ひと知恵絞って植樹地を整備!〜熊本県長洲町植樹祭・レベルアップ研修会〜 [2015年12月10日(Thu)]
B&G財団 事業部 海洋センター・クラブ課 三浦 大育(長野県上松町 自治体派遣研修生) 2015年11月28日(土)開催のB&G「海を守る植樹教育事業」長洲町植樹祭(熊本県長洲町・同町教育委員会 主催)に合わせ、共催者のB&G財団では11月26日(木)から植樹祭当日の28日(土)まで、3日間にわたってB&G植樹リーダー・レベルアップ研修会を実施(最終日は植樹祭の実践)。植樹を行う地元長洲町の関係者をはじめとする15名の参加者が、公益財団法人地球環境戦略研究機関 国際生態学センター 林 寿則先生の指導を受けながら、宮脇方式による植樹地の基盤整備作業や植樹方法等を学びました。 長洲町4名、長洲町B&G海洋センター指定管理者(株)サンアメニティ2名、熊本県玉名市4名、福岡県築上町1名、B&G財団4名の計15名が植樹の研修に励みました |
宮脇方式の植樹方法 ポイント@
『植樹をする場所は畑のようにほっこらと』ですが…… 宮脇方式の植樹で重要なのが基盤整備です。苗木の根腐れを防ぐために土壌を耕します。 長洲町植樹祭の会場の土質は粘土状で、とても水はけが良いとは言えません。そこで考えたのが、水が流れる側溝づくり。スコップを使って、基盤整備した土壌に水が溜まらないように側溝を数カ所作りました。粘土状の土質なので、スコップを入れるにも一苦労しましたが、みんなで協力して見事に完成しました。 植える苗木が腐ってしまっては、本末転倒です。 スコップを上手く使って約20センチ幅の手作りの側溝を作ります。 知恵を使って問題を解決することも、基盤整備作業の楽しみの1つです 宮脇方式の植樹方法 ポイントA 『わらのマルチングには竹杭を使います』が…… 宮脇方式では、乾燥したり雑草が生えたりしないように、苗木を植えた場所にわらを敷きます。その際、わらが風に飛ばされないように、周囲に打った竹杭を介して縄でわらを押さえていきます。今回は竹杭の代わりに「木杭」を使いましたが、これも地元で調達できる自然物を上手に使う知恵の1つとして感心しました。 木杭を等間隔で打ち付け、わらを敷いたその上に縄をジグザグに這わせてわらの飛散を防止します。自然界にある物は、やがて腐って苗木の肥料となります。1つとして無駄なものはありません。 植樹祭の前に実践トレーニング 百聞は一見にしかず! まずは自分で行動する、やってみることが大事です。今回の研修には、今年5月に開催した「B&G植樹リーダー研修」の受講者2名も参加しました。熊本県玉名市の明石さんと福岡県築上町の速水さんです。5月の研修で学んだことを今回の植樹祭で実践し、その経験を地元で開催する今後の植樹事業に活かしたいそうです。 手前左から、福岡県築上町の速水さん。その隣が、熊本県玉名市 明石さん。 2人とも1つ1つの作業を丁寧に確認していました 植樹リーダー2名にインタビュー ■今回の研修で特に学んでおきたいものはなんですか? 明石さん:2週間ぐらい前に地元の子供達に声をかけ、海洋センターの前にある公園でどんぐり拾いを行いました。順調にどんぐりが育てば、2年後に植樹をしたいと考えているので、今回は子供達が植樹をする際の行動の様子や植樹祭を開催する上での全体の流れを把握しておきたいです。 速水さん:今年5月にB&G植樹リーダー研修を受講し、地元でどんぐり拾いを行いました。ですから私も2年後の植樹に向け、宮脇方式で重要な基盤整備を学びたいと思います。植樹する場所によって整備方法が異なると思うので、そのあたりを特に確認しておきたいです。 林先生へのインタビュー 〜「B&G海を守る植樹教育事業」に関する、これまでの成果と今後への期待〜 ■宮脇方式による「B&G海を守る植樹教育事業」は今年で4年目を迎えました。これまでの成果や植樹事業を実施した地域への期待、課題などについて教えてください。 林先生:植樹事業は、すぐに成果が出るものではありません。植えた後、どのようにつなげていくかが課題です。少なくとも、子供達が土や木に触れることで、自分達の生まれた故郷を大事に思ってもらえたらいいなと思います。 また、社員やその家族が中心になって行う一般企業の植樹事業とは異なり、B&G財団では植樹事業に必要な指導スタッフ(植樹リーダー)を育てる研修を行い、チームワークを大事にしながら子供達が中心になって行う植樹を心掛けています。そこが他の植樹事業とは異なる特徴だと感じています。 ただし、植樹をしただけでは意味がありません。津野町のように、子供達が苗木を植えた後に木の太さや長さなどを観察して、その成長を感じるなどの機会を作ってほしいものです。 加えて、植樹事業をきっかけに、地域の昔と今を海や川を絡ませながら風景写真で比較するなどして、地域の変わり具合を感じてもらえたらいいですね。「温故知新」という言葉があるように、昔の人の良い知恵は学び守り、そして新しい地域の良さも同時に築いてほしいと思います。 「植物は足がないため、1度植えた場所からは移動できません。それを頭に入れてほしい」 と説明する林先生 苗木の周りに敷くわらを運ぶ作業。 植樹祭のとき、参加者がすぐに取りに行けるように何カ所か設けておきます。 1回の植樹祭で使うわらの量が、とても多いことに驚きました 【スタッフの感想】 「植樹事業は、すぐに成果が出るものではありません。植えた後、どのようにつなげていくかが課題です」と語った林先生の言葉が印象的でした。「植樹」は子供達や住民が同じ目的を持って協働して取組めるきっかけづくりにすぎません。「植樹」を通して、子供達がやがて大きく成長し故郷を大切に思う気持ちを忘れないためにも、今回の研修会や植樹祭に参加された長洲町の方々には、今後、さらに地域色を出した子育てや教育事業に取組んでいただきたいと思います。 翌日、植樹祭を行いました。当日の様子はこちらから |