碇石−いかりいし− 2 [2009年10月31日(Sat)]
「碇石」が考古資料としての認知度が低いのはなぜでしょうか?
いろいろな理由はあるのでしょうが、 前回も書いたように、 実際に見ることのできる資料が少ない、 しかも、九州・沖縄以外では見ることがほとんどできないということは、 大きな理由のひとつでしょう。 また、「碇石」の出土地の多くが海底であること、 陸上でもかつて海であった場所のように、 通常は遺跡としてあつかわれないところからの出土であること、 そして、現在知られている碇石の多くが、 発掘調査で出土したものではない, ということも無関係ではないでしょう。 大型の石製品なので、 石垣や縁石など他の用途に再利用されている可能性も否定はできません。 ですので、もしかしたらこれまでに陸上の発掘調査で出土しているのかもしれません。 ただし、完全な形で出土したのならば、 認識も可能かもしれませんが、 再加工され、完全な形でない状態での出土となると、 「碇石」を知っていないと、わからないでしょう。 あたりまえのことですが、 見たことがない人(知らない)には、判断はできません。 「碇石」は、海を介した交易・交流のようすを知るための重要な考古資料になることは、 前回もご紹介しました。 このことを語るには、陸上に残された遺物(土器・陶磁器など)からでも可能で、 実際にこれら遺物から、海を介した交易・交流のようすが語られています。 しかし、どのような船がそれらを運んできたのかは、 陸上に残された遺物のみからはわかりません。 船の装備品である「碇石」は、海を介した交易・交流のようすとともに それらを運んできた船の実態に迫ることができる考古資料でもあります。 ですから、考古資料としてもっと注目されて良い遺物だと思います。 注目されれば、「碇石」の出土・引揚げ例も増えるものと思いますし、 海を介した交易・交流のようすも、より鮮明に語られるかもしれません。 そのためにも、多くの方(とくに研究者)に「碇石」を知ってもらいたいですね。 「碇石」を理解するための参考文献を以下にあげておきます。 「碇石」がどのようなものであるのかがわかりますので、一度、読んでみてください。 ・松岡史 1981「碇石の研究」『松浦党研究』No.2 松浦党研究連合会 ・石原渉 2000「中世碇石考」『大塚初重先生頌寿記念考古論集』東京堂出版 ・小川光彦 2008「第1章 海域アジアの碇石航路誌」『モノから見た海域アジア史』(九大アジア叢書11)九州大学出版会 |