「周知」と「理解」 [2012年07月08日(Sun)]
昨日の「報道特集」の鷹島関連番組は観られましたでしょうか?
事実を丁寧に紹介した,わかりやすい番組だと思いました. 韓国の状況も紹介され,日本での水中文化遺産を取り巻く環境についての現状もおわかりになったことと思います. 今回の番組の内容は,水中遺跡としての沈没船遺跡が主題となっていました. 韓国での映像も沈没船に関するものでした. ただし,昨日も書きましたが,水中文化遺産は沈没船だけではありません. 水没(沈降)遺跡,そして港湾関連の遺跡も数多くあります. その内容から注目されることが多い沈没船ですが, 沈没船のみが,水中文化遺産ではない,その研究対象ではない, ということは,理解してください. 日本では,沈没船遺跡も十分に把握されていませんが, 水没遺跡や港湾関連の遺跡も同様です. しかし,港湾関連の遺跡はもちろんのこと,水没遺跡は海岸(あるいは湖岸・河岸)あるいは,近い水底にあるばあいが多いので, 把握されないということは,開発行為等で調査もされずに人知れずに消滅する(している)可能性も高いのです. ウォーターフロント開発などは,その原因のひとつですが, 首都圏でこのような開発にともなって, 埋蔵文化財調査(分布調査もふくめる)がなされた例を私は知りません. この点からも,水没遺跡・港湾関連の遺跡の把握・保護は急務です. 内容が同じである陸上の遺跡については, 保護体制が整っているにもかかわらず, その立地が,少しでも水中にかかると,まったく違う展開になってしまうのです. もちろん,鷹島海底遺跡のある長崎県,琵琶湖湖底遺跡の調査実績のある滋賀県,沿岸地域分布調査を実施している沖縄県などの「理解」のある地域では, 把握・保護体制がとられていますが,多くの地域では.まだの状況です. この点を改善するためには,行政の理解が不可欠です. そのためも「周知」と「理解」をキーワードに活動することが, まだまだ必要のようです. |