とある日の荒川河川敷。
ハトを、エイドしました。
…なにを言っているのかわからないと思いますが、ありのままに起こった一部始終をお伝えします。
----------------------------
その日は午前午後で活動が2回あり、加えて草刈りも合間に行うというなかなかハードな一日でした。
午前中の活動が終わり、お昼休憩を取ろうと近くのグラウンドへ。
あたりにはハトがなぜかたくさんいました(きっと近くで誰かがエサを与えていたのでしょう)。
疲れと空腹からそんなことはとくに気にせず、事務局スタッフのいまむとふじもはベンチに腰を掛け、買ってきたサンドイッチを食べようと取り出しました。
その瞬間、一斉に二人に向かってくるハト。
まてまてハトたちよ。お前たちも空腹だろうが、我々も空腹なのだ。
やらんよ。
そう鉄の意志で食事を進めます。
(あるハトはベンチにまで乗ってきておこぼれを待っている…なんという図々しさ…)
・・・
しばらくしたのち、いまむが気が付きます
いまむ(以下:い)「ん?あのハト、脚環付いてないか?!」
ふじも(以下:ふ)「??!」
よく見ると、群れの中に1羽だけ、脚環がついてるハトがいるではありませんか。
脚環はレース用のハトなどを管理するために使用されているものですが、恐らくは逃げてそのまま野生に還ってしまったのでしょう…
い「もしかすると、いいハトだったら持ち主から何か御礼がもらえるかも…」
ふ「!!!」
その一言で、ふじもの挑戦が始まりました。
まずは、手持ちのサンドイッチのかけらでおびき寄せます。
しかし、どうも脚環バトの反応が鈍い…
近くにパンくずを放っても他のハトにとられる始末。
それでも徐々に近づいてきます。
そして、大分距離が縮まったのを見計らって、がっ!と手を伸ばすふじも。
…しかし残念ながら空振りに終わり、ハトの群れは散ってしまいました。
い「足元で夢中になっているところで捕まえるぐらいじゃないとダメだね。でも、これだけ散ったら警戒されてダメかも…」
ふ「なるほど…」
しかしそんな二人の心配をよそに、脚環バトが再び舞い戻ってきました。
おまえ、、さっき捕まえられそうになったじゃないか…
鳥頭とはこのことを言うのか。
『え?エサくれるんでしょ??』的な軽いノリで再び近づいてくる脚環バト。
…わかった。そこまでするなら、捕まえてあげよう。
慈悲の心で、ふじもの挑戦が再び始まります。
今度はもっと慎重に、かなりの足元まで近づけてパンくずに夢中になっているところで一気にたたみかける作戦。
まさか自分が捕まるとは思っていないのか、露ほども警戒せずに近づく脚環バト。
むしろ人に慣れすぎて、感覚が鈍いのか…
そして、いよいよもう目と鼻の先、数センチで手が届くまでに近づいた瞬間…
……ガッッ!!!
…ふぅ。
見事、ハトをゲットしました。
(やりとげた顔のふじも)
さぁて、今日の仕事は終わった。
ひとまず、飼い主に連絡しよう。
ということで、脚環に括り付けられた電話番号に連絡してみます。
----------------------------
(電話をかけるふじも)
…プルルルル
…プルルルル
ガチャ。

「(!?出た!)」
主 「…はい?」

「あ、あのぅ、恐らくお宅で飼われていたハトを捕まえたんですけど…」
主 「ああ〜そうなんですかぁ。どちらでしょうか?」

「(けっこう高齢の方かな?)あの荒川の河川敷なんですけど…」
主 「ああ〜そうですかぁ、、荒川ねぇ。ハトの番号ってわかりますか?」

「(あ、脚環の番号か)え〜と、XXXXです。」
主 「ああ〜XXXXねぇ…う〜ん、そうですかぁ…」

「あの…どうしたらよいでしょうか?」
主 「そうだなぁ〜…困ったなぁ。。荒川ですよねぇ。私住まいが熊谷なもんで、取りに行くのもなぁ。」

「(熊谷から来たのか!)そ、そうなんですね…それは遠いですよね…」
主 「昔は日通でハト便ってのがあったけど、今は無くなっちゃってねぇ。。送るのもできないから、離してもらうしかないですよねぇ…。すみませんが、離してもらっていいですか?」

「…そうなんですね。仕方ないですよね…そしたら離しますね。」
主 「すみませんねぇ、わざわざ。ありがとうございました。」

「いえ、こちらこそ突然すみませんでした…」
ガチャ…。
----------------------------
以上。
電話を掛けたところ、どうやら熊谷にお住いの方のハトだったようです(高齢のおじいちゃんでした)。
たぶん、そこまで重要なハトではなかったということでしょう。
(御礼の夢は儚く潰えました…)
たしかに、なんか鈍い感じしたもんなぁ
”達者で暮らせよ。もう捕まるんじゃないぞ”
と、願いを込めてハトを離してあげます。
そんな、荒川のとある昼下がりの出来事でした。
…
…
…
と、これで終わりかと思いきや、ほんの1分も掛からずに例の脚環バトが
再び舞い戻ってきた。
『え?エサくれるんでしょ??』的な変わらぬノリで、くるっくーと鳴きながら近づくハト…
いやお前、さっきガッ!って思いっきり捕まってたやないか…
恐ろしく警戒心の薄いハトを前に、ここまで動物が人なれしてしまったのか!と自然界を嘆くようなことを考えていたような、いなかったような…
ただその日の荒川の空は、とても青く澄んでいたことは確かです。
(おわり)
・・・
<追記>
後日調べてみたところ、現在ハトなどの生き物は、ゆうパックで配送が可能とのこと(※ただし条件などあるようです)。
…おじいちゃんも知らなかったのね。
今度ハトを捕まえたらゆうパックで送ってあげよう。
皆さまもハトを捕まえた際は、ぜひゆうパックのご利用を。
by ふじも