フィリピン人女性33歳、咳や痰でやってきた。新型コロナの抗原検査を行って陰性。「ああ、よかった。これで葬式に出られる」と言うので、フィリピン人スタッフに聞いたところ、先日、肺がんで亡くなったフィリピン人男性の娘さんだった。今日の朝、フィリピン人スタッフから携帯に電話あり。彼の葬式に出席するので、午前中、少し遅れますとのことだった。彼の母親も患者なので、彼女のメンタルが心配になった。このようにフィリピン人スタッフが地域のフィリピン人コミュニティと強くつながっているので、相談も多いし、具合が悪い人もなんとか最悪の手前で治療につなげられている。
フィリピン人男性53歳、高血圧で受診しているのだが、かなりの頻脈があり、市内の循環器専門病院を紹介した。血圧測定の後に「今日はひとつだけ、薬がいらない」と言う。なぜなのか?と訊ねたら、翌日、同病院に入院してカテーター検査を受けるそうで、医師から「この薬は飲まないで欲しい」と言われたとわかった。彼は脂質代謝異常や高尿酸血症などで数種類の薬を内服している。プリプラノロールのこととはすぐにわかったが、患者が伝言を伝えることを忘れることだってありうる。このような大切なことは患者に伝言として託すにはふさわしくない。簡単なメモでもよいから医師から医師へ確実に伝える方法を選択してほしい。
イタリア人男性54歳、窓口でパニック障害だと話しているという。僕自身、心療内科が専門ではない。この手の疾患は緊急、あるいは準緊急な場合しか対応しないのだが・・・とりあえず診察室で話を聞いてみることにした。すると・・・音楽家の彼は新型コロナの流行の中で音楽家としての仕事がなくなり、今は建設業、要するに肉体労働をしているそうだ。そういう環境でときどき動悸がしたり、息苦しくなるのだと言う。どんどん彼に話してもらって、彼の根底にあるものを理解しようとしたり、あるいはどのような検査が必要かを考えていく。すると・・・イタリアにいる家族が見るに見かねて、飛行機の片道チケットを送ってきて、その搭乗が明日だという。飛行機に長時間乗るのがとても怖いので、診断書を書いてほしいと言い出した。ここまで聞いて、ようやく彼の欲するところが理解できた。要するにチケットをキャンセルして別の日に振り替えるには医師の診断書が必要ということなのだと。診断書は何語で書くのか?と訊ねると、考え込んでいる。では診断書はどこに送るのか?と訊ねたら、イタリアの家族に送り、家族から飛行機会社に転送するとのこと。飛行機会社はどこ?と訊ねると、これがすぐにはわからず、スマホでなにやら検索して見せてくれたのが中国南方航空だった。これでは日本語ではなく、英語で書かなくてはだめだろうと言うと、英語でお願いしますという返事。それから英文証明書をパソコンで打ってプリントアウトするのに10分はかからなかったが・・・最後まで治療の話にはならなかった。
2023年07月13日
令和5年7月13日木曜
posted by AMDA IMIC at 09:03
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