発刊により技術体系化が一段落、これをベースに日本木質バイオマスエネルギー協会が日本版QM作成作業を進めている。
意見交換では、最初に、Zoomの「Q&A」機能による参加者からの質問に対して、講演された皆様から回答がありました。
Q:事業の経済効果は想定通りか?
・上山氏:事業をやる前に一年かけて調査した。ほぼ見込み通りの稼働に入っている。
現段階では公共施設が中心で、夜間、休日など熱変動が多い。二期工事で町営住宅に広げれば、事前の想定を達成できる模様。
Q:110名の雇用増を想定していたのか?
・上山氏:110名の雇用増はバイオマスではなく、林業・木材加工関連事業新規就業者。
Q:熱量計はビル等の温水・冷水では一般的だが、どのような問題があるか?
・小林氏:熱事業法で指定されているものも参考にしているが、そこまでいかない規模のものもあり、法律対応に留まらず、まったく新しい検討をする必要があると思ってやっている。問題は、どこで測るか統一されていないこと。熱損失を考慮する必要があり、一般化のためには統一化が必要で、まだまだ検討が足りない。運用するときに、代金を払わないと熱供給を止められるしくみをつくらなくてはいけない。
会津では、東ガスや東北電力などに入ってもらいながら課題抽出をしている。測定は温度差と流量でわかるが、場所や管理の仕方が重要だと思っている。
Q:建廃を使っているとのことだが、防腐剤など有害物質の問題はないか?
・兼平氏:中間処理業者に保健所の規制がかかっている。基準がある。
ボイラー800℃以上あり、接着剤が混じっていても問題ないとのこと。
もともと焼却処分されていた建廃。
・梶山氏:今回、データを出していただいて、稼働の実態、効率が分析できるようになった。
導入事例の改善点、反省点をフィードバックしていただく。実践的方向に向かえる議論になってきたと思う。
また、講演された皆様による意見交換では、質疑や他の講演者の内容も踏まえ、今後に向けた示唆に富むご意見を伺うことができました。
・野尻氏:バイオマス熱利用のよい実績をつくることが、ポイントになる。環境省としてもよいモデルの蓄積を支援したい。
再エネ電気事業が今年度、行政レビューで目玉の事業として議論され、コスト低減をしていくべきではないかということで、抜本的見直しということで終了となったが、環境省は再エネ熱が重要ではないかと考えて、支援していく。よい実績を生み出す好循環ができればと考えている。
・三浦氏:木質バイオマスは、森林をどうにかしたいという林業側からスタートし、木をたくさん消費できればよいという考えだったが、いろいろな問題、技術的問題をクリアできないということの反省が、ようやく出てきた。
技術的ノウハウ、QM、日本に入ってくるのが遅れた。これを誰に向けてかと言えば、設備技術者だろう。この議論は農水、経産、環境によって推進されているが、国交省が抜けている。再エネ熱の利用は、法律や技術、国交省が入ってもらわないとすすまないのでは。
・上山氏:森林資源量の定量化が自治体で遅れている。どれぐらいの量が安定的に確保できるのか、デューデリジェンスがないと事業的に難しいだろう。補助制度もあるが。林業の繁栄につながり、バイオマスの安定稼働にもつながると思う。
・村岡氏(司会):上山さん、コマツ、梶山さんも、見える化、データ把握、ポテンシャルを指摘された。時代はかわっているのかなという認識。
経産省が出したグリーン成長戦略で電化を打ち出している。熱供給、熱密度から考えると電気というよりもという意見もあったが。
・三浦氏:電化が流れになっているが、その電源を何にするか。冬場の電気を再エネで供給できていない。風力でまかなえるのか。バイオマスでの供給が考えられる。
・野尻氏:政府は電化を進めているが、すべてのものを電化するのは無理なので、熱のゼロエミッション化が重要。グリーン水素、メタネーションといったなかに再エネ熱も入る。イノベーションと既存技術を合わせて、バイオマスも地道にすすめていくということかと思う。
・小林氏:森林資源の把握について、会津では、全市町村で調査に入ってデータはそろっている。ところが、民地、誰が持っているかという境界が不明確、飛び地があったりして、500-1000ha続いていないと効率的な施業ができない。大きな固まりにしないと手をつけられない。交渉しているが時間がかかりそう。所有の責任、保安林もほったらかしのところが多い。ここに切り込まないと。ぜひ、上から下までまとめての検討を提言に入れていただければ。
・村岡氏:データ、可視化という点に時代の変化を感じた。経済・社会・環境が持続可能でないと続かない。今日の事例は、雇用やCO2削減など優れた事例だった。CO2クレジットの販売、見えなかったものを定量化することで価値が出てくる、社会価値を持続可能につなげていく時代ではないか。
フォーラム閉会にあたって、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆき氏より、「地域型バイオマスフォーラム第2回に向けたメッセージ」の発表がありました。
併せて、共同開催6団体(農都会議、バイオマス産業社会ネットワーク、日本有機資源協会、日本木質バイオマスエネルギー協会、日本サステイナブルコミュニティ協会、日本シュタットベルケネットワーク)が取りまとめた「地域型バイオマスフォーラム第2回 政策提言」の公表もありました。
・地域型バイオマスフォーラム第2回に向けたメッセージ
・地域型バイオマスフォーラム第2回 政策提言
閉会挨拶は、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会専務理事の藤江達之氏が行いました。
全国各地域のバイオマス関係者のネットワークを拡げ、地産地消のバイオマスエネルギーの熱利用と地域バイオマス事業化の推進をめざして、地域情報共有や意見交換、事例と知見の集積、世論形成を図るために開催されたフォーラムでしたが、盛況裡に無事終了することが出来ました。
ご出演の皆さま並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
本フォーラムは、緑と水の森林ファンド事業助成金を一部利用して開催いたしました。
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