「水中文化遺産」と「水難救護法」,そして国内法の整備 [2013年03月28日(Thu)]
|
「水難救護法」は,「水中文化遺産」を文化財としてあつかうことにとっては,やっかいな法律です.
昨日,確認したように,実際にはほとんど使われることのない古い法律なのですが, なぜか,「水中文化遺産」にはかかわってきます. 行政も関係法律として持ち出してくるのです. 実際に「水難救護法」で「調査」がこなわれた事例があります. 和歌山県串本町沖の「トルコ軍艦・エルトゥールル号」の調査です. この調査は,トルコ海洋考古学研究所が主体となり,多くの成果をあげていますが, 調査は「文化財保護法」のもとでおこなわれているものではなく, 串本町が海上保安庁と協議して「水難救護法」に則って,おこなったものということです. https://blog.canpan.info/ariua/archive/608 「文化財保護法」のもとでおこなわれた調査ではありませんので, 「遺跡」は行政的な「周知化」(遺跡台帳への登録)はなされてはいませんし, 「遺物」も「文化財」に認定されていません. なぜ,このような「埋蔵文化財」調査としてはイレギュラーな事例となってしまったのか,その詳細は知りませんが, 「陸上」の「埋蔵文化財」調査ではあり得ない事例であることは確かです. ルールが不明確である「水中」だからこそ,起こった事例とも言えるのではないでしょうか.. また,担当行政が調査をして,報告書を刊行したにもかかわらず, 調査地区が「周知の埋蔵文化財包蔵地」に指定されておらず, 引揚げた遺物(報告書に記載)についても「文化財」の認定の手続きがとられておらず, 行政的には宙に浮いた状態で行政の収蔵庫の片隅に置かれている遺物もあります. どちらの事例も,調査については問題はないものと思いますが, 調査の手続きや遺物の処理,そして今後の影響という点では疑問が残りますし,問題もあります. 「陸上」では「遺跡になる」=「周知の埋蔵文化財包蔵地」として「遺跡台帳」に登録される事例も 「水中」のものとなると,それが「認められない」「躊躇される」,ハードルが高いのです. このような現状にたいして, 行政担当者にも「遺跡」にしたいのだが, ふたつの法律の間で,「躊躇」する,というジレンマはあるのでしょう. ただし「文化財」を想定していない「水難救護法」を「文化財」に適用するには無理があります. その立法趣旨からも明らかです. やはり「文化財保護法」を適用すべきです. そのためにも「水中」を念頭に置いた国内法の整備(既存法の改定,新規立法等)は必須です. 誰でもわかる,「躊躇」しない,ためのルールづくりが必要なのです. そうしなければ,現状では「水中文化遺産」を十分に守ることはできません. 鷹島神崎遺跡が「水中遺跡」として国内初の国史跡に指定され,「水中文化遺産」に注目が集まる今, 「水中文化遺産」を守る,ということを真剣に考える時期だと思います. |




