内訳はフィリピン人6人、ペルー人2人、ベトナム人2人、バングラデシュ人、中国人、韓国人1人。中国人男性は発熱で来院、新型コロナは陰性だったが、インフルエンザはA型陽性だった。インフルエンザは先週の後半から本格的な流行に突入している。
昨日、某新聞社からセンターを通じて、外国人の医療費未納についての電話での取材があった。こういうマスコミからの電話取材はときときある。耳に入った例として短期滞在でやってきた某アジアの方が転倒して整形外科分野の手術が必要になった例を話してくれた。受診した医療機関では自費診療が保険点数の30割でリハビリ等を含むと1000万円を超えると言われ、なんとか飛行機に乗って母国に帰って事なきを得たが、30割は高すぎるのではないかというようなニュアンスだった。
まずは自費診療は医療機関が自由に費用を設定してよいということになっており、法律的な問題点は何もないということを話した。そのうえで、問題なのは各医療機関の自費診療費というものが保険診療の何割にあたるのかということが公開されていないことだと続けた。
公開、公表については経営上の観点から医療機関側はすなおに応じる気持ちにはならないかもしれない。しかししながら、患者側が受診してみなくては費用体系がわからないというのはやはりおかしなことと言わざるを得ない。自費診療が保険診療の30割という医療機関を受診したら支払いができないという人でも、保険診療の10割の医療機関なら支払いができただろうということは容易に想像がつく。
ただし、それでも解決ができないのは救急車に乗ってしまった場合だ。地域ごとに救急医療の決まりごとがあり、結果的に患者が搬送先の医療機関を指定することができないからだ。
このように考えていくと、決定打は外国人短期滞在者に来日前に海外旅行保険またはなんらかの医療保険への加入を義務付けることしかないような気がする。これらには掛け金に応じた支払い上限があるものの、例外的な巨額な医療費となってしまう例以外はこれで未納金を生み出さずに済むであろうからだ。
そして医療機関側に求められる努力としては、支払えるだろうからどんな医療を行ってもいいというわけではなく、故国に帰るまでのヒットエンドラン的な医療は可能なのか、検査の順番やジェネリック医薬品の選択など、いかに医療費を安く抑えるかなどを考えた医療を行うことではないかと思う。
知り合いや診療の場面で短期滞在中に慢性疾患の治療を求められた場合、「短期滞在中に」「すなわち日本の公的保険無しで」「慢性疾患の治療を求められる」わけだから、継続的な治療は費用からみても、治療に要する期間からみても極めて困難、無理と考えねばならないことを患者側に明確に伝えねばならない。継続的な医療を行おうとすると、「短期滞在」ではできないということになり、そのために入管に滞在期間延長あるいは在留資格の変更を求める文書に賛同の書類をしたためなくてはならなくなる。そうなると日本での生活費の工面や公的保険への加入への道を開くなど医療機関側が気がつかないうちに政治的な問題に足を踏み込んでしまう可能性も出てきてしまい・・・いつのまにか、ややこしい問題の主役に座っていたなんてことになりかねない。人道上の配慮は相手が日本人であろうと外国人であろうと必要なことではあるが、上記のようなケースを人道上と軽く考えて、そこから派生するさまざまな問題に気が付かずに引き受けることは、自分だけでは片づけられない大きなトラブルにつながる可能性が高い。私自身は厳に慎むべきこと、いや、引き受けるべきことではないと思う。このようなケース、本当に我が国において治療を受けたいということであれば、母国に戻り、あらためて経済的な保証、身元の保証などの書類を整えて日本大使館に医療滞在ビザを申請し、取得から治療する医療機関と連絡を取ったうえで来日するべきであろう。
僕自身、観光など短期滞在で来日してきた人について、在留する親族から依頼されて診察したことが何回もある。単に診断をつけたいという人については専門医を紹介し、問題なく終わった。なんらかの健診を行いたいという人も引き受けてきたが、問題なく終わった。これらは一回二回のごく短期の診察で完結するからだ。故国に帰って治療をすべきと話したケースもある。カンボジア人の女性で日本に在留している姉から肝機能が悪いから診てほしいと依頼されたケースだ。C型肝炎の抗体が陽性だった。インターフェロン治療を受けたいとの希望があったが、その費用や期間を考えたら、故国に戻って治療すべきと諭し、先方も受け入れた。カンボジアには近代的な医療機関もあり、治療はできるはずだし、飛行機で1時間の隣国のタイに行けば超近代的な医療機関はいくつもある。問題は費用であろうが、タイの医療機関で支払えないなら日本でも支払えないだろう。
医療費が障害となって適切なる医療が受けられないというのは悲しいことではあるが、実は世界的にはごくごく「普通の」出来事なのだ。そして残念なことにこれらの一人一人を個人の力で「救うこと」などできない。
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