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初島沖海底遺跡の調査 [2021年03月25日(Thu)]
先週,初島沖海底遺跡の調査をおこないました.
遺跡は,江戸時代前期の多量の屋根瓦を主体とする遺物およびその積載廻船遺構(船体材が遺存)で,相模湾唯一の有人島である初島(静岡県熱海市)の西岸沖合水深20m前後の海底に残されています.
瓦以外の遺物としては,丹波産の擂鉢や京都産とみられる砥石があります.また,鬼瓦の中心飾りに「三葉葵紋」が表現されていることから,瓦(群)は江戸幕府が当時御用瓦師のいた大坂にオーダーしたものと考えています.

今回の調査は,2018年度から3か年にわたり朝日新聞文化財団助成事業として,遺跡の「保存・活用」を目的に実施してきた調査の最終年度にあたります.調査では,水中文化遺産保護条約を発効したユネスコが指摘する第三の海洋資源である海底遺跡の新たな保全や観光・教育資源としての利用を目指す「海底遺跡ミュージアム化」の実現を最終目標として,この3カ年でその可能性を模索してきました.実現のためには地域社会との連携は不可欠ですので,地域とともに活用とともにその表裏関係ともなる保存にも取り組んで,そのモデルケースの構築も目指しました.
今年度は,この助成事業の最終年度として,モデルケースを実行すべくダイバーによる見学会(活用実験)を予定していましたが,今般の新型コロナ感染症の拡大により,残念ながら見学会の実施を中止せざるを得ない状況となってしまいました.

このため今回の調査では,これまでの成果も合わせて今後の遺跡の保護あるいは保全,活用への提言をおこなえるよう,屋根瓦等が集積する遺物集積地区を主体に,できるかぎりの現状データーの取得をおこないました.具体的には,遺物の集積状況の再確認,もっとも保全の必要な板材(船体材)遺存部分についての詳細確認,および遺跡把握(可視化)に不可欠な,これまでの調査で作成した3Dモデル・現況実測図の補完をおこないました.合わせて,活用実験のひとつとして昨年度の調査で沈め置いた鬼瓦レプリカの経年変化確認,および経年観察用の新たな鬼瓦レプリカの設置もおこないました.

幸にこれまでの調査や成果報告・対話をとおして,地元の遺跡への理解は得られており,連携体制もとれているので,今後は提言をもとに,地元と意見交換をとおして貴重な水中文化遺産をより良いかたちで後世にのこすための保護あるいは保全,活用の実施・実現を目指したいと考えています.

調査は,2011年に日本財団助成事業での確認からはじまり,今年で10年が経ちました.初調査から,ほぼ毎年調査はおこなってきましたが,調査費用やマンパワーとの兼ね合いから小規模の調査であったこともあり,なかなか遺跡全容の解明にはいたっていません.ただし,これまでの調査は複数の団体や企業からの協力(助成)によるもので,これらの協力によって調査を継続でき,遺跡の内容が少しずつ明らかとなってきたことも事実です.
協力に感謝するとともに,より多くの方とこの水中文化遺産の歴史的意義を共有し,保護あるいは保全,活用の機運を高めるためにも,これまでの成果の詳細については調査報告書にまとめ,公表を予定しています.

なお,今回の調査は,首都圏1都3県に出されていた緊急事態宣言の再延長が決まったなかでおこなわれたもので,実施も危ぶまれましたが,地元から受け入れを了承していただけたことで実現することができました.地元の方々・機関にはあらためて感謝申し上げます.
また,このような状況でしたのでできるだけ少人数での調査を計画しました.調査参加への声掛けはかぎられた会員のみにおこない,多くの員の皆さまにはあえてしませんでした.お詫びいたしますとともに,ご理解のほどをお願いいたします.

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遺物集積地区・全景(積荷.瓦を主体に,一部乱れはあるものの遺物が種類ごとに整然と並ぶ)

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遺物集積地区・平瓦が列をなし整然と並ぶ

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遺物集積地区・軒丸瓦が2段重ねで整然と並ぶ

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遺物集積地区・乱れがあるものの擂鉢が重ねられて積まれていた状態がわかる

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海底に残された鬼瓦・中心飾りに「三葉葵紋」が表現されている

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海底に残された二隅が切り取られた平瓦

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海底に置いた鬼瓦レプリカ(左は昨年置いたもの・右は今回置いたもの)

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遺物集積地区での写真撮影のようす
初島での調査報告会 [2015年12月05日(Sat)]
29日(日)の夜,19時から漁協の会議室をお借りして,島の方々を対象とした調査報告会を開催しました.
「遺跡」については,さまざまな伝聞とともに多くの島の方々が知ってはいるのですが,実際に見た方はごく少数です.
そのような島の方々に,より正しく遺跡を知ってもらいたい,というのが報告会を開催した目的です.
開催にあたり,調査同様に漁協を初めとする多くの方の協力をいただきました.

報告会の内容は以下のとおりです.
1.「初島沖海底遺跡と新しい水中考古学」 岩淵聡文(東京海洋大学教授)
2.「初島沖海底遺跡−江戸城修理瓦を積んだ沈没船−」 林原利明(ARIUA理事)
3.「初島沖海底遺跡調査と水中工学機器」 近藤逸人(東京海洋大学准教授)

報告会には,日曜日の夜にもかかわらず,予想を超える38名の方に集まっていただきました.
38名の大半は島の方々です.
ちなみに,初島に代々住まれている方の世帯数は41戸ですので,38名という人数がどれほどのものであるかは,おわかりいただけると思います.

DSCN1720.JPG
           報告会のようす

報告会は,予定の時間(1時間)をオーバーし,盛会で終了できました.
島の方々からは,多くの質問とともに,複数の新しい情報もいただきました.
このなかには,先に触れた「他の集積地区」についての情報もふくまれています.

報告会を通して,「遺跡」にたいする島の方々の関心の高さが伺えたとともに,
調査にたいする「期待」も感じました.

今後の調査に励みにもなる報告会でした.
ご協力いただいた方々,参加された方々,ありがとうございました.
初島沖海底遺跡調査のようす [2015年12月04日(Fri)]
11月27日(金)から12月1日にかけて実施した初島沖海底遺跡の調査は,予定通りに終了できました.
調査は,お知らせしたように朝日新聞文化財団・助成事業としておこなう3カ年調査の初年度にあたり,
今年度は,調査作業の省力化・効率化を目指し,水中工学機器(水中ロボット)を使用した遺構(遺物集積地区)検出状況図作成を主目的に実施しました.

遺跡の詳細については,これまでに説明してきましたので,そちらをご参照ください.
https://blog.canpan.info/ariua/archive/566

IMG_4482.JPG
遺物集積地区全景・手前側に平瓦が整然と並んでいる

調査チームは,ARIUA会員と東京海洋大学関係者(教員・学生)からなり,調査全体を通じて初島漁業協同組合,初島ダイビングセンターおよび島の方々に協力をいただきました.

調査は,初日のみ強風・高波のため現地での作業はできませんでしたが,
他日は天候・海況ともに恵まれ,海中も連日,視界は20mと撮影には最適の状況で,大きな作業変更はなく,進めることができました.

水中ロボットについては,東京海洋大学・近藤逸人研究室に協力をいただきました.
使用した水中ロボットは,近藤研究室が今回のプロジェクのために開発したROVで,他の水中文化遺産調査で使用しているもの(主目的は映像撮影)よりやや大型のもの(約100×60×50cm,重量約50kg)です.
また,光源(LED)のみ内蔵バッテリーから電力供給し,スクリュー等の主要装置の駆動には外部から電力を供給するタイプで,それに測量用のカメラを搭載しています.

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        海中で稼働中の水中ロボット

水中ロボットは,2回投入しました.
スクリューに不具合があり,水中ではダイバーのアシストが必要でしたが,映像の撮影には成功しました.
今後データー処理の後,図化をおこないます.
水中文化遺産調査で,水中文化遺産調査用に開発された水中光学機器による遺構検出状況図の作成は,恐らく国内では初の事例と思われますので,
図化に成功すれば,水中文化遺産調査にとり大きな成果になります.

ダイバーは,ロボット稼働中はロボットのアシストに集中しましたが,それ以外では遺構(遺物集積地区)の詳細観察をおこないました.
これまでの調査は,時間的な制約から潜水回数も限られて詳細な観察はできませんでした.
今回は,瓦類の種類・並び方・遺存状態・他の遺物の確認を主におこないました.
その結果,遺物集中地区の遺物は,鬼瓦(三葉葵紋)・軒丸瓦(三巴文)・平瓦の3種の瓦および擂鉢,砥石を確認しました.
他の遺物は,確認できませんでした.

このうち,もっとも数の多い平瓦は1〜3段に積まれた6列が,やや崩れは見られるものの全体としてはきれいに並んだ状態,
それに次ぐ軒丸瓦も2段1列,やはりきれいに並んだ状態が確認できました.

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        遺物集積地区・軒丸瓦の集積

これらは,ほぼ水没時の状態を保っているものと考えられます.
鬼瓦と砥石は,集積は見られず,遺物集積地区から散在したと考えられる状態でそれぞれ複数,
擂鉢は,乱れはあるものの十数個が重ねられた状態でまとめられた状態が複数個所で確認できました.

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        遺物集積地区・擂鉢の集積

これらの詳細も検出状況が図化されれば,より詳細に観察・検討ができます.

なお遺物集積地区では,丸瓦および軒平瓦は確認できませんでした.
この2種の瓦については,これまでの調査では遺物集積地区から離れた状態で,すべて単独で確認されていました.
それらは遺物集積地区から散在したものであろうと考え,これまでの報告では遺物集積地区の瓦種に加えていましたが,今回の調査で無いことが明らかになりました.
このような状況ですので,この2種の瓦の由来が問題になります.
瓦の様相から遺物集積地区で確認されている他の瓦と同時期・同種のものと考えて差し支えのないものですので,
遺物集積地区と同じ時期に水没した可能性が高いものです.
ですので,他所にこの2種の瓦をふくむ集中地区がある可能性を考える必要がありそうです.
この点について,付近で調査地区とは異なる瓦の集積を見た,との情報をダイバーや島の方から得ています.
その可能性を探るために,最終日に情報をもとにサーチしましたが,確認することはできませんでした.

今回の調査ではデーター処理はまだ終了していませんが,現地調査では,多くの成果を得ることができました.
それとともに,新たな課題も生じました.
これら課題解決については,今回の成果を精査したうえで整理・検討し,
次回(来年度)調査の内容・方法に反映したいと考えています.
初島の調査が終了しました [2015年12月02日(Wed)]
初島沖海底遺跡の調査(朝日新聞文化財団・文化財保護助成事業)が昨日,終了しました.
調査の詳細につきましては,あらためてお知らせしますが,
とりあえず,予定していた作業が,事故もなく無事に終了したことに,安堵しています.

調査中は,島の方々には大変にお世話なりました.
ご協力をいただきました方々とともにお礼申し上げます.

調査に参加された方々,お疲れさまでした.

なお,調査に関する記事が,昨日(12/.1)の朝日新聞web版に掲載されました.
http://www.asahi.com/articles/ASHCW62T3HCWUQIP03H.html

また,YouTubeにも調査の動画がアップされています.
https://www.youtube.com/watch?v=F-Ax4jzuga0

ご覧になってください.
初島沖海底遺跡の調査をおこないます [2015年11月14日(Sat)]
今年度の朝日新聞文化財団・文化財保護助成の対象事業
初島沖海底遺跡の調査を11月27日(金)〜12月1日(火)に実施します.


初島沖海底遺跡は,これまでの調査で江戸時代の江戸城もしくは幕府関連施設用の屋根瓦を積載した廻船が沈没した遺跡です.

調査は,東京海洋大学の協力を得て工学機器を使用した遺構詳細図(検出状況図)を作成する実験をおこないます.

初島海底遺跡のこれまでの調査は,遺構観察が主でしたので,
遺構詳細図の作成は初めてとなります.
遺跡を正しく評価するには,遺構詳細図の作成は不可欠ですので,今回の調査の意義には大きいものがあります.

調査のようすについては,当ブログで随時お知らせします.
琵琶湖水中考古学研究会による琵琶湖湖底遺跡の調査 [2015年11月08日(Sun)]
会員でもある中川永さんが代表を務める滋賀県立大学の学生研究グループ「琵琶湖水中考古学研究会」が継続調査をしている長浜市沖合に集中する水没伝承遺跡群の調査報告が先日ありました.
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20151105-OYO1T50004.html

琵琶湖には地震等の自然災害によるものと考えられる水没(沈降)遺跡が多数存在します.
同研究会では,これらの遺跡を休日等を利用して,
予算やマンパワーも限られたなか,できる範囲で工夫した調査を学生が主体となり実施し,
調査成果も公表をしてきました..
問題意識をしっかりと持ち,地元の歴史を考古学的に解明する目的で調査に臨んでいます.

水中文化遺産調査と言えば,「沈没船調査」と思われがちですが,
このような地域に根ざした調査・研究もあります.
彼らの活動は,その好例でもあります.

14日(土)〜15日(日)に開催される学園祭では,一般向けの速報展示がああります.
彼らの活動を見て・知る良い機会ですので,ぜひ訪れてみてください.

http://www.usp.ac.jp/topics/m494/
鷹島海底遺跡・床浪地区の調査の成果とようすがテレビで取り上げられました [2015年08月22日(Sat)]
先日終了した鷹島海底遺跡・床浪地区の調査の成果とようすが,
KTNテレビ長崎のニュースで取り上げられました..
http://www.ktn.co.jp/news/2015082129719/

長崎新聞でも記事になっています.
http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2015/08/21091914018241.shtml

ぜひ,ご覧ください.
鷹島海底遺跡・床浪地区の調査が終了しました [2015年08月14日(Fri)]
8月1日から開始した今年度の
鷹島海底遺跡・床浪(とこなみ)地区の調査(調査担当:長崎県埋蔵文化財センター)が,12日に終了しました.

期間中は連日の晴天,海況も良く,調査は順調に進み,予定通りに終了することができました.
昨年に続き,多くの成果を得ることができました.

成果については,後日,長崎県埋蔵文化財センターから報告されます.

調査に参加された皆さま,関係者の皆さま,お疲れさまでした.

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            今年度の調査地区
今年度の鷹島海底遺跡の調査が始まりました [2015年08月01日(Sat)]
今年度の鷹島海底遺跡の調査が,今日,8月1日(土)に始まりました.
12日(水)までの予定です.

調査は,長崎県埋蔵文化財センターが主体者となり,一昨年から継続しておこなっているもので,
潜水による詳細な分布調査(目視調査)をおこないます.

調査対象地は,遺跡西側の床浪地区(国史跡の外側になります)で,
昨年までの調査で多量の中国陶磁器や磚(せん)などの他に碇石や石臼が発見され,
調査地区の元寇関係遺物の詳細な分布状況が把握されています.
今年度は,昨年の調査地区の東側隣接地区を対象とします.


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和賀江嶋の調査を実施しました [2015年05月18日(Mon)]
昨日,鎌倉市の材木座海岸沖にある
現存日本最古の築港跡・国史跡和賀江嶋の調査をおこないました.

今回の調査は,長年,和賀江嶋を調査されてきた
先日の連絡会でご講演いただいた上本進二さんの
より多くの目での和賀江嶋観察をしたいという計画を実施したものでした.

会員もふくめた多くの方の参加があり,多くの目で観察できたこと,考古学・文献史学・地学・地質学の専門家も交えた学際的な調査ができたことで,
これまでにない多くの知見を得ることができました.

今後,データーを整理の上,報告をします.

今回のような調査をARIUAのプロジェクトで実施した踏査地区でも実現したいと思っています.

暑い中,ご参加いただきました方々,ありがとうございました.
そして,お疲れさまでした.
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