「水中文化遺産」と「文化財保護法」 [2013年03月26日(Tue)]
昨日は,「埋蔵文化財」と「周知の埋蔵文化財包蔵地」についての話をさせていただきました.
お気付きの方もいらっしゃったことと思いますが, 昨日の話は「陸上」の事例です. それでは「水中」のものはどうように取り扱われるのでしょうか. 実際には,「水中」からも,漁師の網に遺物がかかり,引揚げられたり, 潜水漁時に遺構や遺物が目撃されてもいます. これは,「陸上」の畑で遺物が拾われる, 古墳や寺院跡が発見されるのと同じことです. 『文化財保護法』の「埋蔵文化財」の章をみてみましょう. 第92条〜第108条までの条文が相当しますが, その中には「水中」「水底」「海底」など,「水」中に関する文言は一言もありません. 『文化財保護法』制定された当時(1950年)は「水中」を想定していなかったようです. ただし,「水中」(実際は「水底」ですが)に残されている「文化財」も陸上と同じ「文化財」ですので, 『文化財保護法』で守られるものです. 「水中」にある遺跡(水中文化遺産)が「周知の埋蔵文化財包蔵地」として, 「遺跡地図」に登載されている事実からもそれは明らかです. 昨年の3月に国内の「水中遺跡」では,初の国史跡に指定された 「鷹島神崎遺跡」も『文化財保護法』に則った手続きがなされています. ですので,条文に「水」中に関する文言はないのですが, 「水中文化遺産」についても確かに『文化財保護法』は適用されます. しかし,条文に「水」中に関する文言がないことで, 行政担当者(教育委員会)にさえも, 陸上の事例のみに適用される,などという誤解があるようです. この点については,誰でもが理解できるようにすべきだと思います. (制定当時とは,状況は確実に変わっていますので) 「水中文化遺産」の「周知化」が少ない,という現状には, このような『文化財保護法』の問題もあるようです. それとともに,「水中」にあることにたいする「特別視」(見えない,見えにくいことからくる)も無視はできません, そして,さらに問題を難しく,分かりにくくしていることに「沈没品」に関するもうひとつの法律の存在があります. |