海底の根府川駅 [2014年02月08日(Sat)]
先週末,根府川(神奈川県小田原市)へダイビングへ行ってきました.
目的は,現在ファンダイビングのポイントにもなっている根府川海底に没した旧東海道本線・根府川駅ホーム(残骸)を見ることでした. この海底に残る根府川駅ホームは, 今から90年前の1923(大正12)年に南関東地方に甚大な被害をおよぼした大正関東大地震により, 周辺の広範囲に発生した地滑り・土石流により流されたものです. ホーム・駅舎とともに,ちょうどホームに入ってきた 列車(蒸気機関車と客車)も流されており,多くの死者・負傷者・行方不明者もでています. その後,機関車は1934(昭和9)年に引揚げられています. ![]() 地震による地滑りで,海岸際まで流された客車(Wikipediaより) ホームの残骸は,水深10〜15mほどの砂地上に, 大小の大きさで,ほかに流された瓦礫とともに散在しています. ホームの残骸とともに,大形の金属部材(機関車の部材やレール等)も見ることができました. 以前にこの海域でなされたマルチビームによる探査による海底地形図によると, かなりの範囲に広がっているようです. ファンダイビングのポイントとなっている地区は,その一部のようです. また,ホームや金属部材等の表面には,海藻等の付着物が多く, 認識をもってみなければ,そのモノがわからないかもしれません. この地区は,ホーム,金属部材そして他の瓦礫といった遺物(遺構)が残る災害遺跡としてとらえることのできる水中文化遺産です. ただし,これまでに災害や地質面からの調査はなされているのですが, 考古学としての調査はおこなわれたことはありません. ですので,各遺物(遺構)の詳細観察はなされていませんし,詳細図もありません. どのようものなのか,どこに・どのようにあるのか, などという各遺物(遺構)の詳細およびその広がりについては,よくわかっていません. モノ(遺物・遺構)としての歴史的な評価は十分になされていなのです. 現在は,行政的に「埋蔵文化財包蔵地」(歴史的に評価された遺跡)とはとらえられていませんが, 将来的には,そのようにとらえられるべき「遺跡」です. そのためには考古学的な評価は必要ですし, そのための考古学的な調査は不可欠と考えます. ちなみに,現在の根府川駅には2・3・4番ホームはありますが, 1番ホームはありません. なお,現状については,現地の根府川ダイビングサービスのホームページ http://www5d.biglobe.ne.jp/~nebu/ne_seamap.htm 震災直後のようすについては, 土木学会付属土木図書館の「関東大地震震害調査報告掲載写真」 http://library.jsce.or.jp/Image_DB/shinsai/kanto/jsce_report/index.html 日本鉄道旅行地図帳の「東日本の大震災の記録」 http://www.shincho-live.jp/ebook/railmap/kanto_daishinsai/pht09_atami.html#2 で,それぞれ確認できます. ![]() ![]() 海底に残るホームの残骸(山本祐司氏撮影) ![]() 海底に残る大形金属部材(山本祐司氏撮影) |