埋蔵文化財としてあつかわれる時代は,いつでしょう?
旧石器時代,縄文時代,弥生時代,古墳時代,は?
奈良時代,平安時代,は?
鎌倉時代,室町時代,は?
安土・桃山時代,江戸時代は?
明治時代,大正時代,昭和時代,平成時代は?
時代区分については,いろいろな考え方がありますが,
日本のばあい,上にあげた時代のうち,どの時代が,
埋蔵文化財の対象となるか,皆さんはわかりますでしょうか?
答えは,すべての時代です.
時代のくくりや限定はありません.これは,埋蔵文化財を主たる研究材料とする
考古学の時代的対象と重なります.
考古学は,過去すべてのもの対象として,人びとの活動とその移り変わりを研究する学問です.
決して「
旧い」ものだけが対象ではありません.
しかし,
行政的にはの扱いが少し異なります.
それも,
行政ごとに違うようです.
実際に,ある行政では,「おおむね中世まで」,
ある行政では,「江戸幕末以前」,
などというように.
なぜ,学問的(考古学的)には,時代の限定はないのに,
行政的には,限定がなされ,行政ごとにその規定が異なるのでしょうか.これには,
「埋蔵文化財の保護と開発事業との適切な調整、発掘調査の迅速化、発掘調査に係る費用負担のの明確化等が指摘されるなど、埋蔵文化財の保護と発掘調査に関する施策の一屑の充実と適切な実施が求められ」たことにより,
平成10年(1998年)に文化庁から各都道府県教育委員会にだされた
「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について」の通知によるところが大きいようです.
このなかで文化庁は,
埋蔵文化財について「一定の基準を定めることが望ましい」として
「埋蔵文化財として扱う範囲」を以下のように規定しています.
1)埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則
1
おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。
2
近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。
3
近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。
2)埋蔵文化財として扱う範囲の一基準の要素
遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所作する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の遺存状況、遺跡から得られる情報量等を副次的要素とすること。
これは,あくまでも「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化」を目指す指針なのですが,
いつの間にか
その規定の一部分のみが独り歩きして,
埋蔵文化財としてあつかわれる時代の限定がおこなわれるようになったようです.
とくに1)-1規定にある「
おおむね中世まで」という一文は,
今日の埋蔵文化財としてあつかわれる時代に大きな影響をおよぼしています.
これが,行政による時代規定,そしてその規定差がおこっている理由です.
また,
これが水中文化遺産の「周知化」にも影響をあたえてもいます.