
2月18日「分散型エネルギー社会の早期実現を」勉強会の報告[2020年02月29日(Sat)]
NPO法人農都会議は、2020年2月18日(火)夕、「分散型エネルギー社会の早期実現を考える 〜地産地消電気・熱の現状とバイオマス活用の課題」勉強会を開催しました。共催は、一般社団法人日本シュタットベルケネットワークでした。
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気候変動により増える自然災害に対し、分散型エネルギー活用が地域のレジリエンス向上に有効と言われています。今回の勉強会は、「分散型エネルギープラットフォーム」について知り、バイオマスを活用した地域のエネルギー強靭化と分散型エネルギー社会実現へのシナリオを一緒に考えようと企画したものです。
会場の港区神明いきいきプラザに60名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。最初に、主催団体のNPO法人農都会議の杉浦英世代表理事より開会挨拶がありました。
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気候変動により増える自然災害に対し、分散型エネルギー活用が地域のレジリエンス向上に有効と言われています。今回の勉強会は、「分散型エネルギープラットフォーム」について知り、バイオマスを活用した地域のエネルギー強靭化と分散型エネルギー社会実現へのシナリオを一緒に考えようと企画したものです。
会場の港区神明いきいきプラザに60名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。最初に、主催団体のNPO法人農都会議の杉浦英世代表理事より開会挨拶がありました。
第1部は4氏による講演でした。一番目に、資源エネルギー庁新エネルギーシステム課課長補佐の佐久間康洋氏より、「分散型エネルギーリソースを活用したエネルギーシステムの構築に向けた取組〜分散型エネルギープラットフォーム等の構築〜」のテーマで講演がありました。
佐久間氏は、エネルギー政策の基本的視座、日本のエネルギーシステムが直面する構造変化、再エネを活用した需給一体型モデル普及への取組などについてお話しされました。また、経済産業省・環境省連携チームの発足と「分散型エネルギープラットフォーム」について、分散型エネルギーシステムを構築する意義と事業化のキーポイントの説明として、台風15号による停電時の分散型エネルギー活用事例及びレジリエンス対策として地域再エネを活用した事例を元に、地域の系統線を活用したエネルギー面的利用システムについてお話しされました。
佐久間氏の説明の概要です。
・資源に乏しい日本においては、安全性(Safety)を大前提として、自給率(EnergySecurity)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の観点から多様なエネルギー源を組み合わせることが必要。
・日本における従来の垂直統合型によるエネルギーシステムは、大きな構造変化『5D』に直面していることから、従来の大規模集中電源の電力システムを脱却し、分散型リソースを安定的・有効的に活用することが求められていく。
・電力の需給構造変化を受け、需給一体型の再エネ活用モデルの一層の普及が、家庭、地域それぞれに求められている。
・地域の再エネをコジェネなど他の分散型エネルギーリソースと組み合わせ、経済的な地域エネルギーシステムとして需給一体的に利用するサービスは、エネルギー供給の強靭化(レジリエンス)や地域内の経済循環の点でも有効であり、普及拡大が期待されている。
・熱は遠隔地への供給には適さないため、エネルギー源の近傍に需要地が必要。電気は自営線、または系統線を活用して広域で可能。より経済性を高めるためには、様々な分散型エネルギーを組合せ「システム」としていかに統合するかが鍵。
・再エネと調整力(コジェネ)を組み合わせたエネルギーの面的利用システムを構築することで、災害時の早期復旧に大きく貢献。千葉県睦沢町では、防災拠点である道の駅を近隣住民に開放し、トイレや温水シャワーを提供、800人以上の住民が利用。
二番目は、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク副理事長の竹林征雄氏とパナソニック産機システムズ株式会社空調マーケティング統括部統括次長の杉原充氏より、「スパホテルあぶくまに於ける自立分散型熱電併給事例」のテーマで講演がありました。
竹林氏は、スパホテルあぶくまの自立分散型熱電併給システム(25kWCHP)の概要を説明されました。
設置目的は、復興支援事業で県が主導し実証機として導入、併せて熱電併給による ホテルへ熱と電気を供給。電力利用は、電力はFIT販売はせずすべてホテルで使用し不足分を購入している。 熱利用は、給湯、床暖房、食堂冷暖房に利用している。
FIT制度利用でも防災、震災の対応が可能。地消地産で自家消費を先ず検討。ミニグリットとして、コンパクトな集落・中心地区で自立分散型熱電併給を用い電気も熱も使い切る。
杉原氏は、木質ガス化熱電併給システムによる分散型の事例として、以下の4点を説明されました。
(1) 吸収式の原理
・吸収式冷凍機(ナチュラルチラー)の冷える仕組み
・廃熱から冷房が可能、冷房は熱伝達で空気を冷やす、冷やすのに必要なのは気化熱
・吸収式冷凍機は水の気化熱を利用した空調システム
・エネルギーは熱や光や電気に変化しても無くならない(熱力学第一法則)
・熱を100%動力に変えることはできない(熱力学第二法則)動力を取り出した後には、必ず廃熱が発生
(2) 吸収式の歴史
(3) 熱をグリッドで利用した地域冷暖房
・地域冷暖房について
・木質バイオマスを使ったスマートスモールタウン
・デンマークでの温水利用(地域暖房の例
(4) オリンピック・パラリンピックでも吸収式
三番目は、シン・エナジー株式会社代表取締役社長の乾正博氏より、「地域エネルギー会社とは? バイオマスとは?」のテーマで講演がありました。
乾氏は、「地域エネルギー会社とは?」について、電力小売自由化により、新電力会社が参入、地域新電力はエネルギーの地産地消を推進するプラットフォーム、地域の発電所で作られた電力を買い取り公共施設など地域に供給することでこれまで地域外の電力会社に払っていた電気料金を地域新電力が回収でき、地域経済の循環を促すことができると説明されました。
また、「バイオマスとは?」について、日本は化石燃料の輸入に約27兆円/年(2014年値)、全国1,724市町村の役9割でエネルギー収支が赤字、世界で森林が減少し、大気中のCO2が増加、広葉樹より針葉樹のほうがCO2吸収量が大きい、成長盛りの若い木がCO2をよく吸収する、小型熱電併給バイオマス発電方式は電気と熱の両方を利用と、お話しされました。
さらに、日本のバイオマス発電は、PKS, パーム油, 輸入木材による計画が90%程度となっているが、燃料は地産地消がサステイナブルの条件だと話され、多くの事例を紹介されました。
第2部は、「分散型エネルギー社会への課題と早期実現策を考える」のテーマでディスカッションが行われました。パネリストは、第1部講師の佐久間氏、竹林氏、杉原氏、乾氏の4氏。モデレーターは、NPO法人農都会議事務局長の山本登氏でした。
ディスカッションでは、司会(モデレーター)の進行に合わせて4氏から次のようなお話がありました。
・司会:10年以上前から言われている熱社会の到来がなかなか近づかない。発電所や熱発生源事業所などの当事者が熱を捨てていることに自覚がない。この辺りに着目して、熱利用を地域の活性化に生かせないか。
・竹林氏:大都市のエネルギー自給率が低い。田舎は木材があり小型ボイラーで直ぐお湯が沸き、山は美味しい空気をつくる。国内に森があっても、海外から輸入する燃料は20兆円となる。石炭火力を止めれば300tのCO2を減らせる。まず、地方でバイオマスをエネルギー源として利用する。
・司会:いろいろな理由があってボイラーや熱インフラの普及が進まないが、分散型エネルギー普及の試作を求める地域や機械メーカーは多い。
・佐久間氏:分散型設備は需要地近くに設置する子が可能で、メリットを生かせば普及すると思う。
・杉原氏:熱いお湯があれば、冷房も何でもできる。
・乾氏:皆さん同じと思うが、社会システムを懸隔するために分散型やバイオマスの活用を考えたい。当社は小型・中型バイオマスや熱利用をしっかりやる。元気な人材を求めている。
・竹林氏:立場は違ってもそれぞれのベネフィットを考えて進めるのが良い。
勉強会の最後に、共催団体の一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク代表理事の村岡元司氏より閉会挨拶がありました。
今回は、分散型エネルギーを活用した需給一体型の新たなモデルについて学び、分散型エネルギーの地域活性化への貢献と防災・減災効果を考えるたいへん有意義な機会になったと思われます。
盛況な勉強会となり、講師の皆さま並びにご出席の皆さまへ感謝いたします。
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