「遺跡」「史跡」の活用と保護 [2013年03月30日(Sat)]
|
「遺跡」や「史跡」を活用して町おこしをする動きが各地でみられます.
これは,「遺跡」や「史跡」,その存在を知ってもらう, それをとおして地域の歴史に興味をもってもらう, とともに,「遺跡」「史跡」を保護すことにも意味があることと思います. しかし,近年,それが活用ありきで 本来の意味を忘れてしまい,行き過ぎた行為としておこなわれ, 結果として「遺跡」や「史跡」に悪影響をおよぼす事例がみられます. そのようななか,今日,facebookの投稿を通じて 国特別史跡・熊本城復元について,文化庁から改善指導がだされた, という記事のことを知りました. http://kumanichi.com/news/local/main/20130330002.shtml 内容は, 「熊本城の復元整備に対し,史跡の調査研究体制が不十分で.史跡保護の観点に欠けた活用があるとして,文化庁が5項目の改善策を求める内部文書を市に出していた」とのことで, 「改善をしなければ,今後の復元整備計画を審議しないことも示唆しており,市は復元や活用について見直しを迫られている」 ともあり,かなり厳しい 内応です. 新聞記事以上の詳細は知りませんので,軽はずみなことはいえないのですが, 記事を読む限り,その復元整備への取組・内容が, 「史跡」保護より,「活用」(=集客)に重点が置かれていたいたのではないかと,思われます. たしかに,昨今の 先を競っての「世界遺産」ブランド欲しさの「世界遺産」登録, 「遺跡」「史跡」等の過度の復元など, 「保護」よりは,「活用」をとおしての「集客」に重点が置かれている事例は目につきます. 「保護」にたいする対策が十分でない状態で,「活用」のために行動を始める,などという. 「水中文化遺産」でも同じことは言えます. 例えば「沈没船」, 見つかると必ず「引揚げ」⇒「展示」「公開」, という議論が起こります. この議論のでは,「引揚げ」ありきで, 「保存処理」,「保存施設」や「公開方法」という「保護」という点では. もっとも重要な観点は二の次で. 「引揚げ」⇒「公開」は,華々しく,わかりやすい文言なので, 一般の共感は得やすいのですが, 「保護」ということから考えると,クリアしなくてはならない課題はたくさんあります. 「水中」にあったものは,それまで触れることのなかった空気に触れた途端に劣化が進みます. (酸化の影響です.これは「地中」にあったものでも同じことです) ですので,劣化を少しでも食い止めるための対策は,不可欠です. たしかに,通常見ることのできない,あるいは難しい状況にある「水中」の遺物や遺構を 引揚げることによって,公開することは, それだけで,インパクトはありますし, 「水中文化遺産」の周知にとっては,意味のあることとは思います. しかし,それにはそれ相応のリスクがある, ということを知ったうえでおこなう必要あります. 韓国や中国では,「沈没船」は基本的に引揚げるそうです. それにより,詳細な研究をおこない,「沈没船」とその背景を知ること, および.多くのひとにその存在を知ってもらえる,という理由から. これを実現するには,国家による援助やしっかりとした調査・研究体制がつくられているという背景があります. (両国には,その体制があります) 日本のばあいは残念ながら,現状ではその援助や体制はありません. ただし,引揚げが最良の方法かと,いうと, そうとは言えないと思います. 先ほど触れたように,リスクがありますから. また,引揚げることは,「沈没船」が存在した場所から動かすことです. 「遺跡」は本来,存在する「環境」も合わせて考えるべきものですので, 動かすことは,「環境」を変えてしまうことにもなります. ですので,「動かす」ばあいはより綿密な現地調査も必要になります. (現地に復元できるくらいの) 本来「遺跡は動かない」ものです. この原則は忘れはいけません. ですので,その場(水中)で見せる工夫もすることも必要ではないでしょうか. もちろん,「水中」の環境により,できないばあいもありますが. 議論は必要です. 学問的にも急ぐ必要はありませんから. 熊本城の事例から少し話が飛躍してしまったかもしれませんが, 「遺跡」「史跡」の活用と保護について,あらためて考えさえられました. 皆さんも今一度,「活用」するということ, 「保護」するということ, そして,そのためには何が重要なかということを 考えてみてください. |




