国籍別にはフィリピン人8人、ベトナム人3人、ペルー人2人、ドミニカ人1人。
フィリピン人のうち6人は成人の生活習慣病。長く通院してくれている人たち。残る2人は5歳と0歳の姉妹。
彼女たちの名前を見るだけでいろいろな背景が想像できる。5歳の姉は姓は日本名で名はフィリピン名、妹は姓も名前も日本名。すなわち姉は父親もフィリピン人でフィリピン生まれ、妹は父親は日本人で日本生まれ。フィリピン人の多くは敬虔なカソリック教徒で離婚は認められていない。ということはこの姉妹のフィリピン人の母親はフィリピン人のご主人と死別したのだろうか?ということになる。死別した場合もあるだろうが、しかし、ことはそう単純ではない。カソリック教徒であれば離婚はできないが、そこはちゃんと別の方法がある。教会に行き、牧師に「この結婚は初めからなかった」という証明をしてもらうのだ。たとえばご主人がどこかに逃げてしまい、行方不明となり、奥さんが別に所帯を持とうと思うような男性が現れた場合、このような手段で「独身」に戻るのだ。そのためには教会にけっこうなお金を支払うらしく、このお金が支払えずにあきらめる人も少なからずいるらしい。そして晴れて独身となって結婚して出産、フィリピンから最初のご主人との間のこどもを呼び寄せるとこの二人のようなケースになる。
実際には妊娠したとわかると姿をくらます男性も少なくなく、若くして未婚の母となる女性も少なくない。
一時代前ならフィリピンにご主人を残したまま、いわゆるジャパユキさんとなって来日、お客として知り合った日本人と結婚する、すなわち国際的重婚を疑う人もいた。しばらくしてフィリピンにこどもがいることを打ち明けて、こどもを日本に引き取る。するとこの二人のケースのようになる。今はこのようなことはもはやないのかもしれない。
もう30年近く前になるか、患者として数回やってきたフィリピン人女性がある日、書類を持ってやってきた。書類は彼女のフィリピンの戸籍のコピーだった。日本人男性と結婚するために市役所から日本語に訳して提出するようにと言われたとのことで、「こんな役所言葉の英語を訳すことができるのはドクしか思い出せない」とやってきたわけだ。訳した書類の文末にはだれが訳したか、氏名を記載しなければならなかった。しょうがないなと思いつつ、訳していくと「この戸籍の文書は役所が消失したために新たに作ったものです」という一文が現れて驚いた。ということは本物ではない可能性があるということだ。フィリピンではどこぞの市場に行けば、こういう書類を安価で偽造してくれるところはいくらでもある。彼女に悪い意思があれば、かなり危ない話となる。まさか、不正に加担させられているのではあるまいな?と。この一文もしっかりと訳して自分の感情は入れないようにした。今なら引き受けることもあるまいが。
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