戦友来院。戦友というのはオーバかもしれないが、カンボジア人女性68歳。カンボジア国境に接しているタイ国サケオ県のカオイダン難民キャンプにいるころから下血と腹痛を繰り返していたと聞いたのが、彼女が大和市に存在したインドシナ難民定住促進センターに入所した時。僕は近くの公立病院の外科に勤務しながら、無償の嘱託医を兼任していた。諸検査の結果、潰瘍性大腸炎と診断して、内服薬を処方してから症状も収まったが、それ以来、今に至るまで35年間ぐらい、彼女や彼女の家族を拝見してきた。今も潰瘍性大腸炎のほかに高血圧と糖尿病の治療で通院してくる。定住促進センターの医師と入所者という関係が、医師と患者という関係を超えて、今はもう戦友同士という関係だ。ひとしきり、おしゃべりをして帰って行った。
中国人女性54歳、前日の午後11時過ぎから咳が出てきたとのこと。発熱はごく軽度。やってきたのが朝の9時。これからインフルエンザと新型コロナの検査をしてほしいとのこと。スタッフを通じて、正確に出るためには症状が発現してから時間がまだ早すぎるので12時前か午後に来てほしいと話したところ、「陰性なら仕事に行く。穴をあけられないので検査をしてくれ」の一点張り。こちらとしては検査結果が両者ともに陰性と出たとしても、それが本当に陰性なのか、単に正確な結果が出るには時間が足りなかったからなのか、わからず、いい加減な判定をすれば後に問題になりかねないケースと判断したのだが・・・・かなり大きな声でわめきたて、最後は検査をしてくれなければ咳止めの薬を処方してくれと話す始末。その通りに処方をした。いつも睡眠導入剤等を求めて来院する場合も、こちらの言うことには耳を貸さないタイプなのだが、今回はそれが爆発したような感じ。このような外国人を説得して適切な治療を行うことの難しさをあらためて感じた。
フィリピン人女性63歳、糖尿病で治療中とのことだが、糖尿病はよくコントロールされているのだそうだ。それなのに体重減少が激しいということで消化管に異常がないかどうかで依頼を受けた。たしかにやせぎすで顔が引きつっている。ユーチューブのドラマを見て寝られない、睡眠不足だと言うので、それはよくないこととなどと話していたら・・手が細かく震えているのに気がついた。もしやと思い、手を触ると汗ばんでいるし、脈は速く、この冬なのに寒くないという。甲状腺機能亢進症にまちがいないと確信、採血を行った。
第一回の日医外国人医療対策委員会にオンラインで参加、地域医療の中で外国人をどのように診ていくのかが会長諮問テーマだったと記憶している。幅広いテーマではあるが、在留、短期滞在のどちらの外国人にもあてはまる良いテーマだと思った。早速、いくつか意見を言わせていただいた。
2023年01月21日
令和5年1月21日土曜
posted by AMDAcenter at 12:11
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