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2023年07月10日

令和5年7月10日月曜

タイ人男性55歳、高血圧にて3回目の診察。血圧は順調に下がってきて130/80。こうなると、正常に戻ったとして降圧剤をやめたり、いい加減に通院をする人がいる。彼にはなぜ通院して降圧剤を内服する必要があるのか、説明をしておいた。日本語がそれなりにわかる外国人の場合、こちらもほっとして日本語で話し、「はい」とか「わかった」と言われるとわかってくれたのだなと思いがちだが・・・・これが落とし穴で、タイ人やベトナム人やフィリピン人など、通訳スタッフの協力のもとにその国の言語で説明をするとわかっていない場合がかなり多い。彼の場合、中性脂肪が470と極めて高い。正常限界は149だ。放置するといずれ、動脈硬化が進み、さらに血圧が高くなる可能性が高い。説明すると、すぐに薬をくれと言う。リクエストの通りに薬を処方すると、食事の改善は絶対にしないと断言してよいので、彼の大好きなカルビは控えるようにと話した。
タイ人女性50歳、上記男性に比較してしまうと、彼女に理解をしてもらうことはさらに難しい。僕のタイ語ではなく、タイ人スタッフにタイ語で説明してもらっても理解力が低いのだ。おまけにぼそぼそと思いついたように話す。いつもやってくると、こちらの説明が本当に理解できたか、一抹の不安がつきまとう。
僕のクリニックにやってくるタイ人はバンコク出身の都会人や旅行者ではない。ほとんどの患者の出身地はイサーンと呼ばれる東北タイ。貧しいと一概には言えないが、行ってみるとやはり貧しいというか、つつましい生活をしている人たちが多い。一台のバイクに家族5人が乗ったり、小学生と思われる年頃のこどもがバイクを運転していたりと驚かされる。お祭りがあるとラムシンという軽快な音楽が朝までとどろくように鳴り響き、酒が入るともめごとも少なくない。イサーンの中でも北と東を中心にラオス系の人たちが多く、顔つきを見てもそれとわかる。それもそのはず、タイとラオスが戦争をしてラオスが負けてタイに領土を奪われるまで、イサーンはラオス領であった。イサーンの人たちが話すイサーン語はほぼラオス語だ。そしてイサーン南部はカンボジアと国境を接しており、クメール系の人たちが住む集落が多い。おとなの中にはカンボジア語を話す人が少なくないし、話すことはできないが、話の内容は理解できるという人はかなり多い。
ついつい、脱線してしまったが、二日目の実習にやってきた北里大学看護学部の学生に最後に僕のクリニックの感想を訊ねたところ、患者の目を見て話しているところが印象に残ったと言われた。当たり前のことが印象に残るとは・・・・患者が日本人であれ、外国人であれ、誤解なく説明や気持ちを理解してもらおうと思うなら、目を見て話すことは基本中の基本なのに。
posted by AMDA IMIC at 10:16 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)