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10月13日「バイオマス発電燃料の伐採と搬出」勉強会の報告[2015年10月25日(Sun)]
 農都地域部会バイオマス発電事業化促進WGは、10月13日(火)夕、「バイオマス発電燃料の伐採と搬出 〜間伐材など未利用木材の集材方法改善への取組と課題」勉強会を開催しました。
 →イベント案内

10月13日WG勉強会

 バイオマスWGは、昨年7月にバイオマス燃料の伐採・搬出について、木材の搬出の取り組み勉強会を行い、東京製綱の守谷氏等から架線方式による集材の仕組を教えていただき、K-BETSの米谷氏からKシステム(チェーン式集材方法)の特徴について説明していただきました。
 また、集材の現場を知るため、今年4月につくばフィールドワークを行い、つくば林業の松浦氏等から林地に合わせた作業道の入れ方や間伐と造林の考え方、ペレット燃料としての用途などについて、具体的に見学させていただきました。
 9月には、箱根山系列状間伐見学会を行い、Bioフォレステーションの近藤氏から、広大な所有林を伐採する具体的説明や、伐採の補助金があることでバイオマス燃料を集められるが補助金次第という林業の現実があることなど、集材と燃料調達の課題について説明していただきました。

10月13日WG勉強会

 会場の港区神明いきいきプラザに約70名の参加者が集まりました。
 第1部は、二氏による講演と、質疑応答が行われました。まず、東京製綱株式会社鋼索鋼線事業部市場技術部の須藤友明氏より、「架線集材(タワーヤーダ・ウッドライナー)向けロープの開発」のテーマでお話がありました。

 須藤氏の講演の概要です。
・ロープ開発の背景として、林業の生産性向上のため政府が補助金を投入し、林業用機械の導入が進んでいること、現在、タワーヤーダと呼ばれる架線系の集材システムが注目され、海外製が導入されていること、海外製の特殊ロープは純正品だが、入手性に難があることが挙げられる。そこで、ユーザーより国産ロープの供給の要望があり、開発に着手した。
・主な林業用機械として、スイングヤーダ(集材距離70m以内)、タワーヤーダ(集材距離500m以内)、また、架線系の集材システムとしてH型架線(集材距離1000m以内)がある。タワーヤーダ(高さ10m以上)には、3種類のロープを使用。リモコン操作により、支索上を集材用搬器(ウッドライナー)が自走し、集材する。支索の純正品は、海外製の被覆ロープで、JIS規格(破断力等)の1割増しの性能。
・ウッドライナーは、架線集材の盛んな地域(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、高知県、大分県、宮崎県など)で、導入が進んでいる。
・使用後のロープを回収し、損傷状況を調査した。広い範囲で、うねりが見られ、局所的に断線が見られた。
・この結果を踏まえ、開発要求を設定し(曲げやすさ、耐摩耗性、破断力、寿命、錆発生対策)、試作に着手。この結果、純正品と同程度の破断力を有するロープが作製できた、疲労試験の結果、回収品よりも長寿命。
・現在、実機試験向けのロープを製作中であり、ユーザーと実施時期について調整中。

 須藤氏には、参加者から、「試作品の価格はいくら位になるか?」、「海外製との納期やコスト比較はどうか?」などの質問がありました。

 →須藤友明氏の講演資料(PDF)

10月13日WG勉強会

 次に、Bioフォレステーション株式会社 代表取締役社長の近藤亮介氏より、「列状間伐の事例紹介と事業課題」のテーマで、講演が行われました。

 近藤氏の講演の概要です。
・神奈川県で4年前から林業経営を始めた。湯河原に約900haの山林(湯河原町面積の15%)を保有した。
・間伐等の手入れがされておらず、生育の悪い木が目立つ。(戦後造林で、70年手入れせず)本来全伐すべきところだが、「搬出間伐」を始めた。
・一方で、バイオマス発電燃料の供給事業(新エネルギー供給(株)、平成16年6月設立)も行っている。千葉県の市原グリーン電力(バイオマス発電所、出力49,900kW、循環流動層ボイラー+蒸気タービン)に、燃料供給している。発電効率36%、蒸気温度541℃、燃料使用量27万t/年、800t/日(4,000m3、建廃チップ換算)ときわめて効率が良い。
・当初、建廃チップ等で供給していたが、解体廃棄物の発生減見通しから、他の方法を検討していたところFITができ、未利用木材に注目した。
・未利用材の利用については、様々な問題があり、いろいろ勉強・検討した。「森林経営計画制度」の認定も受けた(県内初)。
・「バイオマス材」についてだが、一般的な林業では、枝葉と梢端は、山林内に捨ててくる。これを搬出するのは手間がかかる。林地残材「年間2,000万m3」のほとんどがこれである。バイオマスで狙えるのは、1〜3番玉の低質材(曲がっている、虫が入っているなど)だ。
・A材を搬出するから、バイオマスも搬出される(A材を搬出しなければ、バイオマスも搬出されない)。
・バイオマスを増やすには、A材の用途、消費量を増やす必要がある。林地残材を残さない林業への転換が不可欠。
・全木集材、全木搬出の林業を実現するには、「間伐補助金」ではなく、「林地残材の搬出補助金」へ転換することが必要。架線系と作業道系に留意したきめ細かい施策が求められる。
(近藤氏の提言については、次図を参照)
・林野庁のFIT認定審査が厳しさを増している。FIT申請のヒアリングに県、市町村等が同席して燃料調達が可能かどうかなどの意見を求められるようになり、今後は大規模な木質バイオマス発電所(2MW以上)の開設は難しくなると思う。神奈川県の補助金も厳格な対応を求められるようになった。

 →近藤亮介氏の講演資料(PDF)

10月13日WG勉強会
近藤氏の提言の資料

 休憩を挟んで第2部は、二氏による講演と、質疑・意見交換が行われました。本日の三番目の講師のNPO法人蔵前バイオマスエネルギー技術サポートネットワーク(K-BETS) 副理事長の米谷栄二氏より、「進化するKシステム」についてのお話がありました。

10月13日WG勉強会

 米谷氏の講演の概要です。
・森林・林業と集材方法については問題点が多々ある。
・高性能林業機械の保有台数の推移を見ると、平成25年現在で、タワーヤーダ149台、スイングヤーダ851台で、増加している。在来型林業機械(大型集材機、小型集材機)は減少している。
・Kシステムは、集材木をチェーンに掛ける方式で、設置が簡便、全木の連続集材が可能、連続式で生産性が高い、既存システムより安全等の特徴を有する。
・従来は電動式だったが、油圧式で駆動装置が小型化した。ミニショベルへの搭載で自走可能化、滑車を複数使うことで狭い場所でも設置可能化、駆動部分の改良など、様々な進化が図られた。
・他の集材機(スイングヤーダ、タワーヤーダ)と比較しても、小型ゆえのメリットがある。
・チェーンの特徴をワイヤーと比較してみると、自由に曲がる、収納が楽、取り扱いが安全、連結作業が簡単で確実であり、重い点を補って余りある。
・飯能、湯河原に設置し、いろいろ実験を行ったが、結果は良好である。Kシステムが有効な現場としては、300m以内、特に急斜面の所。500m以上の長距離は、集材機またはタワーヤーダ、20〜150mは木寄せウィンチまたはスイングヤーダなど、状況に応じて組み合わせで使うのがよい。
・今後、バイオマス用に牽引力をアップした機械や、ボランティア用に軽量化した機械を開発し、バイオマス利用の促進、地産地消の林業の促進等を目指していく。

 →米谷栄二氏の講演資料(PDF)

10月13日WG勉強会

 続いて、株式会社つくば林業 代表取締役社長の松浦晃氏から、「搬出間伐の最新事例と今後の見通し」のテーマでお話がありました。

 松浦氏の講演の概要です。
・搬出間伐の最新事例として、茨城県石岡市(平地林)と神奈川相模原市(急斜傾地)の事例を紹介する。
−施業地を比較すると、いずれも搬出間伐車両系で実施、施業面積は、石岡3.62ha、相模原8.58ha(予定)、m3あたり経費は、石岡23,800円、相模原27,500円(予定)となっている。
−生産性(m3/日)は、石岡3.89、相模原5.38(予定)で、補助金無しでもやっていける。森林施業提案書をつくるが、「集約化」がポイントである。作業効率を上げるには事故を起こさないこと。
−収益率は悪いが、生きがい、地域活性化、CO2クレジット、水源確保の観点から取り組んでいく。
・山は一様ではなく、施業方法は、一山、一尾根毎に変わる。機械は高い、賃料が1日2万円もする。人件費は1,5万円以下。架線系と車両系の組み合わせもあり得る。
−山に入って、常識的に考え、一番良い方法をとる(モラル・経験・知識・技術の必要あり)。現在、木材利用の変化(用材から燃料へ)、生活様式の変化(建築材料が安価に)が起きている。
−したがって、今後、一貫した需要供給システムの構築(上流から下流まで)、需要先ニーズに合う材の提供(発電、ペレット、素材ほか)が必要だ。
−石岡では6,000kW級発電所に供給しているが(8万m3、10万t)、PKSも必要になって来るだろう。
・いずれにせよ、搬出間伐の今後の見通しとしては、十分供給できるということだ。ただし、条件があり、できる山とできない山がある。

 →松浦晃氏の講演資料(PDF)

10月13日WG勉強会

 意見交換では、木村WG座長より、林野庁から9月末、平成26年木材需給表が公表され、「木質バイオマス発電施設等においてエネルギー利用された燃料用チップ」が今回から追加計上されたので注目したいと紹介がありました。
 近藤社長から、市原グリーン電力は建設廃材処理のため三井造船に頼んで作ってもらった。20年間の材供給契約を結んでいる、持続可能なバイオマス社会を作っていくために一緒に頑張りたい、環境税の導入などの政策課題は世論の後押しが必要、などのお話がありました。
 最後に、WGアドバイザーの竹林征雄氏より、「森林の蓄積量は十分にある。エネルギー利用だけでなく、マテリアル利用も考えたい。“林材を科学する”、“森林を経営する”、“産業化する”ことを考える必要がある」と、コメントがありました。

10月13日WG勉強会

 アンケートへ多数の参加者から回答をいただきました。以下、抜粋して記します。
 須藤氏の講演については、「メーカーとして懸命に努力しておられると感じた。架線集材には大きな限界があるが、一番の障害は人材がどんどん減少しており、抜本的な育成策を取らなければ絶望的になると思う」、「ワイヤーは消耗品なので、強度や耐久性の向上はありがたいこと」、「ロープ強度だけでなく滑車(シーブ)の改善も必要。東京製綱でタワーヤーダ用シーブの開発も考えてほしい。少し柔らかい材質であってもシーブを交換する方が安くて良いのではないか?」、「ウッドライナーの国産化が必要か。ラジキャリーの大型高能力化かも。ワイヤーに無理をさせない同機能製品が欲しい」、「ぜひとも競争力のある価格で市場を活性化してもらいたい」などの意見がありました。

 近藤氏の講演については、「非常にわかりやすかった。バイオマス発電関係者全員に聞いてもらいたい」、「林業の視点からのバイオマスの位置付けがよく理解できた」、「バイオマス燃料が発電所に集まらない背景がわかり大変参考になりました」、「木材生産のためのマンパワーがないので、バイオマス用の素材は製紙用との取り合いになる。海外から安いものが入ると思う」、「政策と実態のミスマッチがよく分かった。また、行政の縦割りの無駄もありそう」、「現場の本当の話をわかり易く説明されて大変に有益。千葉県で森林環境税必要」、「補助金ありきでは持続しないので、A・B材の事業拡大、熱利用などのサポートが不可欠と感じる」などの意見がありました。

 米谷氏の講演については、「チェーンを使うことはおもしろい」、「最新の機器ではなく従来品の組合せで工夫している点は興味深い」、「従来架線のデメリットを突いた面白いシステムと思う。実用化に向けた課題はどのようなものがあるでしょうか?」、「高価な林業機械を導入できない事業体も多いと思うので、廉価で小回りの利く機械の提案は現場サイドにはありがたい」、「小規模事業体向けに需要があると思う」、「フィールド実証を積み重ねてKシステムの有効性が証明されることを期待したい」などの感想がありました。

 松浦氏の講演については、「m2当たりの経費が高くていいです」、「『技術があればコストを下げられる』、『足りない部分は行政が補てんする』というお話はその通りと思った。森林ビジネスの捉え方も腑に落ちました」、「林業のプロの話を聞けて有意義だった。松浦氏のような実業家が、今後求められる林業家像かも」、「作業道の作り方や山主さんへの配慮など、素晴らしい林業事業体でありながら現状を厳しく分析されていて、問題の深刻さが窺いしれた」などの感想がありました。

 バイオマス燃料調達・林業の課題については、「日本の森林生長量の大半を利用可能にする政策提言案を! 500kW以下バイオマス発電の固定買取50円/kWhの実現を!」、「林業再生をFITを使ってやるという覚悟が必要。地域バイオマス発電は手段であって、林業再生が目的ということを行政は考え直す必要がある。FITは国内資源を優遇すべき」、「バイオマス発電はFITと関係づけるべきではない。20年間の燃料確保は現実的に難しい。もう少しニーズのあるところで考えるべき」、「小型バイオマス発電事業を考えており、林業との連携が重要と考えている」などの提案がありました。

 今後取り上げてほしいテーマについては、「行政主導で動かそうとしている自治体が多いと感じる、自治体向けの勉強会を開催されたら如何でしょうか?」、「木材需要と林業事業体の負担のバランスが取れていない。今更ながらだが、行政の取り組みも知りたい」、「AB材需要の確保をテーマにしていただきたい」、「150kW以下のガス化バイオマス発電の事例の講演を聞きたい」などの要望がありました。

10月13日WG勉強会

 今回も定員超えの盛況な勉強会となりました。木質バイオマス発電に不可欠な燃料の調達について理解が進むとともに、課題の解決法を考える有意義な機会になったと思います。
 講師の皆様、ご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 08:13 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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