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9月14日岐阜県立森林文化アカデミー出前講座の報告[2020年09月30日(Wed)]
 NPO法人農都会議 バイオマスアカデミーは、9月14日(月)、岐阜県立森林文化アカデミーへの出前講座を行いました。岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアム木材利用拡大委員会による「木質バイオマスボイラー導入研修会」が9月14日(月)・15日(火)の二日間、岐阜県高山市・郡上市で開催された際に、14日のメインプログラムとして実施されたものです。

岐阜アカデミー出前講座

 木質バイオマスボイラー導入研修会は、「飛騨高山 自家源泉の湯 臥龍の郷(がりゅうのさと)」に30数名の参加者が集まって始まりました。
 最初に、臥龍の郷の宇野弘社長より、「いままでのボイラーは灯油を1日1,000リットル燃やして5.8万円かかり(もっと高い時期もあった)、コストを下げるためにバイオマスボイラーに切り替えた。飛騨地域でとれる木で作ったチップを燃やすので環境に良い。灰は農家へ無料で提供している。非常に良いものを導入したと思っている」とお話がありました。
 続いて、主催のコンソーシアム担当者より研修概要の説明とバイオマスアカデミー出前講座の講師5名の紹介がありました。高山は漆工芸が有名で漆文化のイメージがある、岐阜県は内陸にある森林県、県組織に「林政部」がある希少な県、などのお話もありました。

 その後、「臥龍の郷」の温浴施設に導入されているチップボイラーの見学があり、株式会社WBエナジーの梶山恵司社長より、導入に際してのシミュレーションと設計ボイラーレイアウト、燃料消費量の分析と燃料供給、導入設備機器全体のシステム設計と主要設備機器、稼働分析などの説明がありました。

岐阜アカデミー出前講座

岐阜アカデミー出前講座

 講義に移り、株式会社WBエナジー代表取締役の梶山恵司氏より、「バイオマス熱利用のチャンスと課題本格的な普及拡大のための具体策」のテーマで講演がありました。

岐阜アカデミー出前講座

 梶山氏は、本講座は書籍『実務で使うバイオマス熱利用の理論と実践』をテキストにして行う、自分の説明は書籍の第7章、第8章の部分であるとした上で、「日本にはバイオマス熱利用の膨大なポテンシャルがありバイオマスは地産地消の典型的なエネルギー源、森林・林業の潜在力もあり稼働率を高めることのできる温浴施設が大量に存在する、しかしバイオマス熱利用の実態・バイオマスボイラーの実態を見るとチャンスを活かしきれていない」とお話しされました。
 そして、バイオマス熱利用の現実、普及拡大の前提となる事業性とその前提としての技術、バイオマス固有の技術への理解、バイオマス依存率・稼働率・燃料消費量・動力代、プロジェクト進め方のポイントとボイラー選定・安定稼働などについて説明されました。
 また、事業性に優れ使い勝手の良いバイオマス利用は十分に可能、ベンチマークを作り定着化させることがすべての出発点、国内でもベンチマークとなりうる事例ができてきていると述べられました。

 次に、株式会社森のエネルギー研究所チーフアナライザーの江川広和氏より、「バイオマスボイラーの構造」のテーマで講演がありました。

岐阜アカデミー出前講座

 江川氏は、熱利用書籍の第2章、第3章に関して、バイオマス の燃焼に最適な構造(石油・ガスとバイオマスの燃焼過程の差異)、高効率燃焼(ボイラー効率を高める燃焼技術、O2濃度・排ガス温度による燃焼制御・正しい煙突)、運転 タイプによる分類、燃料条件(燃料水分と出力)、サイロ・搬送機器、蓄熱タンク(バイオマスボイラー制御とタンクの関係)、安全対策(異常昇温、有毒ガス、逆火)などについて説明されました。

 元神鋼リサーチ株式会社代表取締役の黒坂俊雄氏より、書籍の4章、5章、9章、11章に関して、「バイオマスボイラーの選定とエンジニアリング」のテーマで講演がありました。

岐阜アカデミー出前講座

 黒坂氏は、事業の出発点、バイオマスボイラーと石油ボイラーの違いの確認、熱需要分析と設備規模、ボイラーの選定、ボイラー制御、熱供給システムのエンジニアリングなどについて説明されました。
 また、木質バイオマスボイラー熱利用の特徴を良く理解して事業の意義を関係者が納得する、投資回収期間は決して短くないがきちんと設計すれば事業性は確保できる、事業性を確保するためにはランニングコストを計画時から精度良く想定することが重要と述べられました。

 次に農都会議の山本登事務局長より、書籍の6章、10章に関して、「バイオマス熱利用の飛躍的拡大そのための対策 法規制・規制緩和」のテーマで講演がありました。

岐阜アカデミー出前講座

 山本事務局長は、『実務で使うバイオマス熱利用の理論と実践』書籍の発刊などバイオマスアカデミーの活動概要と日本のバイオマス熱利用の問題点と課題を説明しました。
 また、バイオマス熱利用はなぜ飛躍的拡大をしないのか?バイオマスボイラー協会設立を検討、熱FITの導入、その可能性、バイオマス熱利用設備価格の現状、バイオマス燃料コスト比較、バイオマス熱利用法規制と規制緩和、バイオマス熱利用推進のための提案・今後の検討課題・規制緩和などについてもお話ししました。

 最後に農都会議の杉浦英世代表理事より、書籍の12章、13章に関して、「SDGs・地方創生に活かす木質バイオマスエネルギー」のテーマで講演がありました。
 杉浦代表は、地球温暖化・SDGs・地方創生の三つは密接に関係する、地方創生は、人口減少の予想が顕著になってから始まった、分権改革が進めば、人口減少は持続可能な地域づくりのチャンスとなる、地域経済の現状を知り、将来計画を立てよう!(産業連関表とリーサス、未来カルテの違い等)、地域のエネルギー収支を知るなどについて説明しました。
 また、地方創生に活かす木質バイオマスエネルギー、再エネの多面的価値、これからの政策課題、防災減災、レジリエンス、イノベーション(林業イノベーション=スマート林業)、地域おこし協力隊員の卒業後の人生、地域エネルギー・インフラサービス会社(熱機器リース等チャンスあり)などについてもお話ししました。


 二日目は、郡上市の「明宝温泉 湯星館」で薪ボイラー・チップボイラーの見学と、地元NPOによる薪供給の説明がありました。

岐阜アカデミー出前講座

 薪ボイラーはオーストリアKOB社製170kWで、NPOの明宝山里研究会が湯星館に隣接した作業場で燃料の薪作りを行っています。担当者から、郡上市明宝は森林が95%で昔から山の恵みと資源を暮らしに役立ててきた山里、この豊かな恵みを生かして地元を元気にしたいとの想いから森林組合OB等が集まってストーブ用の薪作りを始めた、自分たちで作業場を建てドイツ製薪割り機を導入するなど苦労もしたが今では温泉用に薪を供給している、近くには西日本で一番長いゲレンデのスキー場があり、ハムやトマトケチャップ製造所もある、などのお話がありました。
 チップボイラーはダレスサンドロ社の400kWで、チップヤードは地下に設置されていました。

岐阜アカデミー出前講座

岐阜アカデミー出前講座

 岐阜県は、森林面積の割合が全国2位の79.1%です(県の面積は全国7番目)。高山市へ向かうJR高山本線(岐阜市〜富山市)は美濃加茂市を過ぎたあたりから森の中を渓流沿いに走ります。臥龍温泉から明宝温泉への経路も山々を縫う森の中の道でした。

 研修会を主催された岐阜県並びに県立森林文化アカデミーの皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 10:33 | バイオマスアカデミー | この記事のURL | コメント(0)
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