12日の火曜日、雨が降り、朝から外国人ラッシュ、とくにフィリピン人男性。みな、仕事が「ゲンバ」、漢字で書くと現場。そんな職業があるわけはないが、要するに道路工事とか野外で肉体労働をしているということだ。
フィリピン人男性55歳、高血圧にて通院中。以前はいい加減な通院だったが、2年前に同じ「いい加減な」通院を繰り返していた兄を肺がんで亡くした。以来、怖くなったらしく、指示通りに通院してくれるようになった。悲しくも人間は大切なものをなくして初めて目が覚めることがある。
フィリピン人男性59歳、高血圧、脂質代謝異常、高尿酸血症で通院中。生活保護受給者。日本語能力はそこそこ。先月初めに行った市の前立腺がん検診でPSAが高値。近くの公立病院の泌尿器科に紹介したところ、前立腺がんとの返事をいただいていた。手術が終わったそうで、PSAをときどき計測して0.2より上昇していたら連絡が欲しいという主治医からの報告書を持参していた。フィリピンで罹患していたら・・・借金して家も売り払うか、家がなければもう病院には行かないで何もしないか、場合によっては自分で身投げするか、どれかだよと話していたが、その通りだろう。生保で受診し始めたのは3年前ぐらい。彼が働けない理由を知りたい。一度、生保となり、働かずともお金が入ってくると、労働意欲が湧かなくなるのではないだろうか。これは外国人も日本人も同じだろう。
午後になり、事件は起こった。アメリカ国籍で無保険の男性18歳、母親が連れて来た。母親は軍属らしい。めまいと頭痛があるという。18歳にして100kgを超える巨漢。すでに現地の医師の処方で降圧剤アムロジピンを5mg、一日一回内服している。父親は糖尿病で亡くなったとのこと。血圧は130/98で最低血圧が高いが、聞けばいつもこの程度だという。頭痛についていろいろと質問してみた。英語がわかりにくい。おまけに本人がほとんど話さず、顔の表情から発達障害もあるような気がした。頭痛は血管拍動性、頭痛の前に目がちかちかして吐き気がする、寝ればよくなるというので片頭痛を第一に疑った。ただし、初めてこのような頭痛が起きてから半年ぐらいと言うので、脳血管障害がないかどうかを確認しておく必要があると考えた。僕が決断したのは➀本日はまずはロキソニンなどの鎮痛剤、片頭痛の発作をおこさなくするミグシスの処方、そして➁MRIで脳のチェック、その間に➂
糖尿病、肝機能、脂質代謝、腎機能などの血液検査のデーターをそろえておくことだった。
近くの公立病院に電話して放射線の受付につないでもらい、いつものように病診連携でMRIを予約しようとしたら・・・当日、読んでもらう資料があるので日本語が読めないと受け付けないとのこと。しばらく交渉したが、頑なに拒まれた。悔しいがあきらめて、近くにMRIが撮影できるクリニックがあるので、そちらに電話。同じような拒まれた。これでは日本語が話せない、読めない人は適切なる医療を受けることができない。ずっと続いている問題がのしかかる。声を大にして33年闘ってきたことが何も改善されていないことに、だれにぶつけていいのかわからない怒りが僕を襲った。翌水曜日は午後から用事があるが、午前はあいている。10時頃なら僕自身が通訳で同行してもかまわないと思わざるをえない心境になってしまった。こういう特殊なことをしてはいけないのだが、そうでもしないと僕のクリニックでの彼の診察がうまくいかなくなってしまう。救ってくれたのはフィリピン人スタッフだ。彼女も同時刻は予定がないから、同行してもいいと言ってくれた。もちろん患者にも僕のクリニックにも、先方のクリニックにも通訳代を請求するような気持ちは彼女にはない。まったくの好意だ。今回はやむをえないので、ありがたく彼女の好意を受けることにしたが、胸のもやもやは晴れそうもない。
2024年03月14日
2024年3月14日木曜
posted by AMDA IMIC at 09:45
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