一般社団法人 Blue Commons Japan は、2024年12月15日〜2025年2月16日の期間に、中高生を対象とした体験講座 「はこだて海の教室」 を開催しました。本講座は、海について学び、海の未来を考えること を目的とした全4回の連続プログラムです。参加者たちは、海藻に関する座学や昆布種苗の観察 を通じて、海の生態系や環境について理解を深めました。また、海藻を活用したものづくり にも挑戦し、地域の海が持つ多様な魅力を体験しました。
本イベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐことを目的とした 日本財団「海と日本プロジェクト」 の一環として実施されました。
【第1回:安井先生による講義「いろいろ知ろう!コンブの生態や活用法」】
連続講座の第1回目では、北海道大学名誉教授の 安井肇先生 をお招きし、「いろいろ知ろう!コンブの生態や活用法」と題した講義が行われました。
講義では、北海道各地で採れる昆布の種類や違い、それぞれの特性や活用方法について詳しく解説されました。特に、函館近海で採れる 「真昆布」 や 「ガゴメ昆布」 については、養殖技術の高さを活かした多様な活用法が紹介されました。
安井先生は、「昆布は旨味が抜群で、健康に良い成分も豊富に含まれている。北海道で採れる昆布にはそれぞれ個性があるので、ぜひ興味を持ってほしい」と語り、参加者たちは熱心に耳を傾けていました。

その後、実際の昆布種苗の観察 を行いました。参加者からは、「こんなに小さな昆布の種苗が、最終的に5メートルを超えるサイズに成長するなんて信じられない!」といった驚きの声が上がっていました。

【特別ランチメニューの「海藻ランチ」】
昼食には、函館国際ホテルの木村史能 総料理長 による特別メニュー 「海藻ランチ」 が提供されました。この日のために、木村総料理長が腕によりをかけ、道南産の海藻をふんだんに使用した特別なメニュー を用意してくださいました。料理には、真昆布やガゴメ昆布 はもちろん、講義にも登場した 細目昆布、アカモク、青海苔 など、多彩な海藻が使用されており、それぞれ異なる調理法で楽しめる内容となっていました。
参加者からは、
「どの料理も本当に美味しい!」「海藻ごとに食感が違って、とても楽しい!」
といった感想が寄せられ、海藻の新たな魅力を発見する機会となりました。

参加者からも、以下のような感想が聞かれました。
これまで昆布や海藻について深く考えたことがなかったので、その魅力を知る良い機会になりました。講義を聞いて、昆布や海藻には私たちが知らないさまざまな可能性があることを学び、もっと多くの人に発信したいと感じました。
お弁当は本当にどの料理も美味しく、特にサラダにのっていたアカモクのシャキシャキとした歯ごたえが印象的でした。普段あまり意識せずに食べていた海藻も、種類によって食感や風味が違うことを実感し、新しい発見がたくさんありました。
昆布の活用方法をさらに深く学び、自分でも活かせる知識を増やしていきたいと思います。今後の講座がますます楽しみです!
【第2回:海藻の活用法を知って化粧水をつくってみよう!】
第2回は、北海道マリンイノベーション株式会社の布村さんによる、海藻の具体的な活用例の紹介と、本日のメインテーマである ものづくり体験 の説明からスタートしました。今回は、海藻由来の化粧水作り に挑戦します。
まず、ガゴメ昆布がなぜ化粧水の原料として使われるのかについて、布村事務局長から詳しい解説がありました。海藻に含まれる 粘性多糖類(ネバネバ成分) には高い保湿力があり、肌に良い影響を与えることが知られています。こうした特性を活かした海藻の具体的な活用例についても紹介され、参加者は興味深そうに耳を傾けていました。
また、今回の化粧水作りでは 「クリーンルーム」 に入ることができるため、その希少性や入室時の注意点についても説明がありました。

早速クリーンルームに入っていきます。
3人1組でクリーンルームに入りますが、その前に、丁寧な手洗いや、コロコロで衣類のチリなどを取って、全身を覆えるクリーンウェアに着替えてから、入室をします。

※中の様子はLive映像で会議室に共有されます。
クリーンルームに入ること自体がなかなかない経験です。参加者たちは緊張した面持ちで、入室していきました。その後は、クリーンルーム内で化粧水への香り付け、混合、充填作業を行います。
参加者からは、
「クリーンルームに入ったことがなく、とっても楽しみだった。かなり緊張したが良い経験になった。」
「商品を作って出すには、衛生管理なども重要で、ここまでやっているのか、と感心した」
などの感想が出ていました。完成した化粧水には、自分でデザインした オリジナルパッケージ を貼り、各自がお土産として持ち帰りました。参加者からは、以下のような感想が聞かれました。
海藻にこんな使い方があるなんて驚いた!自宅に戻ったら家族にも伝えたい。
海藻が食べる以外にも活用できるとは知らなかった。もっと可能性があるのでは?とワクワクしたので、次回の講座も楽しみ!
海藻の多様な活用法を学ぶ、貴重な体験となりました。
【第3回:海藻石鹸(マリン石鹸)をつくってみよう】
第3回目の講座は、前回の振り返りと昆布・ガゴメの種苗観察 からスタートしました。以前観察したときよりも サイズが大きく成長 しており、参加者たちはその変化に驚きながら、海藻への興味や関心をさらに深めていました。続いて、今回も 北海道マリンイノベーションの布村さん から、海藻の具体的な活用例 の紹介と、本日のメインテーマである ものづくり体験 の説明がありました。今回は 海藻石鹸(マリン石鹸)作り に挑戦します。
布村さんからは、海藻と石鹸の関係性、歴史、そして製造過程で起こる化学反応について詳しい解説があり、参加者たちは熱心に耳を傾けていました。
現在の石鹸の原型は、12世紀ごろに地中海沿岸で オリーブ油と海藻灰を原料とした石鹸 が量産され始めたことに遡ります。つまり、石鹸の歴史には「海藻」が深く関わっているのです。そこで今回は、伝統的な製法にならい オリーブオイル100% を使用して石鹸を作ることになりました。さらに、石鹸をより使いやすくするための補助成分として、海藻の粉末 など「海」に関連する材料を加え、オリジナルブレンドの マリン石鹸 を作ることにしました。副原料として混ぜるのは、「ガゴメ粉末」「アカモク粉末」など5種類です。

薬品を使用するため、製造エリアへ移動し、専用ウェアに着替えて作業を開始しました。本格的な準備に、参加者たちの期待感も高まります。
【いよいよ製造開始!】
今回は 石鹸のベース をあらかじめ用意し、そこに各自が選んだ 副原料を混ぜてオリジナルのブレンドを作る という形で進めました。
各材料にはそれぞれ異なる特徴があり、たとえば ガゴメ粉末を加えると、よりしっとりとした使い心地になる など、配合によって仕上がりが変わります。参加者は、自分好みの石鹸を作るため、慎重に材料を選び、混合作業を行いました。混ぜ合わせた石鹸の素地を 型に流し込み、恒温器に入れます。この後、24時間かけて化学反応を進め、その後3〜4週間熟成させることで完成 します。

布村さんは、次のように話してくださいました。
「石鹸と海藻には意外なつながりがあり、今回はその関係を活かして ‘海’ をテーマにした副原料を使用しました。実は、化粧品の世界では ‘海洋療法(タラソテラピー)’ が盛んに行われており、私たちの生活には食べ物以外の面でも海の恵みが深く関わっています。そう考えると、海がもっと身近に感じられますね。」
参加者からも、以下のような感想が聞かれました。
「海藻が、私たちの生活の意外なところで使われていると知り、驚いた!」
「海の成分を使った石鹸がどんな仕上がりになるのか、完成が待ち遠しい!」
こうして、参加者たちは 海藻の新たな可能性に触れる貴重な体験 をすることができました。
【第4回:海藻を通して考える海のより良い未来とは?】
最終回となる第4回は、これまでの学びを振り返り、未来へどうつなげていくかを考える回 となりました。
まずは、これまで継続して行ってきた 昆布やガゴメの種苗観察 からスタート。開始から約2か月が経ち、種苗は以前よりも 大きく成長 していました。定期的に観察することで、海藻の成長スピードや特性をより深く理解できる貴重な機会となり、参加者たちの海藻への興味もさらに高まりました。
続いて、北海道マリンイノベーションの布村さん から、これまでの講義内容の振り返りが行われ、学びをおさらいしました。
【白熱!中高生が海藻活用を考えるディスカッション】
そして、本日のメインイベント 「グループディスカッション」 に移ります。参加者12名が6名ずつのチームに分かれ、以下の2つのテーマについて議論しました。
ディスカッションテーマ
@ 函館ではほとんど採れなくなった天然昆布。その課題に対する対策を考えよう。
A 新たな海藻活用の可能性を考えよう。
参加者たちは、これまでの学びを活かしながら、真剣に意見を交わしました。

【テーマ@:函館で減少する天然昆布、その対策とは?】
Aチームの発表では、
「天然昆布が減っているのは、海の温暖化が大きな要因であり、それを私たちが直接止めるのは難しい。しかし、天然に近い環境で昆布を増やす方法を考えるべきではないか。例えば、磯焼けの原因となるウニの食害を防ぐための柵を設置する、または養殖を増やすことが解決策になるのでは。養殖を活性化させるためには、若い漁師の育成が重要だと思う。」 という意見が出ました。
Bチームからは、
「ウニの食害が深刻なので、それをどう防ぐかが鍵になる。例えば、ウニを漁獲して ‘蓄養’(一時的に育てること)し、販売することで、ウニを減らしつつ漁業の活性化にもつながるのではないか。」 という考えが発表されました。
【テーマA:新たな海藻活用の可能性とは?】
Aチームは、
「小学生のことからこの‘海の教室’に参加していたことで、生の昆布に触れる機会が増えた。だからこそ、小・中・高校生にももっと昆布に触れる機会を作るべき。例えば、 ‘昆布のタッチプール’ を設置したり、高校生になったら化粧品など美容の観点から海藻を活用する方法を学ぶことで、昆布との距離を縮めることができるのでは。」 という提案をしました。
Bチームからは、
「海藻の活用を広めるには、まず ‘昆布をもっと食べる’ ことが大事。例えば、若者向けに食べやすい昆布のお菓子を開発したり、和食文化を伝えるために出汁パックを作り、若者や外国人に昆布の魅力を知ってもらうのはどうか。」 という意見が出ました。
どのチームも、実現可能性を考えながら積極的に意見を交わし、海の未来について真剣に向き合う時間 となりました。

【海藻を通して考える未来へのメッセージ】
ディスカッションの後、参加者一人ひとりが 「海藻を通して考える、海のより良い未来へのメッセージ」 を考えました。
海や海藻に対する想い、それを未来につなげるために自分ができること―― それぞれが真剣に考えた言葉をメッセージカードに書き込み、全4回の講義のまとめとしました。


参加者の感想
より海や昆布、環境に対する意識が高まりました。子供だから、学生だから、ということに関係なく、今自分が海に対して出来ることをやっていこうと思いました。(高校2年生/女性)
海があって、陸があるからこそ、自分たちの生活が成り立っていると思った。島国の日本だからこそ、海を身近に考えていきたい。(中学3年生/男性)
これから昆布を見るたびに、今回の機会を思い出すことができて、海への考えや想いを深めていけると思う。(中学2年生/男性)