なりふり構わない「障害者アスリート 競技種目の転向促進」は吉か凶か [2015年10月09日(Fri)]
こうほう雑記帳
なりふり構わない「障害者アスリート 競技種目の転向促進」は吉か凶か 〜 パラリンピック競技「トライアウト」開催(11/3 東京) 〜 B&G財団 広報課 持田雅誠 各紙「TPP大筋合意」「名張毒ぶどう酒事件」が並ぶ10月5日(月)の新聞1面、読売新聞だけが報じた記事に目を引かれました。 「パラリンピック メダル量産へ 有望選手を重点強化 予算均等配分を転換」 “政府は2020年東京パラリンピックに向け、メダル獲得の可能性が高い選手を対象に、遠征費用などの予算を来年度から重点配分する方針を固め、メダルラッシュにつなげたい考え”というもの。 ●YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151005-OYT1T50007.html 無料記事では上記までしか読むことはできませんが、紙面では、“日本パラリンピック委員会は東京大会で「金メダル22個」(ロンドン大会5個の4倍以上)を目標に掲げている”と続きます。 重点配分は合理的だし、自国開催で目標を高く掲げるのは当然のこと。 気になったのは次の部分。 “トップ選手の体格や身体能力に合わせ、活躍の可能性がある別の競技への「転向」も促す。” ほほぅ。 |
早速検索してみたところ、こういうものが出てきました。
平成27年度日本パラリンピック委員会選手発掘事業 “狙えパラリンピック!トライアウト2015”「競技転向・新たな挑戦」 ●リンク http://www.jsad.or.jp/paralympic/tryout/index.html ※「参加申込みに当たっては、実施競技団体が示す「参加対象者・資格等一覧」に記載された事項をご確認の上、お申込みください。(記載内容が当てはまらない場合は、参加をお断りする場合がありますので予めご了承ください)」とのこと。 参加資格(PDF)を見ると、競技団体が求める基準やスポーツ歴など、詳しい一覧表になっていました。要は、対象外お断りということですね。 前回1964年の東京五輪でも、層が厚い競技の、代表に届かない選手たちがマイナー競技に転向し(させられ?)、オリンピアンとなった話は枚挙に暇がありません。 しかし、それから半世紀が過ぎ、さらにオリンピック・パラリンピック決定(2013年の9月7日)から2年過ぎた「今」になってやる、と・・・。 (昨年度、同じものが開催されたかは検索できませんでした)。 オリンピックを国威発揚の手段とする国々では、体格、身体能力、筋肉の性質など検査の上で、最適な競技種目の育成システムへ乗せられた、っていうのは聞いたことがあります。 (話がホントかどうかはともかく、確かに70・80年代の東ドイツは、経済規模・人口の割にとてつもないスポーツ強国でした ※1949年から1990年の間、ドイツは西ドイツ・東ドイツの2国に分かれていました) 経験の長い短いではなく 愛着が強い弱いでもなく ただ、強い者が勝つ。順位がつく。 それ、競技だから当たり前。 明日から始めて、東京大会へ出たって何の問題もない。 でも、パラリンピックの目的ってなんだったんだろう? 障害者の社会参加を促進? スポーツを共通のコアとして、障害者・健常者の区別がない意識の醸成? 少なくとも、パラリンピックの開催自体が目的ではなく、その後も継続して、障害者スポーツが日本の社会に根付くことが求められると思います。 (写真は記事内容と無関係です) 「東京大会のパラリンピアン」というニンジンで競技種目を転向した選手であっても、その後は該当競技の「星」として活動していってくれる!活躍してくれ!というのが、関係者の期待するところでしょう。 トライアウトでスター候補が見つかり、競技種目を転向してパラリンピックで大活躍、その後も競技の広告塔として末長く活動し・・・と展開していけば理想です。(当たるも八卦当たらぬも八卦) 一方で、大会後の景気の落ち込みも懸念されています。 高い目標、巨額の強化費計上、しかし2020年の後は何も保証されていない。 恵まれた環境や強化費ありきで転向した選手は、支援がおぼつかなく(「金」ですな)なっても、続けていってくれるものでしょうか?それも定かではありません。 愛好者のすそ野を広げる、社会からの理解を深めるといった、いわば地道な方法ではなく、一見特効薬にも見える、しかし近視眼的な取り組みは、将来吉と出るのか、凶と出るのか。 「パラリンピック大会」という打ち上げ花火を上げて終わり、ではなく、かけたお金がその後、より良い日本社会を創造するための投資になるよう、考えなければならないのではないでしょうか。 (写真は記事内容と無関係です) |