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「制度の谷間」に気づく〜SDGsから見えない社会課題 [2020年02月01日(Sat)]
1月の東京出張の初日。羽田空港から直接向かったのは、東京地方裁判所でした。

1型糖尿病障害年金訴訟(東京)第5回口頭弁論
103大法廷にて、15時開廷。今回は、原告西田えみ子さんの意見陳述がありました。

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今回も喪服で臨んだ西田さん。報告集会は衆議院議員会館で行いました


さて、みなさんの周りに、糖尿病の方はいらっしゃいますか?
その方は、1型糖尿病ですか?2型糖尿病ですか??

多くの人は、特になんの疑問も持たず2型だと思い込み、
食生活だの、運動だの、栄養バランスだのと
話題に上げることも少なくないのではないでしょうか。

これは一般の人に限らず、医療従事者でも、
国の医療や保健福祉に従事する人でも、というのが日本の現状です。

いわゆる「生活習慣病」とも言われる2型糖尿病と違い、
1型糖尿病は膵臓機能の障害です。
インスリンを作ることが出来ず、血糖値のコントロールができません。
『小児糖尿病』とも言われますが、必ずしも幼少期に発症するわけではありません。
原因は不明で、現在の医療では完治することはありません。

命をつなぐためのインスリン投与と栄養計算。
これは「良くなるため」の積極的な治療行為ではありません。
空気や水が必要なように、インスリン製剤が必要です。
1型糖尿病の方は、病気と共に生きています。

しかしながら、「障害」を持ちながらも、
身体障害者福祉法の対象外であるために障害福祉サービスは利用できず、
障害者手帳を取得できません。
また、「難病」にも関わらず、現在331ある指定難病としても認められず、
医療費助成も受けられません。生涯に渡って、高額な医療費の負担が続きます。

そのような1型糖尿病の方の中には、既存の社会保障制度の中で唯一、
受給の可能性がある障害年金を受け、生活をしている人たちがいます。
ですが、国民年金の障害基礎年金の認定基準は、
1型糖尿病では障害年金は受給できないようになってます。

原告の西田えみ子さんとは、あっという間に10年以上のお付き合いとなりました。
今でも東京出張の際には、一緒にごはんに行くことしばしば。
一番の思い出は2007年のDPI世界会議の時に行った韓国・高陽の牡蠣料理屋さん。

ずっと『制度の谷間』に立ちながら、
国や制度や、偏見・区別・排除・制限と戦ってきた西田さん。
法律改正や制度の見直しのたびに、
「今度こそ、『障害者』になれるかも」と言いながら、
40年以上、病気と共にあります。

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「障害ではない」という言葉の重みを、知ることは必要


今回の口頭弁論では、特に大きく主張が乖離する点として、生活状況について話されました。

2012年10月にテレビ東京のニュース番組で放送された映像も紹介。
これを見たときのショックは、今でも忘れられません。

一緒に仕事をして5年ほど経っていて、海外や地方にも一緒に行ったことがあり、
病気のことも、生活のことも理解していたつもりでいたこと。
聞いてはいたけれど、想像出来ていなかったことが、本当にショックでした。

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報告集会では、本人が解説を。


「血糖コントロールが難しい」ということを、どう理解するか。
障害年金の認定・審査において、機器を利用した状態で判断するのが妥当なのか、
周囲の支援やサポートがある前提で判断するのが妥当なのか、
自己努力を踏まえた上での判断をするのが妥当なのか。

公的なサポートが無い中で、
『医療機器の利用や食事管理といった、厳格な自己管理の元、生活することができる』
というのは、「普通に過ごせる」と判断されるのが妥当なのだろうか。

努力すればするほど、年金や福祉サービスから遠ざかる。
でも、努力をしないと仕事もできない、家事もできない、収入が絶たれる、
生活を営むことができない。

診断書に書かれない生活状況を考慮する必要は、
本当に「無い」と判断して良いのか、ぜひ多くの人に考えて欲しいと思います。

2018年12月12日の第1回口頭弁論後に、西田さんから発信されたお礼と報告に、
下記の言葉がありました。
こちらのリンク先に全文記載されています)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「障害は違うけれど自分も年金が支給停止になりそう」
という方から声をかけていただきました。

私だけの問題ではなく、生存権の争いなのだとしみじみ実感します。
不支給決定は「死ね」と言われたようで、
死んだ方がましなどと考えることもありましたが、
みなさんのお陰でここまで来られました。

みなさんが命がけで築いた障害年金をなし崩しにはさせない、
全力でふんばろうと、熱い気持ちで歩きました。

応援、本当にありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

命がけで築いた障害年金

自分らしく生きるために、法律や制度を作ることに、
人生をかけて邁進した人がたくさんいて、
その上で今の暮らしや世の中のしくみがあることを、
あらためて考える機会が少ないのが残念に思うことが多々あります。

法律や制度を作ることが課題解決のゴールではないにしても、
その課題を『個人の問題』から、地域や同じ問題を抱えた人など、
『社会の課題』にすることはできます。

SDGsについて、様々な人が語り、小学校の授業にまで登場するようになった昨今。
”サステイナブル”って、個人の思いだけじゃどうにもならないことがたくさんあって、
それは、17の目標と169のゴールには、当てはまらないものもある。

多くの企業や行政が、SDGsを掲げ、何かしようと右往左往し始めた昨今。
であれば、常に『制度の谷間』と向かい合っていたNPOは、
やはり『SDGsの谷間』に気づき、向き合わなければならないのではないか。

「病気や障害があっても、なんの支障もなく、社会生活を送っている人がいるよ。
アスリートとして活躍している人もいるよ」
という言葉が、なんの支えもない状況下でかけられる言葉が、
どれだけ『自分らしさ』を大切にした生活を送るための障壁になっていたか…。

これからも、自分らしく生きるために決断した今回の裁判を、私は応援しています。

次回、第6回口頭弁論は5月18日13:30開廷です。


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3.すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する


ターゲット
3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2 全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、 2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする。
3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9 2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.a 全ての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.d 全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
Posted by ayano sato at 20:11
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