10日に左の季肋部痛で来院したケニア人女性42歳の血液検査結果が手元に届いた。彼女、同じような痛みで、半年か1年に一回程度やってくる。過去にCTスキャンまで行ったが、原因わからず。そして長期に内服薬を処方したということも記憶にない。
要するに、いまだ原因もはっきりせず、そして内服薬を飲むほどの痛みでもなさそうと不思議な状態なのだ。当初は仕事上のストレスとか、孤独によるストレスとか、なにかあるのかなあと勝手に疑ったこともある。
今回の血液検査はごく一般的な検査で、なにかに的を絞って検査を行ったわけではないのだが・・・クレアチニンが1.55、計算するとe-GFRは39.5で42歳という年齢を考えるとかなりよくない。こういうときにいつも僕の頭の中に、「民族や行動、食生活などちがう人に何か見逃していることはないか?」という考えが浮かんでくる。
もう40年近く前に、タイの難民キャンプから大和定住促進センターに受け入れられたカンボジアやラオスの政治難民の人たちを同センターで診察していたことがある。日本に受け入れられて、彼らははじめての健康診断を近くの公立病院で受けることになり、その担当も僕だった。検便を行うとほぼ90%以上の人に寄生虫疾患があり、それもカンボジア人、ラオス人で明らかに寄生虫の種類が異なり、逆に検出された寄生虫の名前を聞けば、カンボジア人なのか、ラオス人なのか、あてることができた。そして数少ないベトナム人もまた、彼らとはちがった寄生虫だった。そして赤痢アメーバ―にマラリアと、熱帯医学の教科書に書いてあるような疾患も経験した。今、会社の検診で肝機能障害を指摘されて、再検査にやってくるフィリピンやペルーの人たちを診察していると、そのほとんどがHA抗体陽性で、その確率は日本人の比ではない。
このような僕の過去の経験にはアフリカ大陸出身者は全く含まれておらず、いつも目隠し状態で診察している気持ちになる。昔でいえば風土病という言葉に表されるものや地中海貧血のような民族的遺伝に関係するような、そんな病気を見落としているのではないかと不安に思うことがある。しかし、ありとあらゆる検査を行うことは保険診療上、許されないし、また金銭的に患者にも支払いきれないかもしれない。
これが外国人医療のむずかしいところ、皆さんなら、このような患者を前にしてどのようにするだろう?
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