
10月5日「再エネ水素の活用技術」勉強会の報告
[2019年10月08日(Tue)]
NPO法人農都会議はダンタニ・グリーンエナジー・ソリューションズ合同会社と共同で、10月5日(土)午後、「再エネ水素活用で脱炭素社会へ大転換 〜低炭素水素サプライチェーンの構築に向けた技術開発」勉強会を開催しました。
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まだ実証段階と言われる再エネ水素の活用ですが、今回、技術開発の現状と地域での実用化の課題を学ぼうと企画しました(企画立案は遠藤和生運営委員)。会場は港区商工会館で、参加は申込済の方を合わせて約70名でした。
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まだ実証段階と言われる再エネ水素の活用ですが、今回、技術開発の現状と地域での実用化の課題を学ぼうと企画しました(企画立案は遠藤和生運営委員)。会場は港区商工会館で、参加は申込済の方を合わせて約70名でした。
第1部は、講演と質疑応答が行われました。
最初に、東京農工大学名誉教授、日本環境学会元会長の瀬戸昌之氏より、「再生可能エネルギー由来の水素活用技術の現状と課題」のテーマで、講演がありました。
瀬戸氏は、「再エネで生産した電気は、送電ではなく、バッテリーにまたH2 (水素ガス) はボンベなどに、濃縮貯蔵しよう。この電気で家電品を動かし、H2で燃料電池車を動かそう」との趣旨で、電力自由化の意義・施策、「自由化」の陰で、再エネ由来の電気・水素ガス利用の意義、新電力社の自由化からの撤退などについて説明されました。
また、何が再エネ発電を阻んでいるかとして、税のあり方使いかたが不公正、再エネ発電に補てんがない、安価すぎる温対税は火力発電を有利にしている、このような不公正の中で再エネ発電社の経営は成り立たないとお話しされました。
さらに、再エネ発電の電気によるH2を濃縮貯蔵し水素ガススタンドや工場などで使う、送電線を経ると使えるエネルギーが減り売電価格も抑えられるので電気は売電してはいけない、と述べられました。
次に、国立研究開発法人産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)所長代理、日本大学工学部&福島大学客員教授の坂西欣也氏より、「再生可能エネルギーの貯蔵・輸送・利用と脱炭素社会に向けた水素技術」のテーマで、講演がありました。
坂西氏は、福島再生可能エネルギー研究所の全容の紹介に続いて、太陽光・風力等の天候により出力が変動する電源から発生した水素を水素キャリア(常温、常圧で液体)の形で高密度に貯蔵する技術、安定的にさまざまな形で産業・社会に利用する技術等を説明されました。
また、福島県の水素キャリア導入事例、導入制約解消のためのシステム技術開発、商用水素ステーション、利用ロードマップなどについてお話しされました。
さらに、バイオマスエネルギーの必要性、原料特性と変換技術、バイオ水素の利用・燃料電池、水素製造の評価・コスト等比較システム、再生可能&化石エネルギーミックスによる水素利用システムとうについても説明されました。
最後はみやぎ生活協同組合コープ東北サンネット事業連合環境管理室室長の大原英範氏び講演の予定でしたが、急遽、産業技術総合研究所主任研究員の歌川学氏が、「みやぎ生協の再エネ由来水素供給事業の実践報告」のテーマの講演を代わって行いました。
歌川氏は、大原氏の資料のポイントを次のように説明されました。
・みやぎ生協の紹介については、加入と出資金は順調に増加、コープふくしま・福島県南生協と合同。
・原子力発電に関する見解、地球温暖化防止のため脱炭素にむけた事業で2030年CO2排出総量を2013年比で65%以上削減、再エネ発電(風力、木質バイオマス、ソーラー)へ出資・投資、買電、取次売電など再エネ・水素事業に取組んでいる。
・今後の計画案は、年度内に水素(低圧)+SVOコージェネレーション発電機の日本初導入予定、2021年共同購入配送車両に水素(高圧)トラックと水素ステーション導入予定、RE100等予定。
第2部は、質疑応答と「再エネ水素活用による脱炭素社会への大転換を展望する」をテーマに、第1部の講師の皆さまにフロアの参加者を交えてディスカッションが行われました。
モデレーターは、産業技術総合研究所主任研究員の歌川学氏にお願いしました。
歌川氏は、2050年温暖化ガス排出ゼロシナリオを研究しているので、エネルギー全体で考えると、製鉄など産業の高温熱利用と、船の燃料、飛行機の燃料などで再エネ水素が期待されているとして、次の論点の議論を進められました。
(1)電気以外も含む脱炭素社会への水素の位置づけ・役割(再エネ電力の直接利用、再エネ熱の直接利用と、ときには競合、ときには役割分担)
(2)消費側からみたエネルギー消費分野での普及対象(車だけではない)
(3)供給側で再エネ水素の普及(石炭水素や石油・都市ガス改質水素などがある)
今回は、「東北大震災復興支援勉強会」として、東日本大震災を忘れない、風化させない、伝え続けることもテーマの一つでした。質疑応答では、森林除染の話もありました。
農都会議は、3.11以降、ふくしま復興フォーラムをはじめ復興支援の勉強会を重ねてきましたが、今後も活動を続けていきたいと思います。また、台風15号被害支援募金にもご協力いただき、心より感謝申し上げます。
おかげさまで、地域のおける再エネ由来水素社会実現の課題を深く考える有意義な機会を持てました。講師の皆さま並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
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