碇石−いかりいし− [2009年10月30日(Fri)]
「碇石」(いかりいし)という石製品をご存知でしょうか?
このblogでも取り上げたことがありますので,ここに来られる方はご存知の方も多いと思います. 「碇石」は,船の「いかり」の部材のひとつで, 今のような金属製の「いかり」が使われるようになる以前の 木製の「いかり」に使われたものです. ![]() 復元された中世交易船の碇(福岡市埋蔵文化財センター) これまでに,海底からのみならず,地中からもみつかっています. 地中からといっても,その場所は, かつて海であり,埋め立てなどで陸化してしまったところが多いようです. 大きさや形は,さまざまですが, 日本では,おおむね長さ1〜3m前後の方柱状のものが知られています. 時代は,工事中や漁中に偶然に発見されたために,特定できないものもありますが, これまでの研究から中〜近世のものが多いようです. 「碇石」は船の装備品のひとつですので,これをを調べることにより, 船体自体がなくても 「碇石」を積んでいた船がどのようなものだったのか, その船が何のために,どこから来たのかを知るためのヒントを得ることができます. 多くの情報をもっている石製品なのです. 福岡や長崎などの北部九州や沖縄では, 神社の境内や公園などに置かれ,見ることができます. 博物館に置かれているものもあります. ARIUAが調査に携わった鷹島,小値賀や坊津の海底遺跡からも多くがみつかっています. ![]() 承天寺の境内に置かれた碇石(福岡市博多区) しかし,九州以外ではほとんど見ることのできない,ということもあり, 知名度の低い資料でもあります. 一般の方はもとより,考古学の研究者でも知らない方は多いようです. |