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東南アジア考古学会研究大会「東南アジア水中考古学最前線」 から(3) [2012年11月28日(Wed)]
先日の東南アジア考古学会研究大会で,
参加していた学生から,
「水中考古学を学びたい.学ぶにはどうしたら良いのか」
という質問もありました.

質問した学生は複数いて,いずれも考古学専攻生でした.

この種の質問は,よくあります.
とくに,このような学会で多いですね.
学生も興味があるから,参加するのでしょうし,
「水中考古学」という学問へのアクセス方法がわからないために,質問をするのでしょう.
在学している大学に明瞭な専好がない,だから誰に質問をして良いのかわからいない,
という事情もあるのでしょう.

答えは,いつも同じです.
研究大会でも話したように,また,このブログでも再三書いているように,
「水中考古学」といっても,あくまでも「考古学」の一分野です.
対象とるモノ(遺物・遺構・遺跡)が,たまたま水中(水底)にあるだけのことです.


研究の方法論は,陸の「考古学」と何ら変わることはありません.

ですので,大学で
「考古学をきちんと勉強しなさい」
「考古学でモノを見る目をしっかりと養ってください」

と答えます.
「考古学」の基本を学んで欲しい,ということです.

留学という選択肢もありますが,私は少なくとも学部レベルでは無理をして留学する必要は感じません.
国内の大学で十分に学べるのですから.

また,学生の多くは,「水中」にあるものを特別視する傾向
「水中考古学」を「考古学」と異なる特別な学問とみる傾向があります.
(これは,一般の方および研究者の一部にも見られる傾向でもありますが)
この点にについても,
「対象物は,陸上に残されたモノでも水中(水底)残されたモノでも,違いはありません.ヒトがつくったモノ・ヒトが残した痕跡であることに変りはないのですから」
と答えます.

また,調査(発掘調査もふくめる)についても
「基本的には,陸上と同じ方法でおこなうので,まずは陸上で経験を積んでください.水中でもそれを応用するだけですから」
「水中調査では,遺跡へのアクセスには潜水が必要になりますが,そのスキルは通常の潜水技術を習得するだけですから,考古学とは別の問題です」
と答えます.

この点に関しては,Randall J.佐々木さんが,よく言っています.
「ダイバーを考古学者にすることは難しいが,考古学者をダイバーにすることはそれほど難しいことではない」と.
まさにそのとおりで,この言葉に「水中考古学」(水中考古学研究)にたいする姿勢が述べられていると思います.

ですので,「水中考古学」(水中文化遺産研究)に興味をもっている学生諸君には,
声を大にして言います.
「水中考古学は,考古学の一分野でなので,学部では考古学をしっかりと学んでください」と.

そして,そのなかから水中文化遺産に興味を持てば,それを研究すれば良いし,
それにたいして,水中での調査(作業)が必要であればは,その技術はその後にマスターしてゆけば,良いのですから.
けっして「水中文化遺産」を特別視するようなことだけは,しないように,
あくまでも「ヒトがつくったモノ・ヒトが残した痕跡」なのですから.
「鷹島で海底遺跡保存を議論」読売新聞の記事から [2012年11月27日(Tue)]
今朝の読売新聞・長崎版に
「鷹島で海底遺跡保存を議論」
という記事が掲載されていました.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagasaki/news/20121126-OYT8T01551.htm

国史跡に指定された「鷹島神崎遺跡」の保存活用計画を策定する委員会が議論を始め
来年度末までに保存・活用方針を盛り込んだ計画を国に提出する,
とのことです.

このような「水中文化遺産」の保存・活用に関する本格的な議論は,
近年ではなかったことです.

船体引き揚げに関することも論題になるるようですが,
引き揚げが目的になるような目先のことに関する議論ではなく
ぜひ,遺跡のことを長いスパンで考えた
他の水中文化遺産にたいして良い前例になるような議論をしていただきたいと思います.

「世界遺産」,朝日新聞の社説から [2012年11月26日(Mon)]
昨日(24日)の朝日新聞の社説
「世界遺産40年―日本も観光より保護を」

昨今ブームといえるような状況になっている
「世界遺産」への警鐘
が書かれています.

「世界遺産条約」の本来の目的は,
「国際協力を通じて遺産を保護すること」です.

それがいつの間にか,本来の目的が棚上げにされ,
「観光の楽しみや経済効果を期待するばかり」

の状況になってしまっているという.

たしかに,近年の「世界遺産」をめぐる状況は,
異常ともいえる状況に見えます.
観光・経済効果という目的のために「世界遺産」というブランドを得る.
そのための,地域をあげての運動(というかたちをとっている).
それも多くはトップダウンのかたちで.

とくに日本のばあいは,本当に地域が求めているのかと,
疑いたくなる状況も見え隠れします.

まるで,オリンピック招致活動のよう.
大きなお金も動くのでしょう.

ユネスコは,「増えすぎた」世界遺産の制御するために,
各国の登録件数の上限を設ける議論もされている,といいます.

何か,変ですね.

本来の目的を今一度確認し,
本当に「世界遺産」への登録が必要なのか,
考えるときにきているのではないでしょうか.


そんなことを考えさせる記事です.
東南アジア考古学会研究大会「東南アジア水中考古学最前線」 から(2) [2012年11月25日(Sun)]
先日の東南アジア考古学会研究大会の総合討論で,
沈没船からの引き揚げ遺物の取り扱いがトピックとして取り上げられました.

沈没船からの引き揚げ遺物は,一括性の高い,一括遺物と考えることができる事例です.
ですので,考古学的情報としては,レベルの高いものです.
「陸上」からの成果では得にくい,
「水中」からならでは情報でもあります.

ただし,その取り上げ方次第では,
一括遺物として扱うことができない,
考古学的情報として不十分なもの
にも成り兼ねない,ことも孕んでいます.

たとえば,沈没船引き揚げ資料でも,
複数の船が同じ地区に沈んでいるとすれば,
どの船に,どの積荷がともなうのかを明確に把握してから引揚げることが必要です.
それをしなければ,一括性という資料価値は認められません.

調査の仕方が問題なのです.

水中での考古学的調査といっても
あくまでも「考古学的調査」ですので,
陸上の方法と基本的はかわりはありません.
「水中」という環境にあるので,
「水中」では使えない道具(素材)はありますが,

「水中」は何度も指摘していますが,
通常は「見えない」「見にくい」環境にあるので,
より慎重かつ,正確な調査が必要です


それでなくても「水中」ということで,その調査精度に疑問をもつ研究者は多いのですから.
今なお,「水中考古学」=「サルベージ」≠「考古学」
という捉えられかかたが,学会内あるこことも確かです.


ですので,私たちの調査では,当たり前なことなのですが,
水中での調査方法は,陸上と同じ方法でおこなっています.

ただし,先日の研究大会で他国事例を聞くと,
十分な調査がなされているかと,そうではない事例もあるとのこと,
しかも国家間の格差もあると感じました.

十分な図面がない,出土記録ない,など.

前にも触れたように,「水中」は「見えない」「見にくい」環境にあるので,
調査成果の検証は,調査記録がとくに重要視されます.
それが十分でない,のであるならば,
考古学的に疑義をもたれるのが仕方がないことですし,
その資料を「考古学研究」に無批判に使用することは,認められないでしょう.

とくに,現地を見ていない研究者(多くが見ていないと思いますが)が,
そのような資料を使用するには,調査方法にたいする十分な検討が必要
でしょうし,
疑問のある資料は,区別して使用する必要があるでしょう..

その点も踏まえて報告および討論時には,考古学研究者に文句を言われない(疑義をもたれない)調査方法による成果の公開を強調して指摘したつもりです.

2月に東京海洋大学で開催したARIUA主催の企画展時に,
海底での遺物出土状況図を参考資料として掲示したところ,ある研究者から,
「こんなに詳細な図をとっているんだ」
「陸上と変わらないですね」
との感想をもらいました.

また,先日の研究大会時にも,私の「陸上と同じ調査方法」という指摘にたいして,
沈没船引き揚げ遺物を考古遺物として扱えるのか疑問をもった,という感想もいただいています.

このように「考古学」では当たり前の,
「何が」「どこから」「どのように」「どれと一緒に」出土したのかを検証できるような調査が,
「水中」ではなされていない(忘れられている)現状があることを,再認識しました.

それとともに,このことをない成し得ない限り,
「水中考古学」が学会内で認められず,
単に「サルベージ」「お宝探し」という,
一般の興味以上のものには成り得ないことも再確認,再認識しました.
東南アジア考古学会研究大会「東南アジア水中考古学最前線」 [2012年11月20日(Tue)]
先週末17・18日の2日間にわたり,
東南アジア考古学会研究大会「東南アジア水中考古学最前線」が,
昭和女子大学(東京都世田谷区)でおこなわれました.

このような,歴史のある学会で,
「水中考古学」がテーマとして取り上げられることは初めてのことではないでしょうか.

多くの参加者があり,盛会でした.

ARIUAからも,
林田憲三理事長,Randall,J.SASAKI会員,そして私(林原利明)がパネラーとして参加しました.

当日は,講演3本,事例報告5本があり,
東南アジア各国(フィリピン,ベトナム,タイ,インドネシア,パラオ)と日本の水中考古学調査・研究について,最新情報もふくめた報告がなされました.

私は,日本の現状・事例報告をしたのですが,
日本の現状は,このブログでも何度か書いてきたように,
とにかくその(水中文化遺産)存在や調査・研究の現状を知ってもらうことが,
重要なことですので,研究者を前に話をできたことは,
非常に意義深いことだったと思っています.

また,他国の事例や調査・研究の現状報告(課題もふくめて)を聞き,
直接に情報交換をできたことで,
日本の現状や課題を再確認することができました.

そのなかで,他国の事例がすべて沈船調査・研究であったことは,
東南アジア各国での「水中考古学」の在り方を考えるうえで,
興味深いことです.

実際に「水中考古学」=「沈船」研究
と思われているかたも多いことと思います,

この傾向は,中国や韓国にもみられるようです.

各国の「水中考古学」の発展が,トレジャーハンター(商業サルベージ)から,
文化財としての沈船およびその積荷を守る,
ということに端を発しているということとも無関係ではないと思います.

そして,その積荷のうちの陶磁器は,
産地から消費地へと動くこと,およびその一括性から,
アジア各国での考古学的成果を補完するものとして,重要視されています.

このようなことから,沈船研究が注目されていることも否定はできません.

ただし,「水中考古学」は「沈船」研究のみではありません.
その対象とするものは.「水中文化遺産」です.
「沈船」以外にも「沈降(水没)遺跡」「港湾関連遺跡」などの遺跡も対象とされます.

この点は,強調をしておきたいと思います.
私の報告では,そのことは念頭にいれて,「沈降遺跡」も紹介をしました.

「沈船」以外の「水中文化遺産」についての各国の理解は十分ではないようなので,
日本からの発信をする,しなければいけない,ということも感じました.


各国ともに,行政・大学や博物館に「水中考古学」のセクションがあり,
また法整備もされているとのことです.
(インドネシアだけは,少しようすが異なるようですが)
このような環境面に関しては,うらやましく感じられることも多少はあります.
しかし,日本は,環境や行政的理解という面では遅れているかもしれませんが,
世界に誇れる埋蔵文化財行政や調査の緻密さがありますので,
日本での情報整理をしたうえで,
その面からのより幅広い情報の発信はできる
ものと考えています.

「沈降遺跡」の周知は,そのひとつです.

また,「沈船」研究にしても,資料を批判されずに研究の俎上に載せるためには,
水中にあることから,より的確な考古学的調査(陸上と同じ精度の調査)による遺構・遺物の把握は不可欠であることも再確認しました.

このようなことも感じる,考えることのできた実りの多い研究大会でした.
「水中遺跡,重点調査へ」朝日新聞の記事から [2012年11月13日(Tue)]
昨日(11/12)の朝日新聞・夕刊の文化欄に,
「水中遺跡,重点調査へ」という見出しが.
小さな記事でしたが,文化庁の水中文化遺産にたいする来年度以降の取り組みについての報告がされていました.

記事には,先にこのblogでも紹介した,
文化庁が来年度に「水中文化遺産研究費」の概算要求を決めたとということの
その具体的な内容について書かれています.

「調査技術,引き揚げた遺物や遺跡自体の保存技術,保存のための法整備など発展途上のため,イタリアやフランスなどの事例から研究する.遺跡の活用例も調べる」
「2015年度をめどに,全国の水中遺跡を調査し,各遺跡の特徴を整理する」

そうです.

国もようやく重い腰をあげるようです.
期待....しましょう.
東南アジア考古学会 2012年度研究大会 [2012年11月01日(Thu)]
11月17 日(土)・18日(日)に東京で開催される「東南アジア考古学会 2012年度研究大会」で,水中文化遺産をテーマとしたシンポジウムが開催されます.

 テーマ: 東南アジア水中考古学最前線
 主 催: 東南アジア考古学会
 日 時: 11月17日(土) 13:00〜17:20
     11月18日(日) 10:00〜16:30
 会 場: 昭和女子大学 東京都世田谷区太子堂1-7 
 参加費: 無料.資料代500円
 http://www.jssaa.jp/meeting/meeting.html#taikai

フィリピン,タイ,ベトナム,インドネシア,パラオ,日本の水中文化遺産研究・調査の最新情報が報告されます.
ARIUAから,林田理事長・Randall J.ササキ会員・林原理事がパネラーとし参加します.

東南アジア各国の水中文化遺産研究・調査状況を知る良い機会です.
事前申込は必要なく,どなたでも参加できますので,
ご都合がつく方は,ぜひご参加ください.


また,今週末の11月3日(土)のNHKスペシャルで,鷹島海底遺跡関連番組が放映されます.
 番 組 名:発見!幻の巨大軍船〜モンゴル帝国vs日本 730年目の真実〜
 放 映 時 間:午後7時30分〜8時43分
 チャンネル:NHK総合
  http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/1103/index.html