荒川クリーンエイドは、様々な皆様に多くのご協力をいただきながら年々発展し、
20年目を迎えました。
ゴミのない自然豊かな荒川、自然と共生する循環型社会の実現を目指して、
当活動が、これからの10年に果たすべき役割とは、どのようなものでしょうか。
2月7日、活動に関わりの深い3人の方々に話題提供をいただき、会場の皆様とともに考えました。
主な内容をご報告いたします。
テーマ1: 地域での広がり、地域コミュニティの場として
島村運輸倉庫株式会社、
東京東江戸川ローターアクトクラブ 引間 太一様
■話題提供地域の問題に気づいてもらう、きっかけ作りをしたい・島村運輸倉庫では、社員の家族や知人、取引先企業などにも広げ、アットホームな雰囲気で
荒川クリーンエイドを実施しています。
・東京東江戸川ロータリークラブとしては、2009年10月から区内の
小中学校、特別支援学級、
それから、ロータリークラブが提唱する青少年・高校生の社会奉仕クラブ、
インターアクトクラブというものがあるのですが、
東京東江戸川ローリークラブの仲間である、愛国学園インターアクトクラブにも声をかけ、
クラブの奉仕活動として主催し、地域の子どもたちにも参加いただいています。
今後は、「地域に必要とされる奉仕活動」の一環として、東京東江戸川ローターアクトクラブ(*)
を中心に取り組んでいこうと考えています。
・河川敷という
身近な場所にゴミが落ちていて、自然環境を破壊していることに、
地域の人が気づくきっかけ作りをしたいと思っています。
子どものうちに、ポイ捨てしないことの大切さに気づくことが大事と考え、
子どもたちに参加してもらえるよう、今後も呼びかけていきたいです。
・最後に、参加者の感想をご紹介します。
この大切な自然を未来へと託すには、多くの子どもたちがこの活動に参加し、
何かを感じてもらいたい。そして、彼らが大人になったとき、その思いを
自分の子どもたちに伝え、そのまた子どもたちに伝えてもらえるようにしたい。
私たち大人には、その姿勢を子どもたちに示す責任があると思います。(以上、抜粋)
(*)ローターアクトクラブとは、18歳から30歳までの青年の集まりで、各クラブごとに
イベントの企画・運営を行ったり、専門職の方から話を聞いて学び、成長していく組織です。
■質疑応答・意見交換質問 中学生の参加がありましたが、どんなことを感じられましたか?
引間様 生き物たちにも目を向け、ゴミが生き物の棲みかになっていることなどにも
気づいていました。大人と視点が違うと驚きました。
質問 特別支援学級の生徒さんたちと活動されたようですが、苦労された点はありますか?
引間様 特別支援学級の生徒さんたちにはそれぞれ担当の
先生が引率し、
ときにPTAの方も参加して、安全に配慮してもらっています。
地域の自然環境に関わるよい機会として、先生方も保護者の方も積極的に
取り組まれています。
意見 生き物がゴミを棲みかとしているのは、クロベンケイガニと思われますが、
ヨシ原に穴を掘って生活しているのが本来の姿。
ゴミがなければ、本来の生活ができることを教えられるとよいですね。
島村運輸倉庫さんは、ヨシ刈りなどにも取り組まれ、地域をいっしょによくしていこうと、
大変心強いパートナーと感謝しています。(事務局)
意見 子どもだけでなく多面的に広がるよう考えていかれるとよいのではないでしょうか。
子どもが参加するとその他の層にも広がりやすいので、そういった意味でも
子どもの参加は重要ですね。
テーマ2: 荒川クリーンエイド・フォーラムへの期待と提案
〜企業・助成団体の立場から〜
公益財団法人パナソニック教育財団
金村 俊治様
■話題提供社会的影響力のあるNPOに!・荒川クリーンエイド・フォーラムさんには、
@
大きな社会的影響力のある存在になってほしい、
Aそのために、
組織基盤を強化しませんか、と提案いたします。
・Panasonic NPOサポートファンドは、NGO・NPOの組織基盤の強化を応援する助成プログラムです。
事業活動そのものではなく、人材育成、財務基盤、マネージメント力といった
組織基盤の強化に助成することによって、NGO・NPOが社会課題の解決に
より大きな貢献ができるよう、応援しようというものです。

・「企業向け人材育成プログラムの開発と営業ツールの整備」というテーマで、
ACFを3年間応援しました。
いろいろなNPOが、財源のひとつとして社員向けプログラムを提案していますが、
多くはあまりうまくいっていません。しかし、ACFは結構うまくいっているようです。
・NPOの財源としては、会費・寄付、助成金、受託事業、自主事業等がありますが、
外発的な財源である、助成金や受託事業の割合が高すぎるとリスクがある と言われています。
ACFでは、当初、国からの請負業務の割合がとても高かったのですが、
これが増える見込みは低く、自主事業を増やしていこうと進められ、
2008年から少しずつ増えています。
・組織基盤強化のポイントとしては、
@
課題を絞り込むこと、
A
Plan-Do-Check-Action (PDCA) を繰り返すこと、
B
多様な視点、第三者の客観的な視点を入れる ことが挙げられます。
・
「世界を変える偉大なNPOの条件」 (アメリカの本)の中で、
社会に大きな影響を与えるNPOを調査分析しています。
ACFでは、100%できているとは言えないかもしれませんが、
どの項目も、ある程度はできているのではないでしょうか。
ということは・・・大きな社会的影響力のあるNPOになれる、そう期待しています。
そのためにも、組織基盤強化にさらに注力されてはいかがでしょうか。
■質疑応答・意見交換質問 「世界を変える偉大なNPOの条件」に照らし、ACFがどこまで進んでいるか、
代表、事務局にご感想を伺いたいと思います。(金村様)
事務局 半分まで行っているところと、行っていないところがあります。
「熱烈な支持者を得る」 が難しいところ。
1万人の参加をいただいているのは、皆様のおかげと感謝申し上げます。
今後、
「参加」 を超えた 「支持者」 という点で、
まさにどのステップを上がればよいか、考えているところです。
皆様からご提案もいただきながら、いっしょに考えていきたいと思っております。(伊藤)
代表 定款に書かれた目的は3つ、
@市民の環境保全意識の高揚、
A他セクターとのパートナーシップ、
B河川環境保全・管理への市民参画 です。
それぞれ少しずつ進んでいますが、あと10年かけてさらに進めたいと思っています。
国土交通省だけに任せるのではなく、
市民が 「自分の川」 として愛し、
参加していくことが大事。そういったアピールをさらに進め、
ファンを増やしていきましょう。(佐藤)
テーマ3: 川ゴミ問題の根本解決と、全国への広がり
一般社団法人JEAN代表理事
金子 博様
■話題提供川ゴミの取り組みを広げる、リーダーシップを!・川のゴミが海に行っていることは知られつつありますが、大多数の方はご存じない状況です。
海岸のゴミの7〜8割が川から来ていることがわかっています。
・2006年秋の全国の海岸のゴミの量を、国土交通省等省庁と共同して調べました。
わかったことは、
ゴミはある地域に集中して漂着していることです。
1割の海岸に全体の7割のゴミが、2割の海岸に全体の8割のゴミが集まっています。
これが海ゴミ問題の社会化が進まなかった原因と考えられます。

・東京には、多摩川、荒川という一級河川があり、その対策を講じる国の省庁がある一方で、
その他の地域では、ゴミの現場だけがある状況です。
・海ゴミの問題について、川でもっと考えてもらえるとよいと思っています。
昨年「全国川ごみ拾いネットワーク」がスタートしましたが、
ACFが中心となって、
川ゴミの活動が広がっていくことを期待しています。
■質疑応答・意見交換質問 川ゴミの活動は、全国でどの程度広がっているのでしょうか。目立った運動はありますか。
金子様 川の環境保全活動は全国的に広がっていますが、ゴミの活動は一部です。
九州の緑川などがありますが、河川ゴミの問題は改善が難しく、
成果が現れにくいのが現状です。
質問 成果が現れにくいとは?
金子様 ひとつには、ゴミの発生原因が多岐にわたっていることです。
モラルの問題だけではありません。ポイ捨てゴミにならないよう、
デポジット制度など社会制度として作っていく必要があります。
そうなると、一段とハードルが高くなります。
質問 日本海側の視察では、ハングル文字のゴミが多く、“被害者意識”が強かったのですが、
荒川のゴミを見て、
レジンペレットがずいぶん落ちていることがわかりました。
事業者がきちんと管理するよう、業界としても少しずつ改善したいと思っています。
日本から流れ出ている意識が低いのではないでしょうか。
金子様
ハワイに日本のゴミが漂着している現状など、まだまだ知られていません。
努力はしているのですが、
もっと発信していく必要があるでしょう。
■3テーマを通した意見交換質問 引間様より、企業が地域といっしょに取り組まれる事例紹介がありましたが、
市民団体、企業にとって、いっしょにやりたいという希望はあるのでしょうか。
また、地域に広げるご苦労やアイデアなどを伺いたいと思います。
引間様 ちらしを作成、HPに掲載するなどして皆さんに発信しています。
初めての団体・企業さんには、
安心してご参加いただけるよう事前に説明しています。
今後は、例えば、活動の場である荒川流域の小中学校や町会等に参加案内をする
ことや、少し
地域をしぼった形で、このような活動報告会を開催することも
大切だと思います。
回答 中小企業さんが多い地域なので、難しい面があります。
自治体と連携して地域にもっとPRしていくことが今後の課題です。
回答 はじめは3人の活動でしたが、徐々に周りの人に伝わり広がりました。
ブログでの発信、助成金を取ったことも大きかったと思います。
えどがわエコセンター、東京ボランティア・市民活動センターといった
情報拠点に、
ちらしを置いてもらい、ネットに情報を掲載してもらっています。
東京ボランティア・市民活動センターを介して、
企業から多くの問い合わせをいただいています。
質問 企業が地域を巻き込む場合、特に安全面で不安があるのでは?
引間様 救護箱、救護場所、救護スタッフを配置し、怪我等があればすぐ対応、
必要あらばすぐに病院に連れて行かれる体制を取っています。
事前に名簿を作成し、保険の対応も。一般参加を募るというより、
団体を通して地域住民の参加をいただいています。
意見 小さなエリアかもしれませんが、
「きれいになってよかった」 と思える活動。
自然にも触れ合え、お金もかからない、とてもいい休日の過ごし方と、
仲間内で広がっています。
一回拾うとゴミを捨てたくなくなる、という教育効果も。
以前は、環境は誰かが作ってくれるものと思っていましたが、この活動に参加して、
環境を作っているのは自分自身、「拾って捨てなければ、減らせる」と気づきました。
広げていくことが今後の課題ではないでしょうか。
「楽しいよ、参加してよかった」と多くの人に語りかけ、
この活動を
真似る団体が増えてくれば、世の中が変わるのではないでしょうか。
事務局 「始まるのは個人から」と改めて実感しました。
一人ひとりの参加を広げていけば、広がっていくと。
皆さんの期待や応援に応え、今後もがんばっていきたいと思います。

ご登壇、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!