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竹の不思議物語−9「竹取物語考」 [2015年02月26日(Thu)]
そろそろ不思議物語のネタも尽きてきたので、最後に日本文学の始まりと言われる「竹取物語」
を取り上げて、竹の不思議を読み取り、このシリーズを閉じたいと思います。
尚、本シリーズの全編は以下のブログのカテゴリーに掲載されていますので、ご参考までに。
https://blog.canpan.info/bamboo-ymgchi/category_11/1


「竹取物語」は平安時代初期頃に書かれたとされる物語ですが、成立年・作者共に不詳とされ原
文は残されていません。
ストーリーは良く知られた話ですが、一応要旨を載せておきましょう。
『竹取の翁(おきな)によって光り輝く竹の中から見出され、翁夫婦に育てられた少女かぐや姫
を巡る奇譚。かぐや姫は五人の貴公子から求婚を受けるもこれを退け、帝から召し出されても応
じず、八月の満月の夜に「月の都」へ帰る』と言う物語です。(Web Wikipediaより )

「成立年」については、文中の五人の貴公子のうち三人は実在の人物で、いずれも壬申の乱
(672年)で功績のあった藤原一族の功臣であることより、『当然それ以降の時代で本人及びそ
の係累に影響が及ばない一定の期間が経過したに時期に創られた』というのが状況証拠として有
力であろう。また「源氏物語」にも竹取物語への言及が見られることから類推しても、奈良時代
末期から平安時代初期と推定できる。
「作者」は不詳とされているが最近の研究では、文中の貴公子が何れもかぐや姫の難題を達成で
きない事をちょう弄されていることから、藤原一族によって左遷されたことに恨みを持つ人たち
の中で、特に文学的素養があった「紀貫之」が作ったと有力視されているのが話としては面白い。

所で「竹取り」とは、農民の依頼により竹を伐採して竹製農器具を作ることを生業にしている職
業人を指すのであるが、この物語では「かぐや姫」が主人公であり、竹取の翁は単なる狂言回し
にすぎない。しかるに物語の題が竹取物語となっているのは、あくまでも竹にまつわる不思議な
伝説が主題であるからという事であろうか。
さて肝心の主人公のかぐや姫の出生についてであるが、生まれた時かぐや姫.jpg
の大きさは3寸(約10cm)と記されており、竹の種類は京都周辺
の植生から推定して恐らく真竹であろう。
物語に依れば、かぐや姫はその後わずか3ヶ月で大人になったと
記述されているが、これは竹の成長の期間と一致しており、この事
はかぐや姫の成長ぶりが、驚異的、異常的、神秘的であり、まさに
盛んに成長するしなやかな「竹」の生命力に重ねられたのであろう。
では何故竹から生まれてきたという話になったのかは、竹稈の中の
密閉空洞が子宮を連想させることや、竹は古来神聖なものとして扱
われていており、例えば神様を降臨奉る時に四方に「斎竹」と称す
る真竹を配してしめ縄を張って斎場や祓い所として使う様に、その
神秘性が物語のイメージにぴったりだったのではなかろうか。
最終段の「月の都に帰る」というのは、竹に関連が無いので詳しい
言及は差し控えるが、「浦島太郎の竜宮城」と同様に異次元の世界への空間移動は「おとぎ話」
の常套手段なのである。

参考文献:「竹づくし文化考」上田弘一郎 著、京都新聞社 刊
 なお本シリーズの編集に当たっては、専門的な部分に付きましては山口県林業指導センターに
監修をお願いして多大なご協力を頂きました。

創作竹細工「竹プランター」(竹工房 雄山 作)
竹プランター.jpg
八角形に加工しているのは造形と割れ防止のため
竹の不思議物語−8「へんちくりんな竹あれこれ」 [2015年02月12日(Thu)]
「へんちくりん」とは、まともでない事を表す言葉であるが、竹は突然変異を起こしやすく時折り
変種が現われる。ヘンチクリン(変竹林)の語源はここから出たものだとも言われている。
今回はこの変種を含めた代表的な竹の変わりものをご紹介してみたい。

【キッコウチク】亀甲竹:モウソウチクは変異を起こしやすい種であり、これはその変異種です。
下部の節間が交互にふくれて亀甲状になった奇形種であり、亀甲状となるのは稈節にある芽の部
分で上下の節がつながることによって生じるものです。
孟宗竹林内で時おり発生する突然変異で、周囲の竹が全てこの形になる訳ではない。
この種のものは他にもブツメンチク(仏面竹)などがある。

【キンメイモウソウ】金明孟宗竹:これも上種と同様なモウソウチクの変異種で、稈の表皮の大
部分が縦の繊維に沿って黄金色に変色したものであり、正に竹の王者の風格があります。
稈表面の葉緑素が何らかの原因で失われ、素材そのものの色が透けて見える様になったものです。
国の天然記念物として全国で3ヶ所が指定されており、日頃目にすることは稀であるが、筆者は
九州の大崩山の登山口近くの「祝子川(ほうりがわ)キンメイモウソウ竹林」で偶然目にして
感動したことを憶えている。
キッコウチク・キンメイモウソウ.jpg

【クロチク】黒竹:ハチクの変異種ではないかと考えられているが、マダケ属の1種として図鑑
に載せられている。名前の通り稈及び枝先まで黒色または濃紫色なのだが、生えて1年目は緑
色で2年目より次第にメラミン色素が増え黒色化してくる不思議な竹である。外観が美しいので
茶道具や竹細工用の素材として人気が高い。

【シホウチク】四方竹:竹の稈の断面は丸いものと決まっているが、この竹のそれは鈍四角であ
り、下部の節には気根があり稈の表面はザラザラとしていて、竹亜科のなかで常識破りの変わり
者である。おまけにタケノコが秋に出て、冬に掛けて成長するが枝葉は次の年の春に伸びるとい
う異端児。このタケノコはなかなか美味であるので、時節柄食通に喜ばれる。
クロチク・シホウチク.jpg


創作竹細工「クロチクの敷物」(竹工房・雄山 作)
クロチクの敷物.jpg
クロチクを油抜きする際にメラミン色素が分解して、趣のある斑入りに変化している。
竹の不思議物語−7「孟宗竹の開花に遭遇」追補 [2015年02月07日(Sat)]
同タイトルの前報に引き続き「孟宗竹の種子が発芽」を追補します。

孟宗竹の開花情報を頂いた「山口県林業指導センター」が、結実した穂より種子を採取して発芽
試験を試みられたそうです。
開花した穂より採取した種子3粒を使って発芽培養したところ、その内のひとつから見事発芽し
たとの情報を頂きました。
発芽後の成長は非常に早いのに驚かされるとのことです。
そこで、滅多に見ることができないモウソウチクの種子と発芽の写真を以下にご披露します。
モウソウチクの種子.JPG
モウソウチクの種子:直径2mm、長さ10mm程度の極めて小さくて細長い粒です。

モウソウチクの発芽.JPG
モウソウチクの発芽の状況:可愛い幼葉が見えます。

写真提供:山口県林業指導センター
竹の不思議物語−7「孟宗竹の開花に遭遇」  [2015年01月27日(Tue)]
「竹の不思議物語」の監修をお願いしている山口県林業指導センターより、誠に耳寄りな情報が
飛び込んできました。
山口市に隣接する周南市のモデル竹林にあるモウソウチクの一部(6本)が開花して結実してい
るとの話なのです。本シリーズを展開中にこの様な稀な現象を目の当たりできるとは正に僥倖、
いや天啓としか言いようのないハプニングなので興奮しました。
筆者は何事も自分の眼で確かめなければ気がすまない性分なので、早速同センターにお邪魔して
その試料を見せて貰い、開花状況をお聞きしたうえ現地調査をして来ました。

竹林全体が一斉開花するマダケやハチクでは開花期間が60年から120年に一度、モウソウチクは
竹林の一部分が開花するので開花期間は未だ明確にされていないという珍しい現象です。
マダケは開花したのち稈及び地下茎が枯れてしまい、結実した種から新たな竹が発生しますが、
モウソウチクは再生竹が発生しないと文献に記載されています。しかしながら、観察事例が少く、
今後この現象が竹林全体に派生してくるのか、それとも部分的で収まるのか、はたまたその後再生
竹が発生するのかと言った現象を観察することで、謎が少しずつ解明されてくるかも知れません。

開花した孟宗竹林.JPG「開花後に結実したモウソウチク」

孟宗竹の開花・結実.jpg「結実した枝先部分の拡大写真」
写真で見える稲穂状のものは既に開花は終わって結実したものだが、形状からして竹がイネ科で
あるというのが頷けます。
後日新しい動向がありましたら、また改めて知らせしたいと思っています。

【参考資料】 開花の試料及び情報提供:山口県林業指導センター
      「有用竹と筍」、上田弘一郎 著、博友社 刊


創作竹細工「伝統花器」(竹工房 雄山と大内塗工房とのコラボレーション作品)
伝統花器.jpg
竹表面は特殊燻蒸処理。
端面の金箔押しと中央の大内菱と呼ばれる紋章は大内塗り師の手による細工。
竹の不思議物語−6「竹食う虫も好き好き」 [2015年01月15日(Thu)]
竹材の物理的強度は見かけより強く、堅い「樫の木」のそれに相当するとのデータがあります。
世に「蓼食う虫も好き好き」という、辛い蓼を食う物好きな虫もあるように、その堅い竹を好んで
食害する虫もいるのです。
日本での竹の害虫は50〜60種類と言われていますが、たけのこに潜り込んで食い荒らす虫、生え
替わり直後の葉や鞘に卵を産んで、それを幼虫が食害するなど、竹材が比較的柔らかい時期をね
らってアタックするものが大多数です。
健全に生育した竹は、生来の生体防御の機能が働き、硬い稈の表皮を食い破る虫はさすがにいな
いようです。
しかし伐採した竹や枯れる寸前の防御機能が低下した竹については、稈に穴をあけ内部の堅い繊
維を食い荒らして、蓄積している澱粉や糖分を栄養源にする逞しい猛者は数種類いるのです。
そこで、伐採した竹材や油抜き等の処理をした素材及び竹製品を台無しにする困り者に登場して
貰いましょう。カミキリムシ2種・シンクイムシ2種・キクイムシ1種がそれに該当します。

代表格2種、タケトラカミキリは体長約13mmの黄緑色の成虫で、背中の黒い虎模様が特徴です。
ベニカミキリは体長約17mmで美しい紅色が目立つ成虫で、4〜5月頃竹林内で良く見かけます。
これらの成虫は竹の切り口や裂け目に卵を生み、幼虫が稈の内部を繊維に沿って穴道を掘り進め、
跡に消化できないセルロースを糞として残しますが、時に稈内部が糞で満たされる事があります。
他の種類は数ミリ程度の小さな虫で、通常目にすることは難しいが、食害は馬鹿になりません。

竹を食害する虫と被害状況.jpg「虫に食害された孟宗竹と食害虫」
−竹の表面に開いた成虫の脱出口と内部に溜まった糞カス、断面は撮影のため直前に切ったもの、
食害虫はタケトラカミキリ(上)、ベニカミキリ(下):Web「Weblio辞書」より転載−

余談だが、このベニカミキリの糞カスがアトピー性皮膚炎などによる痒みに対して優れた止痒効果
を持つことを見出した研究所が、抗アレルギー剤を開発中だとWeb記事があった。
http://www.geocities.co.jp/Beautycare-Venus/6468/kamikiri.html
いやはやとんでもない所に目を付けたものだと感心したが、薬の素材開発とはこの様に意外なとこ
ろにあると、以前聞いたことがあったっけ。

参考文献:「農林有害動物・昆虫名鑑」、日本応用動物昆虫学会 編集・発行
     「有用竹と筍」、上田弘一郎 著、博友社 刊
     「竹の魅力と活用」、内村悦三 編、創森社 刊


創作竹細工「竹製の虫たち」(竹工房 雄山 作)
竹製の虫たち.jpg
左からカブトムシ、オオクワガタ、ノコギリクワガタ
竹の不思議物語−5「有用竹とそのルーツ」 [2015年01月03日(Sat)]
日本の三大有用竹は真竹(マダケ)、孟宗(モウソウ)竹、淡竹(ハチク)です。
今回は特に不思議な話ではないのですが、竹を知る上での必須の知識としてご紹介しましょう。

【真竹】は縦に裂け易いので竹細工の素材として多用されており、竹細工が盛んな大分県には多く
植栽されています。昔は日用雑貨の素材としても用いられていました。
日本における真竹の歴史は古く、石器時代の遺跡から竹籠や櫛として発掘されており、日本原産で
はないかと言われています。
真竹はその名の通り、竹の中の竹即ち「真の竹」と命名されているごとく、我が国では最も良く利
用され且つ愛でられてきました。日本の竹の分類の主要種である属の名前「マダケ属」にもなって
いる所からも明らかでありましょう。ちなみに上記有用竹はこの科に属します。

【孟宗竹】は主として「たけのこ」として食用に供するほか、日本では竹亜科最大の口径のため
構造材として幅広く活用されており、寒冷地を除いた広範囲の地域に植栽されています。
ルーツは中国原産で戦国時代の初め頃に京都に渡来したという記録があります。
名前の由来は呉の国の臣「孟宗」が冬のさなかに筍を探して、親に孝養をつくしたとの故事により
ます。
また江戸時代の中期に薩摩藩主が琉球を経由して持ち込み、島津別邸であった仙厳園に植えられ
たものが原竹となり、そこから全国に広まったと言われています。
鹿児島県に孟宗竹が多いのは、稲作に適さないシラス地質が多いため、食糧確保の目的で薩摩芋
と同様にたけのこ栽培を藩が奨励したからではないかと思います。

【淡竹】は孟宗竹・真竹に次いで、各地で多く植栽されており、文字通り淡い緑黄色の竹です。
用途は細く割れるので茶筅などの茶道用具や花器などに使われています。またアクが少ないので
美味な「たけのこ」としても利用されています。
日本書紀に淡竹の事が述べられていることから、相当古くから日本に存在したことは確かではある
が、原産地は明らかではないようです。

今回は新年に因み、おめでたい「松竹梅」の言われを述べてみましょう。
松竹梅(しょうちくばい)はもともと中国の「歳寒三友」という言葉より出たもので、松と竹は冬
も青々としていることから不老長寿を示す縁起物として尊ばれ、梅は冬季の最初に花が咲くおめで
たい植物として正月の門飾りとして用いられるようになった様です。
また店の品物の等級に、特上を「松」、上を「竹」、並みを「梅」と表記しているのを見かけます
が、元来特に順位があったのではなく、あからさまに表現することを避けた商人の知恵からでたも
のだと言われています。

参考文献:「竹づくし文化考」上田弘一郎 著、京都新聞社 刊

創作竹細工「ボトルクーラー」
ボトルクーラー.jpg正月に因んで、お目出度い「角樽」風に
竹の不思議物語−4「細い竹稈の秘密」 [2014年12月20日(Sat)]
竹の稈は、同じ高さのスギやヒノキの幹に比べると、直径(太さ)が圧倒的に細いのが特徴です。
高い立木や竹は強風や豪雪によって、しばしば折れることがありますが、竹はその細くてしなり
のある稈によってそれらの外圧から身を守っています。
今回はその仕組みを、少々難しくなりますが紐解いてみましょう。

竹はなぜ細い稈径で風などの外圧に耐えることが出来るのでしょうか?
その理由は稈が中空(管状)となっているため、中身が詰まっている構造のものより「しなり」
易く、釣竿で体験するように大きく曲がってもなかなか折れないのです。
また、中空構造は構成素材が最小の量で最大の抗力を有する形状なのです。
材料力学では、曲げる力に対してどれだけ抵抗できるかを表す指標に「断面係数」という考え方
がありますが、中空管構造は同じ面積のあらゆる断面形状の中では最も数値が大きいのです。
例えばコンクリートの電柱や基礎パイルが中空構造となっている事からも理解でると思います。
竹は強い風が吹くと先端部分にある枝葉が風になびいて、抵抗をより少なくなる様に身をかがめ
て風に逆らわない姿勢をとるのは時おり見かける風景です。
また、竹の繊維は縦方向に並んでいるため縦に裂けやすいので、適当な位置にある節に依って
補強され、潰れることを防いでいます。
この様に竹稈は最小の素材を使って、必要な強度を保っている究極の構造体と言えるでしょう。

ここで竹の構造にまつわる面白い話をひとつご紹介しましょう。
ある時「竹の中は真空なの?」と突飛な質問され、一瞬答えに詰まってしまいました。しかし直
ぐに「竹の中は真空ではなく空気が詰まっているよ、何故なら竹を切ってもスーとも音がしな
いからね」と切り返しました。但し竹が急速に成長する時には一時的に内部が大きく減圧します
が、やがて徐々に空気が細胞壁間を通過して内部に侵入してきます。
ある学者が竹の内部の空間の組成を調べた結果、酸素濃度が13~19%だった(大気の21%)と
発表していますが、竹稈内部の細胞壁で酸素が消費されたものと考えられます。

竹を細かく観察するとこれ以外にも色々と面白いことが発見できますが、それはまた別の機会に。
参考文献:「竹づくし文化考」上田弘一郎 著、京都新聞社 刊

創作竹細工「枕行燈 2灯」(竹工房・雄山 作)
枕行燈 2灯.JPG 特殊燻蒸した孟宗竹を使用
竹の不思議物語−3「竹の四季と増殖」 [2014年12月06日(Sat)]
竹が毎年どの様な経過をたどって増殖してゆくのか、代表的な孟宗竹の場合を例にとって見て
みましょう。

冬の間は、親竹より延びた地下茎の芽子が「たけのこ」に成るべく、前の年の秋頃より膨らみ
始めており、春の発筍(はつじゅん)にむけて地中でひそかに成長を続けています。
春、気温が約13℃位になる頃にたけのこが地上に現れてきて、それ以降は一挙に伸びはじめ、
夏には根や枝葉が生え揃って成竹(子竹)となります。
これだけの生産活動を短期間の内に行うには膨大なエネルギーが必要ですので、子竹1本に対
して地下茎が連なった親竹数本が連携して養分を供給しているようです。
成竹となった子竹はすぐに炭酸同化作用を開始し、夏場から秋にかけて澱粉や糖分を稈及び地
下茎に貯め込んで次に備えますが、その子竹が新たな筍を作る能力は、自身の地下茎が充分に
発達した2年目以降となります。

一方、親竹は「竹の秋」と言って春に大部分の葉が落葉し、同時に生産性の高い新葉に切り替
わって、日照が強い夏季から秋季の養分蓄積時期に備えます。
秋から冬にかけては同化作用が低下しますので、稈に蓄えられた澱粉等は徐々に地下茎へ移動
し、稈の水分や養分が少なくなります。
従ってこの時期が竹細工や構造材として伐採する適期なのです。
また竹の寿命は10〜15年程度ですが、5年以降になると筍の生産性が急激に低下するので、
たけのこ生産林ではそれらの竹も秋から冬にかけて伐採します。

ここで、柔らかい筍が短期間に硬い竹に木化する驚くべき過程を追ってみましょう。
前報で竹のそれぞれの節間の伸長はほぼ同時並行的と言いましたが、正確にいうと根元の方から
穂先に向かってそれぞれ順次伸びて行く若干の時差があります。
筍が伸びる間はもちろん稈は柔らかいので、それを保護するのが稈を覆う「竹の皮」の役目です。
節間が伸びきってしまうと直ちに木化が始まり、木化が終了してしまうと皮は下部から順に役目
を終えて剥がれてきます。この間、皮は覆いの役目だけでなく、伸長の制御と木化の促進を司っ
ている成長ホルモンを活性化する役目も果たしているらしいのです。
この様に成長が終わった途端、短期間で硬化する竹の変わり身の早さは、まさに驚嘆に値します。

参考文献:「竹」への招待−その不思議な生態− 内村悦三 著 研成社 刊、その他 既報文献

創作竹細工「虫籠とクワガタ」(竹工房・雄山 作)
虫籠とクワガタ.jpg人気が高い作品で常時在庫ゼロ。
竹の不思議物語−2「竹の奇妙な生態」 [2014年11月15日(Sat)]
竹は熱帯・亜熱帯地方にはどこにでもあるありふれた植物ですが、その生態は実に奇妙としか言
いようがないのです。

竹の幹(稈といいます)は中空で一定間隔に節という仕切りがある構造となっており、最小の素
材で最大の強度を持つ様に工夫されている所が実に巧妙で、自然の摂理に適っています。
新しい竹の発生は、親竹から延びた地下茎から筍を出すことに依って始まり、それから僅か3ヶ
月間という驚くべき成長速度で成竹になってしまうのです。
例えば「孟宗竹」という日本最大・最長の竹は、大きいもので20mを超える高さまで成長するが、
どの様にして短期間にここまで伸びるのでしょうか?
筍を縦に切ってみれば節がびっしり積み重なっているのを確認する筍の断面構造.jpg
事が出来ますがそれぞれの節の上端には成長点が存在していて、
それがほぼ同時並行的に、畳んだ提灯を広げるように一気に伸長
するのがこのマジックのからくりなのです。
筍が竹となる時期の勢いは驚異的で、時に廃屋となった古民家の
畳や藁屋根を突き破って伸びて行くことさえあります。

また地下茎の成長も早く、1年間に平均約3m、最大8m延びると
言われています。
地下茎は一本の親竹から四方八方に延びるので、山林や畑を放置
すれば、そこがあっという間に竹藪に変わってしまうのです。
竹が里山荒廃の元凶の様に喧伝されていますが、悪いのは放置し
た人間であって決して竹が悪い訳ではないのです。
竹をこよなく愛する筆者としては、竹を悪しざまに言う農林業識
者の無神経さがむしょうに腹立たしいのです。

竹は前報に述べた様に通常無性生殖で増殖して行くが、ある期間
が経過するとその植生地全体の竹が一斉に花を咲かせて結実し、全て枯れてしまいます。
その期間は竹の種類によって異なりますが、数十年から百年と言われています。
この理由は、恐らく遺伝学的に限界となってくるのであろうが、この有性生殖によって新たな
DNAを取得した竹の生命が、ここから始まるのです。
この様に竹は一般の植物には無い特異な生態を有しており、他に類を見ない桁外れな変わり者
なのです。

参考文献:上田弘一郎 著「有用竹と筍」博友社 刊

創作竹細工 竹皮六角容器(竹工房・雄山 作)
竹
皮六角容器.jpg孟宗竹とその竹皮で作製
竹の不思議物語−1「竹は木か草か?」 [2014年11月13日(Thu)]

          竹の不思議物語ー1 「竹は木か草か?」


【はじめに】
 「竹林ボランティア山口」のブログ記事は、活動報告を中心に掲載してきましたが、読者 の皆さんから竹に関する話をもっと聞きたいという要望が多く寄せられました。

 そこでこの度、竹の紹介を兼ねて「竹の不思議物語」と題して、エッセー風の楽しいお話しを連載することにしました。

 編集に当たって、専門的な部分については「山口県林業指導センター」の専門部署に特別にお願いして、監修を引き受けて頂きました。

 【竹は木か草か?】
竹は古来、日本人の日常生活に欠くべからざる素材として活用されてきましたが、その本質

については意外に知られていないことが多いのです。
竹はまことにもって摩訶不思議で異端な植物であることを、順次ご紹介しましょう。

一般的な植物の生育方式の区分で、日常的に使われるのは「木」と「草」です。
木「木本(もくほん)」は、地上に出ている茎が太くなり続け、長い間存続する植物のこと

を言い、草「草本(そうほん)」は地上に出ている部分が一年程度で枯れてしまう、あるいはそれより長持ちする場合でも太り続けることがない植物のことを言います。


竹は外見上では木と同じ様に見え、とても草には見えませんね。
なので竹を良く知らない人が太い竹を見て、「竹は何年ぐらいでこの大きさになるのです

か?」と質問してきますが、「竹は最初からこの大きさなのですよ」と答えると、「えーうそ!」とびっくりします。

それでは竹は草本に属するかと言うと必ずしもそうではなく、竹の寿命が10年以上であることや大型の種類が多いことから、むしろ木本に近いと考えられます。

一方分類学の観点から見ると、竹はイネ科の植物なので草本に属するのかと思えば、樹木図鑑では竹が「被子植物」の最初に掲載されていて木本扱いになっており、要するに竹は木で

も草でもなく、強いて言えば「竹である」と答えるしかありません。
また、竹は通常地下茎を延ばすことにより新たな個体が生ずる無性生殖で増えて行きます

が、長期間経過したある時突然に花が咲いて実をつけ有性生殖します。
ことほど左様に竹は奇妙な植物であると言わざるを得ない生態を有しています。

そこで次回は、この生態について解説して行きましょう。


創作竹細工「竹灯篭」(竹工房・雄山 作)

竹灯篭.JPG真竹製 全高50cm