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エルトゥールル号の調査 [2012年07月16日(Mon)]
今日は,水中文化遺産であるエルトゥールル号の調査について考えてみたいと思います.
ただし,エルトゥールル号の調査については,十分な情報を持っていませんので,
詳細を把握しているわけではありません.
(後に記す理由から考古学研究者の多くは,関連情報を知らないものと思います)
ですので,情報元は,新聞・web記事が主であることをお断りしておきます.

エルトゥールル号(Fırkateyni Ertuğrul)は,1890(明治23)年に和歌山県串本町沖で座礁・沈没したトルコの軍艦です.
このときの住民による救援活動は,トルコと日本の友好の原点として語り継がれています.

エルトゥールル号の沈没地区については,予備調査を経て,
2007(平成19)年から発掘をともなう調査がおこなわれ,
6,000点以上の遺物が引揚げられています.

この調査プロジェクトのホームページによれば,
http://www.ertugrul.jp/pages/65e5672c8a9e.php?lang=TR

この調査は,「軍艦エルトゥールル号 海洋発掘調査プロジェクト」として,
日本・トルコ両国の友好の始まりとされる歴史的事実を後世に伝えるために,
トルコ海洋考古学研究所とYAPIKREDI EMEKLILIK保険会社の主導でおこなわれているそうです.

プロジェクトメンバーを見ると,
トルコの考古学研究者は,はいっているものの日本の研究者はいません
また,担当行政も直接には関係はしていないようです.

このように,このプロジェクトは日本の領海内で実施されているにもかかわらず,
日本の研究者および担当行政はかかわっていません


また,経緯の詳細はわかりませんが,
調査は,文化財保護法に則った調査ではなく
和歌山県と海上保安庁が協議して,
このblogでも取り上げている水難救護法に則っておこなった調査のようです.
串本町の担当機関も教育委員会ではありません.

このように,エルトゥールル号の調査は,
国内の埋蔵文化財調査としては,イレギュラーなものです.
研究者に情報が入ってこないというこも,このような状況が影響しているのでしょう.
(文化財のルートからはずれてしまっているということです)
ですので,調査自体も国内では十分な評価がなされていません

調査自体は,トルコの研究者・機関が主体となっていますので,
問題はないものと思いますが,
とくに以下の2点について,問題があるものと考えます.

1.文化財保護法に則った調査ではなく,水難救護法の則った調査であること.
2.日本の研究者・機関および担当行政が直接的にかかわっていないこと.


それにもかかわらず一連の新聞報道をみても,
上記の問題点に関して取り上げた記事は一件もありません.


県議会でも問題点は指摘されておらず,調査を友好事業のひとつとして評価しています.

決して,日本とトルコの友好の証として文化財を活用すること,そのための調査を批判しているのではありません.
むしろ,そのようなことには水中文化遺産を理解してもらうためにも積極的に活用すべきだ,と思っています.

ただし,埋蔵文化財行政の手続きから考えると,非常に違和感を感じます
しかも明らかに問題があるにもかかわらず,批判がない.

問題点の指摘は,なぜなされないのでしょうか?

もちろん,当事者は意識的にこのような手続きをとったものではないのでしょう.
そこからは,水中文化遺産にたいする不十分な理解や先入観があることがみえてきます.

今回は,トルコの好意により,引揚げ遺物は地元に戻されるようですが,
水難救護法のもとでは,その義務はありません
本来は戻さなくてもかまわない(文句は言えない)のです.
このことは,悪用される可能性もありえます.

エルトゥールル号の件では,あくまでもトルコの好意により,
危惧するような事態にはなっていませんが,
今後,このような事例ばかりとはかぎりません.

違う目的を持った輩が入り込んでこないともかぎりません.
実際に,沈没船ファンドをかかげる企業のホームページをみると
日本には沈没船引揚げ遺物の所有権に関する法律が整っていないことが明記されています.

エルトゥールル号の調査が悪しき前例にならないことを願います.

危惧することが起こらないようにするためにも,
また,せっかく調査をしたにもかかわらず,十分な評価がなされない,
というようなことがないように,
一度,水中文化遺産の取り扱いに関して,
しっかりと議論することが必要のようです.
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