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2020年05月16日

令和2年5月16日土曜

昨日の午後3時ごろ、県内の国際交流団体よりあまり楽しくない電話があった。日系南米人の男性が新型コロナの件で帰国できなくなり、お金が全くない状況で足が脹れて痛いからどこか、診てほしいと相談してきたが、診てくれないかという内容だった。住所は大和市の隣接地域だという。まず、僕が診ていい分野なのかどうか、医師の立場でとっさに判断しようとした。電話の相手に足の腫れとは親指の付け根付近なのか、ほかの部位なのかと訊ねた。医学的に「足」といえば足首の下だけを指すが、医療関係者以外が「足」と言う場合には大腿、膝から下を表す下腿、そして足関節から末梢を表す足までのことだからだ。そういうことは聞いていないのでわからない、ただ赤くなって脹れているらしいとのことだった。痛風発作か、あるいは蜂窩織炎しか該当する病気が浮かばない。お金を持っていないと言っても病院に行く電車賃や今晩の食事代などはあるはず・・・と思って尋ねてみたが、「電車に乗るお金もない」と言っているとのこと。それでも病院にかかりたいと話していると教えてくれた。これはあまりに難しい話だ。診察してそれだけで終わることではない。薬も処方するとなると調剤薬局にも未納覚悟で受け付けろということになる。お金のことはどう考えているのかと聞いてみた。すると同じ日系人で日本に定住している奥さんの給与が20日に入ってくるのでそれからなら支払えると言っているとのこと。僕のクリニックでも給与を待って支払うから・・という人がいなかったわけではないが、全員、通院中の人たちで、言い換えればよく知っている「おなじみさん」だけだ。初めてやってきた人をそのように待遇しようとは経営の面からは思えない。すると電話の主が「本人と奥さんが奥さんの健康保険で診察できないかと言っているが・・」と言葉を続けて来た。即座に「これは保険診療での違法行為で犯罪であるからできない」と答えると、相手は「そうですよね」とつぶやいた。その通り、これは絶対にしてはいけない行為だ。最終的には診療を受けることはなく、ただ局所を冷やすことだけ指示した。今回の件で思うことは私を含めた日本の医療機関側は何も悪くない。旅行で海外に行くというなら、それなりの旅行保険に入っていくのがマナーだろうし、これをなんとか制度化してくれないと同様の事例は発生するだろう。
posted by AMDA IMIC at 08:13 | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)
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