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昆布日本一のまち・函館で、昆布に一番詳しい小学生になろう 「子ども海そうアカデミー 目指せ!コンブの博士ちゃん」を開催しました! [2023年09月06日(Wed)]
⼀般社団法⼈ Blue Commons Japanは、2023年9月3日に、子どもたちが海について学び、海の未来を考えることを目的に、「子ども海そうアカデミー 目指せ!コンブの博士ちゃん」を開催いたしました。当日は、専門家による昆布についての講義、生の昆布に触る体験などを行い、ホテルのシェフが作った特製ランチで海藻料理を味わいました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して⼈と⼈とがつながる“⽇本財団「海と⽇本プロジェクト」”の⼀環として実施されました。

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【スタッフによる昆布概論】

1日かけて昆布について学び、「コンブの博士ちゃん」を目指そうという今回の講座。最初に、前回からの宿題としていた「スーパーや自宅の台所で見つけた海藻」と「前回の講座から今日までの間に食べた、海藻が入った料理」を子どもたちに発表してもらいました。「見つけた海藻」としては、食卓でも身近なワカメや昆布、ヒジキ、モズク、メカブなどの名前が挙がりました。
「海藻が入った料理」としては、ワカメの味噌汁、海藻サラダ、ヒジキの炒め物、ところてんなど、バラエティに富んだ料理名が次々に飛び出しました。

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続いて当法人スタッフの佐々木康弘が、今回の講座のテーマである昆布の「意外と知らない豆知識」を紹介しました。海藻は日本近海だけで2000種類以上あると言われていること、その中で食用にされているものはごくわずかで、昆布はその代表格であること、函館は昆布の生産量日本一(※)であることなどを子どもたちに伝えました。さらに、北海道の昆布は1200年前の奈良時代から朝廷に献上されていたこと、江戸時代には北前船で本州に送られ、特に北陸地方と京都・大阪の人々がだし用・食用として好んでいた歴史などを説明しました。北海道でとれるだし用昆布は、産地とその特徴によって「真昆布・利尻昆布・羅臼昆布・日高昆布」の4種類に分かれていることにも触れました。子どもたちは、メモを取ったり講師からのクイズに答えたりしながら、興味深そうに耳を傾けていました。
(※)北海道水産統計(2021年実績)より

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【函館朝市ミニ水族館で昆布が育つ様子を学び、老舗昆布店で豊富な昆布製品を見学】

函館が昆布生産量日本一であることを学んだ子どもたち。しかし、実はそのうち天然昆布はごくわずかで、総生産量の9割以上を占める養殖昆布が函館の昆布産業を支えています。そこで、昆布の養殖を身近に感じてもらうため、当法人が函館朝市「えきに市場」内に開設している「函館朝市ミニ水族館」に移動し、「種苗を植え付けたロープを海中に沈める」という昆布養殖をミニサイズで再現した水槽を見学しました。昆布といえば岩に生えているイメージを持っていた子どもたちにとって、ロープから昆布が伸びている光景は驚きだった様子。真横からも上からも水槽をのぞき込み、細部まで観察していました。

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続いて、函館朝市ミニ水族館の水槽のすぐ隣にある老舗「梶原昆布店」を訪問。函館産の真昆布を筆頭に4種類のだし用昆布が店頭に並んでいること、昆布がさまざまな加工品に形を変えて販売されていることを確認し、昆布が幅広い用途で活用されていることを実感しました。

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【昆布に触れて感触を確かめ、函館が昆布生産量日本一である理由を知る】
 
函館朝市での昆布のミニ養殖と老舗昆布店の見学を終えた子どもたち。今度は、海の中での昆布の姿をリアルに感じてもらうため、昆布の収穫期に採集して冷凍保存していた生の真昆布とガゴメ昆布を触ってみる「昆布のタッチプール」を体験しました。真昆布のずっしりした重さと厚み、表面のつるつるした感触と、ガゴメ昆布のねばねばした表面の感触を両手で触って確かめた子どもたち。ガゴメ昆布のねばねば成分をスライムのように伸ばして楽しむ子や、「肌に良い成分が含まれている」と聞いて手の甲や腕に塗り始める子もいました。

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続いて、海藻の有効活用や産業化を推進する産学官連携団体「海藻活用研究会」事務局長の布村重樹さんが登壇。函館近海は千島列島沿いに南下する寒流(親潮)と日本海側を流れる暖流(対馬海流)とがぶつかり合う栄養豊富な海域であり、昔から昆布が良く育つことや、魚の繁殖にも適していることなどを紹介しました。さらに、函館の昆布産業を支える養殖昆布の漁と加工の様子や、函館産の真昆布が大手外食チェーンでも活用されていることなどについて、動画を交えながら子どもたちに話していただきました。

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【昆布尽くしのスペシャルランチで昆布のうまみと多彩な活用法に触れる】

この日のお昼ごはんは、函館国際ホテルの総料理長を務める木村史能シェフがこの講座のために特別に考案し、すべて自ら調理した「海藻スペシャルランチボックス」。駒ケ岳ポークの真昆布入り特製酢豚、海老と真昆布のチリソース、真昆布とたまふくら大豆の炊き込みご飯、函館産ガゴメ昆布入り中華スープなど、ほぼすべての料理に真昆布またはガゴメ昆布を使った全10品目の豪華なお弁当を作っていただきました。

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それぞれの料理に昆布がどのように使われているかを木村シェフにお話ししていただいてから、みんなで「いただきます!」とあいさつ。本格的な中国料理を楽しみながら、昆布の多彩な利用法を実感しました。

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あまりのおいしさに箸が止まらず、当初は静寂に包まれた教室。やがて、「おいしいおいしい」「昆布のスープお代わりしたい」など、喜びの声が子どもたちから上がりました。


【函館真昆布について「伝えたいこと」をキャッチコピーと絵でポスターに】

見て、聞いて、触って、においをかぎ、舌で味わい、五感を活用して昆布について学んだ子どもたち。講座の締めくくりは、函館特産の真昆布をPRするポスター作り。函館の観光ポスターや函館市電のラッピング車両、商品パッケージなど幅広い分野で活躍するグラフィックデザイナーの岡田暁さんが講師を務めました。
最初に「今日、函館真昆布について見聞きしたことの中で、誰かに伝えるとしたら何を伝えたいか、思いつくかぎり書き出してみよう」と呼び掛け、「その中で一番伝えたいこと」を子供たち自身に選ばせた岡田さん。続いて、その「伝えたいこと=ポスターのコンセプト」を表現するキャッチコピーと、それをどんな絵で表現するかを岡田さんが子どもたち1人1人と相談しながら決めました。

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コンセプトとその具体的な表現方法をしっかり決めたおかげで、実際に手を動かし始めると迷いなく描いていく子どもたち。函館近海に昆布が密集している北海道地図に「函館は昆布収穫量日本一」の文字、キラキラ輝く手の甲と昆布のねばりを表現した絵に「このネバネバはスベスベのもと」の文字など、さまざまな角度から函館の真昆布を紹介するポスターの原画がそろいました。

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子どもたちが描いたイラストは、岡田さんが文字や背景などを足したり調整したりしてポスターに仕上げ、函館市主催の「函館真昆布展」(11月に函館蔦屋書店で開催予定)で展示します。

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はこだて海の教室
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海洋体験は磯観察やビーチコーミングだけじゃない!専門家に学ぶ『児童教育×海釣りの可能性』を開催しました! [2023年09月06日(Wed)]
一般社団法人Blue Commons Japanは8月29日(火)、放課後児童クラブ・放課後等デイサービスの指導員など児童教育に携わる方々を対象に、児童向け余暇(レジャー)活動の事例を紹介する講座「専門家に学ぶ『児童教育×海釣りの可能性』」を開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

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【「専門家に学ぶ『児童教育× 海釣りの可能性』」企画の背景】

これまで当法人は、小学生を主対象とした講座を開き、さまざまな切り口から海に親しむ機会を提供してきましたが、今年度は対象を中高生にも広げ、函館エリアにおける「人と海との接点」を広げることに努めています。その一方で、学校や放課後児童クラブ・放課後等デイサービスなど児童教育の現場において、実践的な海洋教育を行う機会が限られているとの現状も見聞きしてきました。理由の一つとして、函館は三方を海に囲まれているにも関わらず、小さな海水浴場が1カ所あるのみで、安全に海に親しめる場所が非常に限られていることが挙げられます。

そこで今回は、子どもたちの安全を確保しながらできる海洋体験の事例紹介やその効果を学ぶとともに、海に入らずにできる海洋体験の例として釣りを体験し、児童と海をつなぐ人を増やすきっかけ作りの場とするとともに、ゆくゆくは各教育現場でその成果を活用してもらうことを目標に掲げました。


【海について多面的に学べる「釣り」は児童向け海洋教育に最適】 

今回の参加者は、放課後児童クラブ・放課後等デイサービスの指導員などとして日常的に子どもたちと接している方が大半。実践的な海洋教育・海洋体験の事例について知るため、磯の観察会や海に関するワークショップなどを数多く開催しているNPO法人ディスカバーブルー(神奈川県二宮町)代表理事の水井涼太さんから、オンラインでお話を聞きました。

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同法人が取り組んでいる海洋体験の事例として、磯観察やプランクトンの観察、ビーチコーミングなどを紹介し、さらに「磯の生き物観察をした後に、磯の生物多様性が高い理由を話す」「砂浜と磯の両方を観察し、環境によって生き物の種類や数が違うことを知る」など、海洋体験の学びを深める手法を説明した水井さん。何度も函館の海を訪ねた経験を踏まえて「函館には海について学べるコンテンツが多く、水産・観光・造船などさまざまな切り口がある」「海辺と市街地が近く、歴史に裏打ちされた海洋都市としてのアイデンティティーがある」「海洋環境に多様性がある」と話し、函館が海洋教育に適したまちであることを強調しました。

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児童教育としての海釣りについては「海の中を想像し、糸を通して海の中をのぞきこむことができるうえに、体験としての魅力がある。さらに、釣った魚を食べることを通して『海と暮らしの結びつき』を実感し、海の生態系への理解も深めることができる」と説明。さまざまな側面から海についての理解を深めることができる「海釣り」は、優良な海洋教育プログラムになりえることを指摘しました。


【海が直面する課題について考えるために、海をしっかり楽しむ】

続いて、釣り具のテスターを務めるほか、地元ケーブルテレビNCVの釣り番組「釣りバカZ」に出演するなど、釣り普及のために幅広く活動するフィッシングアドバイザーの鈴木遊介さんが登壇。当法人スタッフとのクロストーク形式で、釣りについての基礎知識や心構えなどを参加者に伝えました。

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「釣りをする時は、まず楽しんでほしい。思いっ切り楽しんだら、海のいろいろな問題について自然に興味を持てるはず」と鈴木さん。「釣れている時に釣りをやめるのは難しいが、たくさん釣れたからと言って食べきれないほど持ち帰ったら、命を粗末に扱うことになるし、魚が減っていずれは釣れなくなってしまう」とも話し、食べきれる分だけ釣って持ち帰る「おかず釣り」をしようと呼び掛けました。


【函館湾の岸壁でサビキ釣りに挑戦!意外な魚との出会いが待っていた】

いよいよ待ちに待った海釣りの時間。会場すぐ前の岸壁へ徒歩で移動し、まずは鈴木さんから仕掛けの付け方などの説明を聞きます。釣り初心者も多く、糸の通し方やリールの扱い方に戸惑う場面もありましたが、鈴木さんやスタッフのサポートを受けながら参加者自身で釣り竿と仕掛けをセッティング。準備ができた人から、次々に海へ釣り糸を垂れました。

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この日は、函館湾を回遊しているイワシやサバをねらってサビキ釣りに挑戦。当初は全く当たりがありませんでしたが、しばらくするとコマセ(撒き餌)の効果で岸壁から魚の姿がはっきりと見えるように。イワシと思われる小型の魚が釣り針のすぐそばを泳ぎ、コマセを食べている様子も見えました。

そんな中、岸壁に響き渡る「釣れたー!」との声。リールを巻いて海面から姿を現したのは、ぷっくりとした体長15センチほどのフグ。透明のケースに入れてみんなで観察し、普段遠い存在のように感じていたフグが身近な海にも生息していることを実感しました。

その後もわずかに当たりが来ましたが、釣れたのはいずれもフグ。参加者は自然を相手にする釣りの厳しさと、すぐそこに見える魚たちと竿と糸で対話する楽しさに触れ、笑顔で釣り体験を締めくくりました。

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【参加者からの声】

「単に釣りを楽しむだけでなく、未来につなげる環境保全を続けていく大切さを学んだ」
「実際に海に行くだけでなく、海に関連する事業などからアプローチする海洋教育にも可能性があると感じた」
「身近な場所で学べることはまだまだたくさんあり、海で泳ぐ以外にも子どもと一緒に楽しめることは多いのだと感じた」
「教育者側も、海洋教育が重要であるとの認識はありつつも、どう教えて良いか、情報をどう得たらよいかなどに困っているのが現状なのだと知った」
「児童に海洋体験をするときにライフジャケットなどをそろえられないので、貸出しなどがあると良いと思った」


【協賛について】                                 

今回の「専門家に学ぶ『児童教育×海釣りの可能性』」をはじめ、当法人が主催する「釣り」を取り入れた海洋教育体験プログラムに対し、世界的な釣具ブランド「DAIWA」を事業展開するグローブライド株式会社より、釣具やライフジャケット、児童を対象とした海洋体験の参考書籍などの協賛をいただきました。

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ライフジャケットの着用を実演する当法人スタッフ

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はこだて海の教室
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