貧困が子供に与える2つの悪影響次のグラフは、子供がいる世帯のうち、ひとり親世帯とそれ以外の世帯の相対的貧困率を表しています。

参考:厚生労働省(2014)「平成25年国民生活基礎調査の概況」
近年、大人が2人以上いる世帯の相対的貧困率が12%以上を示す傾向にあり、ひとり親世帯に至っては常に50%を超えています。これは、ひとり親世帯の半分以上が経済的に厳しい層であることを表しているとともに、この27年間、画期的な解決策を見つけることができなかったことも意味しているので、極めて難しい問題であることがよくわかります。
ある子供の貧困に関するフォーラムに参加した際、私は、基調講演のなかで貧困層の子供の悪影響について語られた2点のことが印象に残っています。1点は、低所得者層の子供は孤立感を感じやすいということです。その理由は、特にひとり親世帯がそうですが、夜遅くまで親が仕事をしているため、家族と過ごす時間が限られてしまうことにあるそうです。
また、スポーツ等のお金のかかる習い事にも行けず、友達を形成する機会も少ないことも理由に挙げられます。特に、年齢が高くなるにつれて、平日の放課後にひとりで過ごす子供の割合が低所得者層では高くなる傾向にあるそうです。
もう1点は、低所得者層の子供は、高所得者層の子供と比べて自己肯定感が低い傾向にあって、自分に自信が持てない子供が多いということです。親から、「お金がないから大学へ行かせられない」とか、「あなたはできる子ではない」と聞いて育てられたり、友達が持っているものを自分が持てなかったりすることに対して、子供は自分には価値がないと思い込んでしまい、自己否定に走りがちになるとのことでした。その親もまた低所得者層世帯の中で育っていて、いま述べたような育て方をされていたとしたら、まさに負の連鎖になってしまいます。

孤立感を感じている子供、自分に自信がない子供が増えています
B&G海洋センターができることとは?では、低所得者層の子供に対して、どのようなことが解決方法として考えられるでしょうか。単純に考えれば、子供がいる低所得者層世帯のサポートをしっかり行って生活を安定させれば、親子の間に時間的な余裕も生まれて孤立感を減らすことができるでしょうし、安定した生活のなかで子供の学力が向上すれば、自信が芽生えて自己肯定感を高めることができると思います。
このような施策は国や地方自治体が担うべきものであり、全国各地の海洋センターが率先して行うような仕事ではありませんが、今年度からB&G財団では、新たな試みとして海洋センターを地域コミュニティの拠点施設として活用していく事業を展開しています。地域の高齢者、大人、子供達が交われるコミュニティの場として海洋センターが機能していけば、子供の孤立感を和らげることにつながるのではないかと思います。
類似施策として、すでに児童館や放課後子供クラブ等がありますが、その多くは小学校の児童までが対象のように思います(あくまでも自分自身のイメージですが…)。ですから、海洋センターでは、さらに中学生や高校生にも利用の間口を広げ、より多くの子供達の安心できる居場所として機能することができればいいなと思います。
また、海洋センターは、海洋性レクリエーションをはじめとした自然体験活動ができることが強みです。自然体験通して得る様々な達成感は、自己肯定感を高めることにつながります。

自然体験活動では、仲間同士で助け合うことによって孤立感が解消されていきます
子供の貧困は地域で考えたい日本財団では、子供の貧困化に関する経済的影響の推計を試算し、結果を12月3日に公表しています。それによると、現在貧困に陥っている15歳の子供達が、貧困のまま大人になったとしたら経済損失は約2.9兆円に達し、政府の財政負担は1.1兆円増加するとのことでした。
このように、貧困は子供の内面に深刻な影を落としながら、経済や財政の面でも大きな問題を引き起こします。ですから、一刻も早く私たちは何らかの手を打っていかねばなりませが、子供の貧困化はその家族の問題として捉えて解決することは難しく、地域が一体となって取り組んでいくことが望ましい姿であると思います。その一端を、海洋センターが担うことができればうれしいかぎりです。

海洋センターは、運動施設のみならず地域コミュニティの拠点としても変えていきたい!
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